平成28年度1級建築士-学科Ⅱ環境・設備

建築士過去問解説

一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)

令和05年度試験日まであと 日!

〔H28 No.01〕環境工学における用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.PMVは、室内の温熱感覚に関係する、気温放射温度相対湿度気流速度体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。
2.照度は、目で見た明るさに直接的な関わりがあり、屋内照明器具による不快グレアの評価に用いられる。
3.プルキンエ現象は、暗所視において、比視感度が最大となる波長が短い波長へる現象である。
4.残響室法吸音率は、残響室内に試料を設置した場合と設置しない場合の残響時間を測定して、その値をもとに算出する試料の吸音率である。

解答 2:グレアは「輝度」と関わりがあり、視野内の高輝度の部分や、極端な輝度対比によって、物体の見やすさが損なわれることである。光が直接目に入る直接グレア、黒板やショーウィンドウに反射して見えなくなる反射グレアなどがある。

1.予測平均温冷感申告(PMV:Predicted Mean Vote)とは、室内における人の温熱感覚に関係する、気温、放射温度、相対湿度、気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。PMVの値は「+3」で不快(暑い)と感じ、「-3」で不快(寒い)と感じる。0に近づくほど快適とされ、「+0.5~-0.5」程度が快適環境とされる。PMVの値が0から遠ざかるほど、不満足者が多くなるので、予想不満足者率(PPD:Predicted Percentage of Dissatisfied)の値も大きくなる。

3.「プルキンエ現象」は、暗所視において、比視感度が最大となる波長が短い波長へる現象である。 そのため、赤が暗く、青が明るく見える。
4.材料の吸音率は、音が入射する角度によって変化するため、測定方法によって吸音率の値は異なってしまう。そのため実測値である「残響室法吸音率」が最も信頼できる値として音響設計などに用いられる。この残響室法吸音率は、残響室内に試料を設置した場合と設置しない場合の残響時間を測定して、その値をもとに算出する。

〔H28 No.02〕住宅における結露の防止に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.浴室から他の室への水蒸気の浸入を抑制するため、浴室に設置した排気ファンを使用した。
2.外壁の内部結露を防止するため、断熱材の室内側に防湿層を設けた。
3.木造住宅における最上階の天井部分のみに断熱材を施した屋根において、野地板面の結露を防止するため、小屋裏に換気口を設けた。
4.暖房設備から室内に発生する水蒸気の量を抑制するため、暖房設備を密閉型燃焼器具の代わりに開放型燃焼器具とした。

解答 4:「開放型燃焼器具」は灯油やガスの燃焼の際に、水蒸気を室内に排出する。対して「密閉型燃焼器具」は直接外部に排出するため、室内の水蒸気の量を抑制するのに有効である。

1.便所や浴室、厨房などの換気設備においては、一般に、周辺諸室への臭気・水蒸気・排気ガスなどの流出を防ぐために、第二種機械換気方式を採用する。

2.一般的に、暖房時の室内側の湿度は高い。この湿気を含む空気が、壁内に入ると、内部結露が生じやすい。従って、断熱材に室内の高湿空気が入り込まないように、室内側に防湿層を設ける。

3.木造住宅における最上階の天井部分のみに断熱材を施した屋根において、完全に室内の高湿空気が屋根裏に入らないわけではない。屋根裏に入った高湿空気を換気する必要があり、その方法の一つに、自然換気口を設ける方法がある。

〔H28 No.03〕定常状態における室内の二酸化炭素濃度を上限の基準である1,000ppm以下に保つために、最低限必要な外気の取入量として最も値は、次のうちどれか。ただし、人体一人当たりの二酸化炭素発生量は0.024m3/(h・人)であり、人体から発生した二酸化炭素は直ちに室全体に一様に拡散するものとし、外気の二酸化炭素濃度を400ppmとする。また、隙間風は考慮しないものとする。

1. 20m3/(h・人)
2. 30m3/(h・人)
3. 40m3/(h・人)
4. 50m3/(h・人)

解答 3:一人当たりの必要換気量Qは、以下の式で算出される。
Q = 一人当たりの二酸化炭素発生量 / (室内の汚染質の許容濃度 – 外気中の汚染室濃度)
Q = 0.024 ×106 / (1,000 – 400) =40 m3/(h・人)

