平成26年度1級建築士-学科Ⅰ計画

建築士過去問解説

一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)

令和05年度試験日まであと 日!

〔H26 No.01〕建築士が行う建築設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.建築物の使い方、架構方式、設備方式、材料、施工方法等、計画段階から施工段階に至る多面的な要求の分析を行い、分析から得られた知見を様々な条件を考慮して総合し、一つの具体的な建築空間を提案する。
2.設計案が提供する性能の検討に縮尺模型やシミュレーションモデルを用いる場合、そこで示されるデータが実際の事物や現象のどのような側面に対応しているかを確認する。
3.設計案の検討中に生じた問題については、既に決定した事項に対しても、その是非の再検討を行い、必要に応じて、設計案を修正する。
4.実施設計段階においては、主に、建築主から提示された要求と様々な条件とを対応させてどのような方法によって空間化するかを検討し、それに続く、基本設計段階においては、主に、設計意図を工事施工者等に伝える図面を作成する。

解答 4:設計は「基本設計」から行い、それを基に「実施設計」を行う。基本設計は建築主からの要求、制約条件、意匠デザインなどをまとめる(意匠設計図書)。実施設計段階では、基本設計図書を基に部分詳細と使用材料の決定を行い、施工者に設計意図を伝える為の実施設計図書を作成する。

1.建築士は完成後の建築物の使い方だけではなく、その施工課程も含めて多角的に分析・計画しなければならない。

2.設計案の縮尺模型やシミュレーションモデルは正確に表現できているとは限らず、モデルによって示されるデータや、その背景にある建築条件を正確に把握することが必要である。

3.設計案の変更はしばしば起こることであり、既に決定した事項に対しても、その是非の再検討を行い、必要に応じて設計案を修正する(設問文ママ)。

〔H26 No.02〕日本の歴史的な建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.日光東照宮社殿(栃木県)は、本殿と拝殿との間を石の間でつないだ権現造りの例である。
2.伊勢神宮正殿(三重県)は、平入りで、切妻屋根堅魚かつおをもち、柱を全て掘立て柱としたしんめい造りの例である。
3.厳島神社社殿(広島県)は、神体山とする宮島の弥山みやままつるために島の海浜に設けられており、本殿は身舎もやの前後に庇を付けた両流造りの例である。
4.出雲大社本殿(島根県)は、正面の片方の柱間を入口とした左右非対称の平入りの形式をもつ大社造りの例である。

解答 4:出雲大社本殿は、最古の神社建築であり、切妻屋根、妻入り形式の大社造りである。2間×2間で、入口が左右非対称の本殿。

出雲大社本殿


1.「日光東照宮」は徳川家康(東照大権現)が祀られる霊廟建築。この時代は庶民文化が発達し、幕府は統制のための権威付けのために彩色や豪華な装飾を施された絢爛な建築となっている。墓(本殿)の前に石の間を挟んで「権現造り」の本殿が配置されているのが特徴。

2.「伊勢神宮内宮正殿」は、古来、倉庫として用いられた高床式家屋が神社形式に転化したものと見られている。神明造りの代表的建築であり、正面入り口を平側(平入り)に設けている。屋根は切妻造り。棟持柱が側面より出ており、平面構成は左右対称。古来高床式倉庫の名残で基礎石や土台がなく、掘立て柱となっている。

3.「厳島神社社殿」は広島の宮島にある世界遺産。檜皮葺の殿堂を275mにもなる回廊で結び、海面に浮かんでいるように配置する回廊建築。床下に海水が流れ込み、風が通る、自然に身を任せた建築。

〔H26 No.03〕建築に関する著書名、著者及びその内容との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。

解答 3:「見えがくれする都市」は、建築家の槇文彦、若月幸敏、大野秀敏、高谷時彦らの共著である。道路(街道、横道、わき道)の生成や、地形の影響、住人が所有した土地でどのように住居を配置するか、日本人の古来からの空間に対する認識について考察される。(「建築と活字」より:http://drowbypen.com/)

芦原義信の代表的著作には、「街並みの美学」などがある。

1.「形の合成に関するノート」クリストファー・アレクザンダー

2.「日本の住宅」藤井厚二

4.「実存・空間・建築」クリスチャン・ノルベルグ・シュルツ

〔H26 No.04〕自然エネルギーを利用した建築物のパッシブデザインにおけるパッシブヒーティングの原則に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.建築物の断熱・気密性能を高める。
2.建築物の集熱性能を高める。
3.建築物の日射遮性能を高める。
4.建築物の蓄熱性能を高める。