〔H28 No.04〕伝熱に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.透明フロート板ガラスは、一般に、可視光線に比べて長波長域の赤外線を通しにくい。
2.単層壁の熱貫流抵抗は、同一の材料で壁の厚さを2倍にしても2倍にはならない。
3.壁体表面の対流熱伝達率は、風速が大きいほど大きくなる。
4.グラスウール熱伝導率は、一般に、かさ比重(密度)が大きいほど大きくなる。

解答 4:一般に建築材料は、かさ比重(見かけの密度)が大きくなれば熱伝導率も大きくなる。ただし、グラスウールなどの繊維系断熱材は材料内部の空気が移動し、対流を起こす。そのため、かさ比重が大きくなれば内部空気が小さくなるので熱伝導率は小さくなる。

1.透明フロート板ガラスは波長が300~3,000nm(可視光線)の光線を約80%透過するが、長波長域の3,000nmを超えると透過率は下がり、吸収率が大きくなる。

2.熱貫流抵抗Rは、以下の式で表わされる。
R = 1/α1 + d/λ + 1/α0
室内の総合熱伝達率α1、屋外の総合熱伝達率α1、材料の熱伝達率λ、材料の厚さd
上の式から、熱貫流抵抗と、材料の厚さとは比例・反比例の関係ではない。

3.表面にあたる風速が大きいほど、熱伝達率が大きい(熱が伝わりやすい)ため、熱貫流率は大きくなる。

〔H28 No.05〕建築物における防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.水平避難方式は、一つの階を複数のゾーン(防火区画や防煙区画)に区画し、火災の発生時に、火災の発生していないゾーンに水平に移動することによって安全を確保する方法である。
2.火災室で発生した熱を伴った煙は、階段室に流入すると、一般に、3~5m/s 程度の速さで上昇する。
3.中央部に光庭となるボイド空間を設けた超高層集合住宅において、ボイド空間を取り囲む開放廊下を避難経路とする場合、煙の拡散を防ぐために下層部分からボイド空間への給気を抑制する必要がある。
4.等価可燃物量は、可燃物発熱量が等価な木材の重量に換算した量である。

解答 3:ボイド空間の下層から上層への吸気を抑制してしまうと、上部の煙濃度が高くなってしまい危険である。そのため給気を促進するために上部を十分に開放し、下部に空気の流入口を設ける。

ボイド型を採用したエルザタワー55


1.水平避難方式は、一つの階を複数のゾーン(防火区画や防煙区画)に区画し、火災の発生していないゾーンに水平に移動することによって安全を確保する方法であり、高齢者や幼児が利用する施設において有効である。

2.煙の水平方向の流動速度は、一般に、0.5~1.0m/sである。一方、垂直方向の流動速度は3-5m/s程度とされ、一秒で1層分上昇する。

4.建築物内の可燃物量の大小が、火災の規模を支配する最大の要因となる。室内は燃焼時の発熱時の異なる各種の材料で構成されているため、可燃物量の大小は、実際に存在する可燃物と同じ発熱量の木材の重量に換算した等価可燃物量を火災加重といい、火災継続時間の推定などに用いられる。

〔H28 No.06〕図のような直方体の建築物の冬至日における1時間ごとのある水平面上の日影図(数字は真太陽時を示す。)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、A点及びB点は、その水平面上にあるものとする。

1.この建築物により、終日日影ができる。
2.A点は、1日のうち3時間以上日影になる。
3.建築物の高さのみを3倍にしても、B点の日影には影響しない。
4.建築物の高さのみを現状より高くしても、4時間日影線は変化しない。

解答 2:A点は8時と9時の線の中間にあるので、8時30分から日陰に入り、11時には日陰から出る。なので、2時間30分程度日陰になる。

1.建物北側を底辺とし、日の出と日の入りの線を交えた点を頂点とした三角形が、終日日陰になる。

3.建築物の高さが高くなっても、B点の日陰には影響しない。

4.冬至日に4時間以上日陰になる範囲は、一般に、建築物の高さには影響を受けず、東西方向の長さに影響する。

〔H28 No.07〕昼光・照明に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.輝度は、光源面だけではなく、反射面及び透過面についても定義できる。
2.昼光率は、室内各部の反射率の影響を受ける。
3.配光曲線は、光源の各方向に対する輝度の分布を示すものである。
4.光幕反射を減らすためには、光が視線方向に正反射する位置に光源を配置しないことが重要である。

解答 3:「配光曲線」とは、照明器具から出てくる光が、どの方向にどれだけの強さ(光度)で出ているかを極座標にて表す方法。

一般電球(4.1W)の配光曲線


1.輝度は、単位面積(m2)から発せられる光度(cd:lm/sr)であり、比視感度を考慮した見かけ(見た目)の明るさである。光源面だけではなく、反射面及び透過面についても定義できる。

2.昼光率は、(受照面照度/全天空照度)×100%で定義される。受照面照度は、窓と受照面の位置、ガラス面の状態、室内表面の反射率、窓外の建築物や樹木による遮蔽などの影響を受ける。なお、全天空照度が変化しても、それに比例して受照面照度も変化するため、昼光率は変化しない。

4.光幕反射は、机上面の光沢のある書類に光が当たる場合等、光の反射によって文字等と紙面との輝度対比が大きくなる現象である。

〔H28 No.08〕色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.マンセル表色系において、「5G7/8と表される色」より「5G8/6と表される色」のほうが明度は高い。
2.色の面積効果は、面積が小さいほど明度彩度が高く感じられる効果である。
3.演色性は、視対象の色の見え方に及ぼす光源の性質であり、光源の分光分布に依存する。
4.面色や開口色は、空間的な定位やを感じられない色の見え方である。

解答 2:「面積効果」では、面積が大きいほど明度彩度が高く感じられる。明るい色はより明るく、暗い色はより暗く感じる。

1.マンセル表色系は、色相、明度/彩度と表現する。よって、「5G7/8」と「5G8/6」とでは、明度は後者の「5G8/6」が高い。

3.演色性は、視対象の見え方を表わす特性であり、光源の分光分布によって、変化する。視対象の色をどの程度忠実に再現するかの特性であり、昼間の自然光の下での色の見え方に近いほど、演色性が高い。また、手術室や診察室は演色性の高い光源を用いる。

4.面色とは、空間的な定位や肌理を感じられない色、つまり距離感があいまいな色の見え方のことである。開口色とは、面色の一種で、小さな穴を通して見る色のことである。面色と同様に位置や距離が特定できず、表面の細かいあや(肌理)が感じない色の見え方である。

〔H28 No.09〕音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.人の可聴周波数の範囲はおよそ20Hzから20kHzであり、対応する波長の範囲は十数mから十数mである。
2.拡散性の高い室に、音響パワーが一定の音源がある場合、室の平均吸音率が2倍になると、室内平均音圧レベルは約3dB減少する。
3.セイビン(Sabine)の残響式によると、残響時間は、容積が1,000m3で等価吸音面積200m2の室より、容積が500m3で等価吸音面積120m2の室のほうが短い。
4.アナウンススタジオの室内騒音のNC推奨値は、一般に、NC-35とされている。

解答 4:騒音の許容値は騒音レベルで示されるのが一般的。さらに詳細な検討を行う場合はNC値を用いる。
アナウンススタジオは「音楽ホール・スタジオ」に該当し、NC-15~20程度である。

1.人の可聴周波数の範囲はおよそ20Hzから20kHzである。20Hz以下を低周波音、20kHz以上を超音波という。対応する波長の範囲は17mm~17mである。

2.室内平均音圧(Lp)=Lw-10・log10A+6
Lw:音源の音響パワーレベル、A:室内の吸音力(室内表面積×室内平均吸音率)
室内の吸音率が2倍になると、2Aとなり、
Lp’=Lw-10log102A+6
=Lw-(10log102+10log10A)+6
log102≒0.301であるから、
Lp’=Lw-10×0.301-10log10A+6
=Lw-10・log10A+3
よって、Lp’=Lp-3 →3dbの減少となる。

3.セービンの式は、残響時間の計算式の中でも吸音力の小さい残響時間の長い室の計算に適した式である。
T = 0.161V / αS
(T:残響時間、V:室容積、α:室内平均吸音率、S:室内総表面積)
V=1,000、S=200の場合、T = 0.161V / αS=0.161/α×5
V= 500、S=120の場合、T = 0.161V / αS=0.161/α×4.166
よってT > T