解答 3:パッシブデザインに関する設問である。このうち暖房利用にパッシブヒーティング、冷房利用にパッシブクーリングとに分かれる。パッシブヒーティングの3原則は、
①建築物の断熱・気密性能を高める
②建築物の集熱性能を高める
③建築物の蓄熱性能を高める

「建築物の日射遮性能を高める」と、パッシブクーリングに求められる原則である。

〔H26 No.05〕建築物の開口部等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.ライトシェルフは、窓中段部に設置した庇により、庇下部の窓面からの日射を遮しつつ、庇上部の拡散ガラス等を用いた窓面から室内に自然光を導く手法である。
2.エアフローウィンドウ方式は二重のガラス間に外気を通して熱負荷を低減する方式であるのに対して、ダブルスキン方式は二重のガラス間に室内空気を通して熱負荷を低減する方式である。
3.建築物の開口部に強化ガラスを使用する場合は、ガラス内部の微細な不純物の混入による自然破損の発生を低減するため、ヒートソーク処理を行ったものを用いることが望ましい。
4.カーテンウォールのオープンジョイント方式において、等圧空気層の容量は、空気取入れ口に比べて大きくならないようにする必要がある。

解答 2:それぞれ説明が逆である。エアフローウィンドウ方式は室内空気を通し、ダブルスキン方式は外気を通して熱負荷を低減する。


1.「ライトシェルフ」は窓中段部に庇を設置し、庇下部の窓面からの日射を遮しつつ、庇上部の拡散ガラス等を用いた窓面から室内に自然光を導く手法である。主に事務所ビルなどで日射の遮蔽効果を保ちつつ自然光を導入するために採用される。

3.ガラスにできた傷は進行する可能性があるため、出荷前の強化ガラスに約300℃の熱をある時間加えて経過を見る「ヒートソーク処理」によって確認する。

4.カーテンウォール等の外壁に用いられる「オープンジョイント方式」は、部材間の接合部から雨水が浸入することを防ぐため、内外の空気圧を等圧にすることにより重力で排水する。

〔H26 No.06〕建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.児童数700人の小学校の計画において、学校内に学校給食施設(調理室、調理従事員室、食糧貯蔵室等)を設置するため、その床面積を、49m2とした。
2.事務所ビルの計画において、収容人員12人程度の会議室の内法寸法を、5m×10mとした。
3.シティホテルの計画において、収容人員100人程度の着席形式の結婚披露宴ができるように宴会場の床面積を、250m2とした。
4.自走式の立体駐車場における自動車の車路の計画において、傾斜部の本勾配を1/6とし、傾斜部の始まりと終わりのそれぞれの長さ6mの部分の緩和勾配を1/12とした。

解答 1:学校給食施設の面積は「学校給食実施基準」に定められている。

学校給食施設面積


これによると、児童数700人の学校給食施設は、
64m2+0.04m2×(700人-600人)=68m2
と算出される。

2.会議室は一人あたり2~3m2で計算する。12人程度で24~36㎡、20人程度で40~60㎡を目安とする。ただし、ロの字配置の場合は、より面積が必要となる。

3.結婚披露宴を想定した宴会場の床面積は、一人当たり1.5~2.5m2程度を目安とする。このため、100人収容の場合、150~250m2として計画する。

4.自走式の立体駐車場の車路は、傾斜部の本勾配を1/6以下とし、傾斜部の始まりと終わりに緩和勾配(本勾配の1/2)を設け、またその長さは、2.5~6m程度とする。

〔H26 No.07〕図のような6人掛けの長方形の机に2人の人間が着席している場合の位置関係について、最もソシオペタルな状況を示すものは、次のうちどれか。なお、図中の矢印は、人間の顔の向きを示したものである。

解答 3:文中の「ソシオペタル」とは、人が集まって交流を活発にすることが想定される状態をいい、反対に不活性な状態を「ソシオフーガル」という。設問の中でソシオペタルな状態からソシオフーガルの順番に並べると、3→1→4→2になる。