〔H28 No.10〕遮音・吸音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.重量床衝撃源による床衝撃音については、カーペット等の柔らかい床仕上げ材を用いても、遮断性能の向上はほとんど期待できない。
2.壁に多孔質吸音材料を使用するに当たり、表面を孔あき板やリブ等で保護する場合、開孔率が小さいと共鳴器型の吸音特性が現れることがある。
3.単層壁による遮音において、同一の材料で壁の厚さを薄くしていくと、コインシデンス効果による遮音性能の低下の影響範囲は、より低い周波数域へ拡大する。
4.窓に複層ガラスを用いると、共鳴周波数付近においては、同一面密度の単板ガラスより、遮音性能が劣ることがある。

解答 3:防音材に音波が入射し、その材料の屈曲振動と入射音波が共振を起こして防音性能が低下してしまう現象を「コインシデンス効果」という。壁の厚みを大きくしていくと、音波の波長が長くなるので、低い周波数域へ拡大していく。これを防ぐためには振動を吸収する特殊中間膜を設ける。

1.カーペット等の柔らかい床仕上げ材は、食器の落下などの軽量床衝撃音に対する遮断効果はあるが、重量床衝撃音に対する遮断効果は期待できない。重量床衝撃音に対してはスラブを厚くする方法がある。

2.孔あき板等の背後に空気層がある場合、開孔率が小さければ孔と空気層が共鳴器として機能し、共鳴的特性の吸音効果が現れる。

4.6mmの単板ガラスと、3mm+3mmの合わせガラスの透過損失はほぼ等しい。複層ガラスは断熱効果は単板ガラスよりも期待できるが、中音域で遮音性能が低下するため、遮音効果は望めない。

〔H28 No.11〕冷凍機に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.吸収冷凍機は、一般に、同一容量の遠心冷凍機に比べて、振動及び騒音が小さい。
2.吸収冷凍機は、一般に、同一容量の遠心冷凍機に比べて、冷却水量が少ない。
3.吸収冷凍機は、一般に、同一容量の遠心冷凍機に比べて、機内(冷媒循環系)の圧力が低い。
4.吸収冷凍機は、一般に、同一容量の遠心冷凍機に比べて、消費電力が少ない。

解答 2:「吸収冷凍機」は、吸収力の高い液体に冷媒を吸収させ、発生する低圧によって(設問3)、別の位置の冷媒を気化させて低温を得る冷凍機のこと。消費電力が少なく、遠心冷凍機に比べて省エネルギーである(設問4)。直だき式、蒸気式、廃熱利用式などの種類があり、フロンを使わず臭化リチウムを吸収液に用いる。
騒音・振動が小さいが(設問1)、冷媒分離のための熱を多く必要とするので、冷却水量が多くなり、遠心冷凍機に比べて冷却塔が大きくなる。

〔H28 No.12〕空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.外気冷房の省エネルギー効果は、内部発熱密度が高い建築物ほど期待できる。
2.単一ダクト方式において、外気冷房を用いた場合、冬期における導入外気の加湿を行うためのエネルギーを削減することができる。
3.データセンターの空気調和設備の特徴は、「年間連続運転」、「年間冷房」、「顕熱負荷が主体」等であり、計画地の気象条件等によっては、外気冷房や冷却塔フリークーリングが効果的な省エネルギー手法として考えられる。
4.データセンターのエネルギー効率を定量的に評価する指標PUE(Power Usage Effectiveness)は、「データセンター全体のエネルギー消費量」を「CT機器のエネ ルギー消費量」で除した値である。

解答 2:「エンタルピー」とは、熱エネルギー(全熱量)の状態量の指標である。温度が高いとエンタルピーは大きくなる。「外気冷房」は、室外の空気温度(エンタルピー)が、室内の空気温度(エンタルピー)よりも低い時に外気を導入し、冷房と換気を行う。この外気冷房方式は、内部発熱の大きい事務所ビル、デパート、商業建築物などで採用されるが、冬期の低湿な空気を導入する場合は加湿処理のための負荷が増える。(設問1,2に関連)

3.データセンターは、各種のコンピューターや通信機、その他の機器の運用のため、相当なエネルギーが年間を通じて消費される。このため、採用される空調設備には、年間冷房、顕熱負荷主体、年間連続運用を併せて計画する必要がある。これを満足させる省エネ対策としては、外気導入冷房方式や、冷却塔フリークーリングが効果的である。

4.データセンターのエネルギー効率を定量的に評価する指標PUE(Power Usage Effectiveness)は、「データセンター全体のエネルギー消費量」を「IT機器のエネルギー消費量」で除した値であり、その値が小さいほど省エネルギー性が高い(設問分ママ)。

〔H28 No.13〕換気設備・排煙設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.ボイラー室等の燃焼機器を使用する機械室の換気方式は、第3種換気とする。
2.置換換気(ディスプレイスメント・ベンチレーション)は、汚染物質が周囲の空気より高温又は軽量の場合に有効である。
3.隣接した二つの防煙区画において、一般に、防煙垂れ壁を介して一方の区画を自然排煙、他方の区画を機械排煙とすることはできない。
4.機械排煙設備において、天井の高さが3m未満の居室に設ける排煙口の設置高さ(下端高さ)は、一般に、天井から80cm以内、かつ、防煙垂れ壁の下端より上の部分とする。

解答 1:ボイラー室はボイラー運転に必要な燃焼のための空気を一定に送り込む必要があるので、第1種換気方式もしくは第2種換気方式を用いる。採用例としては第1種換気方式が多い。

2.冷たい空気ほど重く、床付近に停滞する。この性質を活かしたディスプレイスメント・ベンチレーション(置換換気)は、室内に室温より低温の空気を送り込むことで室内にある空気を押し上げ、汚染空気を排出することにより換気を行う方式である。汚染物質が周囲空気より高温又は軽量な場合に有効である。

3.隣接した2つの防煙区画において異なる排煙方式を用いる場合は、垂れ壁では防煙区画とはできず、防火区画もしくは間仕切りによる防煙区画とする。

4.建築基準法において、排煙設備が必要な建築物は、床面積500m2以内ごとの防煙区画が必要となる。防煙区画部分の各部分から水平距離で30m以下となるように設けなければならない。設置高さは、天井面から80cm以内、かつ、防煙垂れ壁の下端よりも上に設け、排煙風道に直結する。

〔H28 No.14〕給排水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.受水槽の材質については、腐食のがあるため、現在、木を使用することはできない。
2.排水再利用水は、人の健康に係る被害の防止のため、大腸菌が検出されない場合であっても、飲料水として使用することはできない。
3.給水管を、硬質塩化ビニルライニング鋼管とし、管端防食継手を使用すれば、赤水の発生を防止することができる。
4.給湯用ボイラーは、常に缶水が新鮮な補給水と入れ替わるため、空気調和設備用温水ボイラーに比べて腐食しやすい。

解答 1:受水槽の材質には木材も使用することができ、他にも鋼板、ステンレス鋼板、強化プラスティックなどがある。木製受水槽は①断熱性が高く、②水密性が高く、③内部の防食処理が不要などの利点がある。樽や桶をイメージすると理解しやすい。


2.「排水再利用システム」とは、生下水を浄化し、トイレ用水、散水、冷却・冷房用水、消火用水、清掃用水などに使用できる排水再利用システムのことである。飲料水としての再利用はされない。

3.赤水は、鉄の酸化・溶出により発生するので、塩化ビニルを内面にライニングした硬質塩化ビニルライニング鋼管、また防食継手を使用することで赤水の発生を防止することができる。

4.給湯用ボイラーは、開放回路(常に缶水が新鮮な補給水と入れ替わる)なので、密閉回路である空気調和設備用温水ボイラーに比べて腐食しやすい。これは新鮮な補給水の中にある酸素が腐食を促進させるためである。

〔H28 No.15〕給排水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.病院等の災害応急対策活動に必要な施設においては、受水槽や必要な給水管分岐部に地震の感知により作動する緊急給水遮断弁等を設けることが望ましい。
2.給湯設備の転倒、移動等による被害を防止するため、満水時の質量が15kgを超える給湯器については、一般に、アンカーボルトによる固定等の転倒防止の措置を講じる。
3.排水槽において、排水及び汚泥の排出を容易にするため、底部には吸込みピットを設けるとともに、排水槽の底部の勾配は、吸込みピットに向かって1/5以上とする。
4.一般的な事務所ビルにおいて、災害応急対策として、飲料用受水槽の容量を1日予想給水量の2倍程度に設定する場合は、水道法の規定による残留塩素の濃度を確保するため、塩素注入等を行う。