〔H26 No.08〕建築物の各部の寸法に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.保育所の幼児用トイレにおいて、3~5歳児用の小便器の間隔を、55cmとした。
2.リゾートホテルの大浴場において、洗い場のカランの間隔を、隔て板を設けなかったので60cmとした。
3.事務所ビルの事務室において、設置するパーティションの高さを、椅子に座った状態で見通しがよくなるように、床面から110cmとした。
4.屋内の公式試合用のテニスコートにおいて、コートの中央部分(ネットの真上)の天井の高さを、15mとした。

解答 2:洗い場のカランの間隔は約90cmとすることが望ましい。

1.大人用の小便器の間隔は芯々75cm程度、子供用では芯々55cm程度で配置する。

3.設問のパーティションの高さ110cmは、椅子に座った状態で見通しがよくなる高さである。


4.体育館の計画でその高さは、卓球4m以上、武道場4.5m以上、バスケットボール7m以上、テニスコート12m以上、バレーボール12.5m以上。

〔H26 No.09〕車椅子使用者、高齢者等の利用に配慮した公共図書館の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に基づく移動等円滑化経路を構成する傾斜路においては、高さ200mmの段差に対して、勾配を1/10とし、手すりを設けた。
2.エレベーター内に設ける車椅子使用者対応の操作盤の行先階数ボタンの位置を、エレベーターかごの床面から1,000mmとした。
3.廊下の有効幅員を、車椅子のすれ違いを考慮して、1,800mmとした。
4.多目的トイレにおいて、内法寸法を2,000mm×2,000mmとし、オストメイト用の流しや車椅子使用者が利用できる洗面台を設置した。

解答 1:移動等円滑化経路は、その勾配を1/12以下とする。高さが160mm以下の場合は1/8とすることができるが、高さ200mmなので、勾配は1/12とする。

2.エレベーターかご内の操作盤は、車椅子使用者に配慮して床から1,000mmの高さとし、横型とする。

3.車椅子が歩行者とすれ違う場合は1,200mmとして、車椅子同士だと1,800mm必要となる。

4.オストメイトとは、癌や事故などにより消火管や尿管が損なわれたため、腹部などに排泄のための人工肛門・人工膀胱を造設した人のことをいう。オストメイト対応のトイレはシャワーなども設けることがあるので、内法寸法2,000×2,000mmは必要になる。

〔H26 No.10〕都市計画及びに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.ニューアーバニズムは、住民参加を原則とした計画手法であり、アメリカをはじめとする諸外国や日本の住宅地開発で採用されている。
2.土地区画整理事業は、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るために行われる、土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業である。
3.フリンジパーキングは、都心部周辺に駐車場を整備し、都心内への車の流入の抑制を目的としたの手法である。
4.LRTは、低床式車両の活用や軌道等の改良による乗降の容易性、定時性、速達性、快適性等の面で、優れた特徴を有する軌道系交通システムである。

解答 1:「ニューアーバニズム」はアメリカで発達した都市設計であり、イギリスでは「アバンビレッジ」、ヨーロッパ・日本では「コンパクトシティ」などが同様の概念を持っている。郊外へと無秩序に広がった都市を、伝統的なコミュニティが持つ価値によって再構築することを目指す考えが原点にある。ただし、必ずしも住民参加を原則としたものではない。

2.「土地区画整理事業」とは、都市計画区域内の土地について、公共施設の整備改善及び宅地の利用の増進を図るため、この法律で定めるところに従って行われる土地の区画形質の変更及び公共施設の新設又は変更に関する事業をいう(土地区画整理法2条)。用地買収による幹線道路整備事業と似ているが、土地区画整理事業は公平性が高く、広範囲で整形な土地にすることができる。



3.フリンジパーキング(Fringe Parking)とは、路外駐車場を都心部の外周に計画的に配置し、都心部への車の乗り入れを抑制する。パークアンドライドと組み合わせて整備され、公共交通の乗換駅や停留所に併設されることが多い。また、都心部をモール化し歩行者優先空間を整備する際にも用いられ、ドイツのケルン、イギリスのコンベントリーなどで実施されている。

4.LRT(Light Rail Transit) は、都市内の交通渋滞の緩和や環境問題の解消を図るうえで有効な公共交通機関として、欧米を中心に導入されている新しいタイプの路面電車システムである。