解答 3:排水槽の底には汚物などが溜まることがないように、吸込みピットに向かって1/15以上1/10以下の勾配を設ける。

1.都市・建築物が大規模な地震等の災害によって被災した場合、都市インフラ(電気、上水、下水、ガス等)は ある程度の期間途絶することを想定する必要がある。特に病院等の災害応急対策活動に必要な施設においては、受水槽や必要な給水管分岐部に地震の感知により作動する緊急給水遮断弁等を設けることが望ましい。

2.給湯設備で15kgを超えるものについて、転倒防止等の措置をとる必要がある。「建築設備の構造耐力上安全な構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1388号)」

4.受水槽の容量は、一般的に1日あたりの計画使用水量の4/10〜6/10程度としている。災害用に容量を予想給水量の2倍程度に設定する場合は、塩素注入を行い、末端給水栓での残留塩素を0.1mg/L以上確保する。

〔H28 No.16〕照明設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.照明制御の一つの方法として、照度センサを用いて不在エリアを消灯・減光する方法がある。
2.昼光を利用する照明計画を行う場合には、一般に、日射による空調負荷を抑えるための検討も必要となる。
3.照度計算に用いられる保守率は、ランプの経年劣化やほこり等による照明器具の効率の低下をあらかじめ見込んだ定数である。
4.病院の手術室・診察室において使用する照明設備は、事務室において使用する照明設備に比べて、演色性の高い光源とすることが望ましい。

解答 1:「照度センサ(ー)」とは、昼光利用や室内の照度を感知して調光するものであり、記述は「人感センサー」の説明である。

2.天窓や光庭等、昼光を積極的に取り入れた照明計画を行う場合には、空調負荷が増大する。このためペリメーターレス化を図り、ブラインド等による昼光の制御等の検討が必要となる。

3.照度計算に用いられる保守率は、ランプの経年劣化やほこり等による照明器具の光束減少の程度を表す数値である(設問文ママ)。「初期の作業面の平均照度」に対する「ある期間使用後の作業面の平均照度」の割合。

4.病院の手術室・診察室において使用する照明設備は、検査などを行うため、色の再現性を高める必要があり、演色性の高い光源とすることが望ましい。

〔H28 No.17〕電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.逆潮流は、コージェネレーションシステムや太陽光発電システム等で系統連系を行う場合に、需要家側から商用電力系統へ向かう電力潮流のことである。
2.燃料電池の発電の原理は、水の電気分解と逆の反応を利用したもので、水素と酸素が結合して電気と水が発生する化学反応である。
3.集合住宅において、契約電力が60kWを超える場合は、一般に、受変電設備の必要性が高くなる。
4.電圧の種別において、特別高圧と高圧とを区分する電圧は、6,000Vである。

解答 4:電圧の種別は、以下の表を参考にする。
よって特別高圧と高圧とを区分する電圧は、7,000Vである。

1.電力会社の発電施設から、送電線をつたって電力が家庭や企業に流れていくことを「順潮流」という。対して、逆潮流とは、太陽光発電や燃料電池による発電等の設備を有する需要家から商用電力系統へ向かう電力潮流のことである。

2.燃料電池とは、水素と酸素の化学反応(水の電気分解の逆反応)により、電力と熱を発生させる技術である。発電の際、発生するものは水のみであり、二酸化炭素は発生しない。また燃料電池自体には駆動する部分が少ないため、騒音・振動等もなく、きわめて環境に良い発電である

3.発電所で作られた高圧の電気は、電柱に設置される変圧器を通して家庭でも使える100Vや200Vの電圧に変換される。 一方、高圧小口需要家以上の施設・建物では、変換せずに高い電圧のまま電気を受け取り、受変電設備を用いて施設内で電圧を変換する。500kW以上の供給を受けている需要家を”高圧大口需要家” 、50kW以上500kW未満を”高圧小口需要家”、50kW未満を”低圧需要家”と呼ぶ。一般家庭消費者は低圧需要家にあたる。

〔H28 No.18〕防災設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.非常用の照明装置の予備電源には、蓄電池を照明器具に内蔵しない方式がある。
2.差動式熱感知器は、周囲が一定の温度以上になると火災信号を発する感知器である。
3.補助散水栓は、屋内消火栓のうち2号消火栓(広範囲型を除く。)と同等の放水量を有し、スプリンクラー設備へ配管接続する。
4.開放型スプリンクラーヘッドは、天井が高く種々の可燃物がある舞台部等に用いる。