〔H26 No.11〕まちづくりの制度等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.都市再生特別措置法による都市再生特別地区は、都市の再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る特別の用途、容積、高さ、配列等の建築物の建築を誘導する必要があると認められる区域について、都市計画に定めることができるものであり、建築物等の誘導すべき用途、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度等を定める地区である。
2.高度地区は、都市計画法に基づく地域地区の一つであり、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である。
3.市街地再開発事業は、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るために、都市計画法及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備等を行う事業である。
4.総合設計制度は、敷地規模が大きく、敷地内に広場等の公開空地を有し、建築物の形態も良好な建築計画について、都市計画法に基づき、容積率及び形態の制限を緩和し、市街地環境の整備改善を促進する制度である。

解答 4:「公開空地」は、建築物の敷地内に設けられ、誰でも自由に利用できる空地もしくは開放空間である。敷地を貫通して道路、公園等を相互に有効に連絡するもので、特定行政庁が定める所定の幅以上の歩道状の空地、建築物を貫通する通路、アトリウム空間も含まれる。

一方「総合設計制度」とは都市計画で定められた制限に対して、建築基準法で特例的に容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限を緩和することができる。この緩和制度を適用するために要件の一つとして「公開空地」の確保がある。

1.「都市再生特別地区」とは、都市の再生拠点として、都市再生緊急整備地域(都市開発事業等を通じて緊急かつ重点的に市街地の整備を推進すべき地域)内において、建築基準に定める用途規制や容積率などの一般的な規制を適用せず、自由度の高い計画を定めることができる特例である。建築物等の誘導すべき用途、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建ぺい率の最高限度等を定めることができる。(都市再生特別措置法36条)

2.高度地区は、用途地域内において市街地の環境を維持し、又は土地利用の増進を図るため、建築物の高さの最高限度又は最低限度を定める地区である(都市計画法9条17項)。

3.「市街地再開発事業」は、市街地の土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るために、都市計画法及び都市再開発法で定めるところに従って行われる建築物及び建築敷地の整備並びに公共施設の整備等を行う事業である(都市再開発法2条)。第一種市街地再開発事業と第二種市街地再開発事業がある。

〔H26 No.12〕集合住宅等の事例とその特徴との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。

解答 4:「求道学(學)舎」は、1926年に竣工したRC造3階建の学生寮を、コーポラティブハウスとして10戸の共同住宅にリノベーションしたものである。武田五一の設計による。

求道学舎(東京都)


設問文特徴は「再春館製薬女子寮(熊本)」が該当する。

1.「Mポート」は居住者の参加によって各住戸の設計が行われたコーポラティブハウスであり、「もやい住宅」とも呼ばれる。1992年竣工、地上5階建て(エレベーターなし)。居住者の交流等を意図して共有空間を配置している。
2.「桜台コートビレッジ」は、東急電鉄が田園都市線沿線の地域開発計画の一環として建設した地上6階建て40戸の集合住宅である。住戸ユニットを斜面と南北軸に対して45度振って雁行型の構成とすることで各住戸への採光やプライバシーを確保している。

3.「りえんと多摩平」は、多世代が交流する団地型シェアハウスである。個室は3室で1ユニット。家具付きの個室ではプライバシーを確保し、キッチンやラウンジ、テラスなど色々な場所をシェアする。

〔H26 No.13〕住宅の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.コートハウスは、建築物や塀で囲まれた中庭をもつ住宅の形式であり、狭い敷地においてもプライバシーを確保しやすい。
2.ストリート型住宅は、集合住宅の接地階部分において、居住者が日常生活の延長として、街並みの形成に参画できるような配慮を行うことによって、街路の活性化を意図した集合住宅の住戸形式をいう。
3.デュアルリビングは、廊下に面してリビングルームをもつ二棟の片廊下型住棟を向かい合わせに配置し、部分的にエレベーターホール等で連結した住棟形式をいう。
4.ライトウェルは、住戸の奥行きが深い場合であっても、通風と採光を得ることができる計画手法である。

解答 3:「デュアルリビング」は、家族用のファミリールームと、接客を意識した フォーマルリビングという2つのリビングルームをもつ住宅の平面形式をいう。

設問文前半「廊下に面してリビングルームをもつ」のはリビングアクセス型で、後半「二棟の片廊下型住棟を向かい合わせに配置し、部分的にエレベーターホール等で連結した住棟形式」はツインコリドール型が該当する。

1.「コートハウス」は、建築物や塀で囲まれた中庭を設ける住宅形式である。中庭を設けることで、北側に設けられる居室にも、日照や通風を確保することが出来る。坂倉準三の「正面のない家」や、宮脇檀の「まつかわぼっくす」などが代表的。

2.「ストリート型住宅」は、街路に面して開かれたフリースペースである一室を集合住宅の接地階に設け、居住者が日常生活の延長として、町並みの形成に参画できるような配慮を行い、街路の活性化を生み出すことを意図した住戸形式である。「プロムナード多摩中央」もその形式を取り入れている。

4.「光井戸・ライトウェル(Light Well)」は、天窓と吹き抜けを組み合わせて、屋根からの光を深く落とすための構造のこと。光天井、光庭、トップライトともいう。奥行きの深い住戸に隣接して設けることで、採光・通気を確保することができる。

〔H26 No.14〕商業建築等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.20階建ての自社専用の事務所ビルにおける乗用エレベーターの台数については、エレベーター利用のピーク時の5分間集中率を在館人数の25%として算出した。
2.大規模商業店舗の計画において、地下階に設ける駐車場の各柱間に普通自動車が並列に3台駐車できるように、柱スパンを7m×7mと設定した。
3.基準階の平面が25m×20mの低層の事務所ビルの計画において、事務室の適切な奥行きを確保するために、偏心コアタイプを採用した。
4.宴会場を備えたシティホテル(客室数750室)の計画において、客室一室当たり100m2として延べ面積の検討を行った。

解答 2:普通自動車が3台駐車する場合は、そのスパンを8.0m〜8.5m程度とする場合が多い。1台あたりの駐車スペースを2.5m×5m程度で想定すると、自動車が並列に3台駐車できるようにするためには、間口有効で2.5×3=7.5m程度必要となる.柱サイズを1m程度見込むと柱スパンは、8.5m程度となる。

1.事務所ビルの計画における乗用エレベーターの設置台数は、般に、ピーク時の値として出勤時の交通量をもとにシミュレーションを行い、5分間集中率を貸ビルでは在籍人数の10〜15%、自社ビルでは20〜25%として交通計算を行い、平均運転間隔を40秒以下とするのが望ましいとされている。

3.「偏心コア(片コア)タイプ」は500-1,000m2程度の低層・中層建築物に採用されることが多い。レンタブル比を高めることができる。ただし、2方向避難の計画が難しく、構造上の偏心が大きいことから高層建築物での採用は望ましくない。

4.ビジネスホテルでは客室一室あたり50m2程度として計画し、客室は全体の70%程度を占める。一方、シティホテルは宴会場や飲食店などを総合的に装備しているので、延べ面積は、客室一室あたり100-150m2程度として計画し、客室は全体の45-50%程度を占める。

〔H26 No.15〕公共建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.美術館の計画において、自然採光を利用した展示室に光量不足を補うための照明として、高演色蛍光灯を用いた。
2.中学校の計画において、各教科で専用の教室をもち、生徒が時間割に従って教室を移動して授業を受ける総合教室型とし、ロッカー等の生徒の生活諸施設を充実させた。
3.地域図書館の計画において、延べ面積当たりの蔵書数を、40~50冊/m2程度とした。
4.劇場の計画において、客席と舞台の一体感を高めるために、プロセニアムをもたないオープンステージ形式を採用した。

解答 2:記述は「総合教室型」ではなく「教科教室型」の説明。欧米諸国では一般的な方式であり、日本の小学校では低学年を「総合教室型」、高学年を「特別教室型」とすることが多く見られる。

1.美術館での自然採光を利用した展示室では光量が不足する場合があるため、高演色蛍光灯等を使用する。(そもそも美術品にに対する自然光の照射は悪影響を与える場合があるので、なるべくLED照明や高演色蛍光灯を用いるのが一般的である。)なお、「高演色」とは、対象物を照らし出した際に、その対象物の色の見え方のよしあしを示す尺度となる演色性(Color Rendering Property)が高いことを指す。

3.一般的に開架書庫は約170冊/m2程度、移動式書庫は400m2程度として計画する。設問のように図書館全体の延べ面積あたりで計画する場合は、約50冊/m2程度として計画するのが一般的である。

4.「プロセニアム・ステージ」とは、舞台を飾る、もしくは客席とを分離する「額縁」のようなものであり、オペラ劇場などで用いられる。幕を下ろせば完全に客席と舞台とを別の空間に閉ざすことができるため、クローズ的である。対して、オープンステージ形式は客席が舞台を囲む形式をとり、客席と舞台の一体感を高める効果が期待できる。