解答 2:自動火災報知設備の「差動式熱感知器」は、室内(周囲)の温度が一定の上昇率になると作動する。対して「定温式熱感知器」は周囲が一定の温度以上になると火災信号を発する。

1.「非常用照明装置」は、地震や火災による停電時に避難に必要な照明を与える役割を持つ。常温下で床面において水平面照度で1lx(蛍光灯を用いる場合には2lx)以上を確保する必要がある。また予備電源(内蔵型または別置型)を設け、停電時に、充電を行うことなく30分聞継続して点灯できるものとする。

3.「補助散水栓」は便所、浴室、階段等など、スプリンクラーでは未警戒の部分を防護するための設備である。性能・機能は「2号消火栓」とほぼ同じである。ホース接続口からの水平距離(警戒範囲)は15mとなる。

4.開放型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備は、劇場などの舞台部や化学工場、倉庫など、急速に火災が成長・拡大する可燃物が存在する対象物に用いられるスプリンクラー設備である。

〔H28 No.19〕建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.一般的な事務所ビルにおいて、水槽類を除く設備機器を同一階に設置する場合、局部震度法による設計用標準震度は、防振支持された設備機器のほうが大きい値となる。
2.超高層建築物において、中央管理方式の空気調和設備の制御及び作動状態の監視を行うための室として、避難階又はその直上階若しくは直下階に、中央管理室を設ける。
3.乗用エレベーターは、一般に、火災発生時の乗客の避難を図るため、火災時管制運転により速やかに最寄階に停止させる計画とする。
4.非常用エレベーターを2基設置する必要がある場合、避難上及び消火上有効な間隔を保って配置する。

解答 3:地震、その他の衝撃により生じた加速度を検知した場合には、自動的にかごを「最寄階」の出入口の戸に停止するようにしなければならない。火災時には「避難階」へ停止するようにする。

1.設備機器に作用する地震力は、一般に局部震度法により算定される。防振支持をした設備機器においては、設備機器の応答倍率を高く設定し、設計用地震力を割増する。

2.高さ31mを超える建築物に設ける機械換気設備及び中央管理方式の空調設備の制御及び差動状態の監視は、避難階又はその直上若しくは直下階に設けた中央管理室で行う必要がある。令20条の2第2項

4.非常用エレベーターの計画において、複数台の設置を検討する場合は、避難上及び消火上、有効な間隔を保って配置する。建築基準法施行令第129条の13の3第2項

〔H28 No.20〕環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.再生可能エネルギーは、自然界に存在し繰り返し再生利用できるエネルギーのことであり、そのエネルギー源としては、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等がある。
2.冷凍機に使用される代替冷媒のフロン(HFC)は、オゾン破壊係数はゼロではあるが、温室効果ガスの一種である。
3.コージェネレーションシステムの原動機としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン等が使用される。
4.エレベーターの電力消費は、電力回生制御の有無により変化するが、巻上機のギアの有無には影響されない。

解答 4:エレベーターの電力消費は、積載質量、速度、運転時間、速度制御方式による係数の積に比例する。この「速度制御方式による係数」は、5種類に分類され、1種の「交換帰還制御方式」と、4種の「VVVF方式(電力回生の有無と巻上機ギアの有無で4種)」がある。
電力回生と巻上機ギアはどちらも省エネルギーが期待される。

1.再生可能エネルギーは、自然界に存在し繰り返し再生利用できるエネルギーのことであり、そのエネルギー源としては、太隔光、太陽熱、風力、水力、バイオマス、地熱等がある。(設問文ママ)

2.HFCは、国内では代替フロンと呼ばれており、今後は、地球温暖化係数が低い新しい冷媒に転換していく必要がある。

3.コージェネレーションシステムの原動機としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン等が使用される。熱電比(供給可能熱出力を発電出力で除した値)が小さく、最も効率がいい順序として、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンとなる。

1級建築士の学科対策

・イラストでわかる一級建築士用語集

・1級建築士 学科試験 要点チェック

投稿日:2019年7月30日 更新日:

執筆者:

このサイトは寄付及び広告益の運営で、無料で閲覧・活用していただけます。より良いサイト構築のためにアドバイスをお願いいたします。

また、運営継続のための寄付をお願いいたします。
ご寄付のお願い