〔H26 No.16〕高齢者のための施設や住まいに関する用語とその説明との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。

解答 2:説明は「介護老人保健施設」である。「有料老人ホーム」は民間が主体の施設であり、高齢者が入居し、入浴・排泄・食事・その他の日常生活を行う上で必要なサービスを提供する。

1.「老人デイサービスセンター」は、老人福祉法に規定する老人福祉施設の一つで、介護や支援が必要な方を対象とした日帰りの通所サービスを提供する事業所をいう。身体上または精神上の障害があるために、日常生活を営むのに支障がある高齢者等が、日中に通所(日帰り)利用し、入浴や食事の提供、機能訓練、介護方法の指導、生活等に関する相談および助言、養護、健康診査の便宜などを受けることができる。通常、利用者の居宅から施設までの送迎が行われ、また施設によっては、通所方式でのサービスだけでなく、職員が利用者の居宅を訪問するサービスを行う。

3.「ユニットケア」は、10人前後のユニット(単位)を組んで、福祉施設などでケアを行なう方式をいう。これは、特別養護老人ホームなどの高齢者施設において、入居者をグループ分けして一つの生活単位とし、少人数の家庭的な雰囲気の中で、他の入居者や介護スタッフと共同生活をしながら、一人一人の個性や生活リズムに応じて暮らしていけるようにサポートする介護手法を指す。

4.「ハウスアダプテーション」は、高齢者や身体障害者が暮らす既存住宅を、在宅のまま住み続けられるように、各々の身体状況に応じて一部を改修し、開口部や通路の有効幅員、段差などの日常生活上の障害を除去することである。

〔H26 No.17〕建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.事務所の計画に当たり、固定間仕切を使わず、ローパーティション・家具・植物等を自由に配置することによって、適度なプライバシーを保った執務空間を形成するオフィスランドスケープを採用した。
2.事務所の計画に当たり、在席率が低い職種の事務所であったので、フリーアドレスオフィスを採用し、執務空間を有効活用できるようにした。
3.劇場の計画に当たり、台詞せりふを主体とする演劇の見やすさを考慮し、可視限界距離を20mとして客席の配置を計画した。
4.図書館の計画に当たり、閉架式書庫の内部にブラウジングルームを設け、BDSによって、入室管理を行うことができるようにした。

解答 4:「ブラウジングルーム(コーナー)」とは、新聞や雑誌などを気軽に読む空間である。そのため気軽に立ち寄れる場所としては閉架式書庫の内部は適当でない。一般的には一階出入り口付近に設けられる。

北名古屋市図書館のブラウジングコーナー


1.「オフィスランドスケープ」は、一般に、固定間仕切を使用せず、ローパーティション・家具・観葉植物などによって事務室のレイアウトを行う手法である。

2.「フリーアドレスオフィス」では固定席を少なく、もしくは設けずに、座席を在籍者で共有する。社員の生産性向上や業務の効率化、また社員間のコミュニケーションが期待できる。ただし、在席率が低い職種に限られるため、面積効率は小さくなる。

3.劇場やホールなどでの可視限界範囲は、セリフを主体とする演劇や小規模な演奏の場合で22m(一次許容限度)、一般的な身振りが見えるためには38m(二次許容限度)とされている。なお、出演者の表情や細かい身振りを鑑賞できる限度は15m程度である。

〔H26 No.18〕建築物の設計・工事監理の契約に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.一級建築士の設計によらなければならない建築物の工事において、設計施工一貫の工事であれば、工事監理者を置く必要はない。
2.工事監理者は、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに工事施工者に対してその旨を指摘し、設計図書のとおりに工事を実施するように求め、工事施工者がこれに従わないときには、その旨を建築主に報告しなければならない。
3.一級建築士事務所において、建築士法で定める重要事項の説明については、管理建築士のほか、当該建築士事務所に属する一級建築士も行うことができる。
4.建築士は、建築士事務所としての登録を受けないで、他人の求めに応じ、報酬を得て、設計又は工事監理の業務を行ってはならない。

解答 1:建築主は、建築士の設計によらなければならない工事において、工事監理者を定めなければならない。これは設計施工一貫工事においても適用される。(建築基準法第5条の6)

2.建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない(士法18条3項)。

3.建築士事務所の開設者は、設計受託契約又は工事監理受託契約を建築主と締結しようとするときは、あらかじめ、当該建築主に対し、管理建築士その他の当該建築士事務所に属する建築士をして、設計受託契約又は工事監理受託契約の内容及びその履行に関する次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面を交付して説明をさせなければならない(士法24条の7第1項)。

4.建築士を使用する者は、他人の求めに応じ報酬を得て、設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理を業として行おうとするときは、建築士事務所を定めて、都道府県知事の登録を受けなければならない(士法23条1項)。

〔H26 No.19〕建築積算に関する次の記述のうち、建築工事建築数量積算研究会「建築数量積算基準」に照らして、最も不適当なものはどれか。

1.「計画数量」は、設計図書に表示されていない施工計画に基づいた数量をいい、仮設や土工の数量等がこれに該当する。
2.「所要数量」は、「定尺寸法による切り無駄」や「施工上やむを得ない損耗」を含んだ数量をいい、鉄筋、鉄骨、木材等の数量がこれに該当する。
3.窓、出入口等の開口部による型枠の欠除は、原則として建具類等の開口部の内法寸法で計算し、開口部の内法の見付面積が1か所当たり0.5m2以下の場合は、原則として型枠の欠除はないものとする。
4.石材による主仕上げの計測・計算において、1か所当たりの面積が0.5m2以下の開口部による石材の欠除については、原則として、ないものとする。

解答 4:コンクリート、型枠、鉄筋、鉄骨、間仕切下地、主仕上、石材等の数量の算出において、開口部、ダクト孔、配管等がある場合で、その開口部等は小さい場合、欠如はないものとする。
・一般:0.5m2以下
・鉄骨と石材:0.1㎡以下

1.計画数量とは、設計書などに記載されない仮設物や土木工事などの数量のことであり、施工計画の施工図によって算出する。工事のための仮囲いや工事用道路の設置、安全管理要員の配置といった共通仮設費を計算する際に用いられる。

2.「設計数量」は、設計図書に記載されている個数及び設計寸法から求めた数量をいうが、施工においては切り無駄などを考慮して実際に使用する数量を算出する。それが「所要数量」であり、設計数量に割増率を乗じて求める。

3.「窓、出入口等の開口部による型枠の欠除は、原則として建具類等の内法寸法とする。なお,開口部の内法の見付面積が1か所当たり0.5m2以下の場合は、原則として型枠の欠除はしない。」(公共建築数量積算基準)

〔H26 No.20〕プロジェクトマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.LCMは、建築物の機能や効用の維持又は向上を図りつつ、建築物をその生涯にわたって管理することであり、LCCを最大化することが大きな目的である。
2.不動産分野におけるアセットマネジメントは、不動産の所有者や投資家の代行として、テナント対応や建築物の維持管理、運営までを含めた一連の不動産業務を行うことである。
3.BOTは、公共サービスに関わる建築物を民間が建設して一定期間運営し、期限満了後に行政に移管する仕組みのことである。
4.VMは、建設投資の最適化を目的として、コスト縮減に関わる提案を実現するために実施するものである。

解答 1:「LCM(ライフ・サイクル・マネジメント)」は計画的な維持保全や運用計画を基に、建築物の長寿命化と、運用費・保全費・修繕更新費の最適化をすることであり、LCC(ライフ・サイクル・コスト)を最小化することが目的である。
(関連問題:平成29年1級学科1、No.20平成23年1級学科1、No.20)

2.正しい。「アセットマネジメント」とは、投資目的での不動産形成や運用、保全を行う業務を指す。投資家・オーナーに代わって不動産の総合的な資産管理を行い、その価値を最大化することが主な目的。

3.「PFI」は国や地方公共団体の事業コストの削減や、より質の高い公共サービスの提供を目的として、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営を行う手法。PFIの3つの運用が以下になる。
①BOT(Built Operate Transfer):建設→運営→譲渡
②BTO(Built Transfer Operate):建設→譲渡→運営
③BOO(Built Own Operate):建設→自己所有→譲渡

4.VM(Value Management)は、建設投資の最適化を目的として、コスト縮減に関わる提案を実現するために実施するもの(設問文ママ)。基本計画や基本設計段階などプロジェクトのより早い段階で実施することで、コスト削減効果が大きくなる。

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投稿日:2019年8月1日 更新日:

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