
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔H25 No.01〕環境工学で用いられる用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.飽和絶対湿度は、ある温度の空気が含むことのできる限界の水蒸気量を、単位乾燥空気当たりの水蒸気量で示したものである。
2.音響エネルギー密度レベルは、音のもつ単位体積当たりの力学的エネルギー量を、デシベル表示したものである。
3.長波長放射率は、日射を除いた赤外線域において、「ある部材表面から発する単位面積当たりの放射エネルギー」を「その部材表面と同一温度の完全黒体から発する単位面積当たりの放射エネルギー」で除した値である。
4.輝度は、比視感度を考慮した単位時間当たりの光のエネルギー量である光束の単位立体角当たりの密度である。
解答 4:輝度は、単位面積(m2)から発せられる光度(cd:lm/sr)であり、見かけ(見た目)の明るさである。設問は「光束」に関する記述。
1.飽和絶対湿度は、ある温度の空気が最大限に含むことができる水蒸気量を乾き空気1kg中に含まれる水蒸気量で表わしたものである。
2.「音響エネルギー密度(E:J/m2)」は音のもつ単位体積当たりの力学的エネルギー量を示したものであり、レベル表示したものを「音響エネルギー密度レベル(EL:dB)」という。
3.長波長放射率は、赤外放射域において、「ある部材表面から発する単位面積当たりの放射エネルギー」を「その部材表面と同一温度の完全黒体から発する単位面積当たりの放射エネルギー」で除した値である。温められた物体の表面からの熱の放出しやすさを示す指標。0〜100%で示され、数値が高い程、長波長放射率(冷却効果)が高いことを示す。
〔H25 No.02〕室内の温熱・空気環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.平均放射温度(MRT)は、グローブ温度と気流速度の計測値から概算で求められる。
2.ホルムアルデヒドを発散する材料を使用した天井裏からの汚染物質の流入を抑制するためには、居室内の圧力を天井裏より低くしないことが有効である。
3.着席安静時における日本人の標準的な体格の成人男性の代謝量は、約100W/人である。
4.予測平均温冷感申告(PMV) は、主に均一な環境に対する温熱快適指標であるため、不均一な放射環境、上下温度分布が大きな環境及び通風環境に対しては適切に評価できない場合がある。
解答 1:平均放射温度(MRT: Mean Radiate Temperature)は、全方位からの放射を平均した温度である。グローブ温度(θ(g))、空気温度(θ)及び気流速度(v)から求められる。
MRT ≒ θg + 2.35√v(θ(g)-θ)
2.ホルムアルデヒドを発散する材料を使用した天井裏からの汚染物質の流入を抑制するためには、気密性を高くするか、居室内の圧力を天井裏より低くしないこと(第二種換気方式とする等)が有効である。
3.椅座安静状態の成人の代謝量は、体表面積当たり58W/m2とされる。成人の体表面積は約1.7m2なので、58W/m2×1.7m2=100Wとなる。
4.予測平均温冷感申告(PMV:Predicted Mean Vote)とは、室内における人の温熱感覚に関係する、気温、放射温度、相対湿度、気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。主に均一な環境に対する指標であるため,不均一な放射環境,上下温度分布が大きな環境及び通風環境に対しては適切に評価できない場合がある。
〔H25 No.03〕換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.定常状態において、外部から室内へ流入する空気の質量は、室内から外部へ流出する空気の質量と等しい。
2.建具まわりの隙間から流入・流出する漏気量は、隙間前後の圧力差の1/n乗に比例し、nは1〜2の値をとる。
3.ある建築物の容積の異なる二つの室において、室内の二酸化炭素発生量(m3/h)及び換気回数(回/h)が同じ場合、定常状態での室内の二酸化炭素濃度(%)は、容積が小さい室より大きい室のほうが高くなる。
4.ナイトパージは、外気温度が建築物内の温度以下となる夜間を中心に、外気を室内に導入することで躯体等に蓄冷する方法であり、冷房開始時の負荷を低減し、省エネルギー化を図ることができる。
解答 3:定常濃度Pは以下の式で表わされる
P = P0 + K/Q
大気汚染濃度P0、汚染質発生量K、換気量Q(=換気回数×室容積)
これによると、定常濃度Pは換気量Qが関係しており、室容積が大きく(小さく)なると、定常濃度Pは小さく(大きく)なる。
1.定常状態において、流入外気と流出空気の質量(=密度×体積)は、常に一定の関係を保つ。
2.「漏気量」は建物の気密性・断熱性能を評価するものである。建具まわりの隙間から流入・流出する漏気量は、隙間前後の圧力差の1/n乗に比例し、nは1〜2の値をとる。
4.ナイトパージは、外気温が低下する夜間に外気導入・自然通風を図り、居住者に涼感を与えるとともに、室内の蓄熱体の温度を下げ、翌日の室温上昇を抑え、空調立上げ負荷を減らす省エネルギー手法である。近年、建物の機密性の向上、コピーやプリンターなどの発熱量の大きいOA機器の増加などにより室内発熱が増加し、中間期や冬期に冷房が必要な場合が増えている。中間期、冬期の冷房需要が多いビルでは、外気温度が室温より低い(又は冷房送風温度に近い)場合に、冷凍機を運転せずに送風運転のみを行う外気冷房システムを導入し、熱源設備のエネルギー消費量やCO2排出量の削減を図る。
〔H25 No.04〕伝熱に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.室内において、自然対流熱伝達率は、熱の流れる方向と室温・表面温度の分布によって変化し、室温が表面温度より高い場合、床面より天井面のほうが大きな値となる。
2.壁体内の密閉された中空層の熱抵抗は、その厚さが10〜15mmの範囲では、厚さに比例して大きくなる。
3.窓ガラスの日射熱取得率(日射侵入率)は、「ガラスに入射した日射量」に対する「ガラスを透過した日射量とガラスが吸収した後に室内側に放出された熱量との和」の割合である。
4.床下空間を有する木造住宅の基礎断熱工法の基礎部分においては、外気に直接通じる床下換気口を設けることが望ましい。
解答 4:「基礎断熱工法」は基礎に断熱材を設置し、基礎からの熱の出入りを防ぐ工法である。床下を室内とみなし、それぞれの温度差を小さくすることで室内温度を一定にする。この工法では基礎内部に外部空気が入らないようにするので床下換気口は設けない。
1.熱伝達とは、一般に、壁体表面を出入りする熱の移動をいい、熱伝達率は熱流の大きさを表す指標で、「放射熱伝達率」と「自然対流熱伝達率」に分けられる。暖房時(室温が表面温度より高い場合)の対流による熱伝達は、天井面と床面の放射熱伝達率が等しくても、室内空気から天井に流れる「上向きの熱流」の方が床面に流れる「下向きの熱流」よりも大きくなるため、対流熱伝達率は、床面より天井面のほうが大きな値となる。
2.壁体内の密閉した空気層の熱抵抗は厚さ20㎜~40㎜程度までは増加するが、それ以上厚さを増しても、空気の対流により、伝熱が促進されるので、熱抵抗はほとんど変化せず、むしろ層内に生じる対流により少しずつ減少する。
3.窓ガラスの日射熱取得率(日射侵入率)は、「ガラスに入射した日射量」に対する「ガラスを透過した日射量とガラスが吸収した後に室内側に放出された熱量との和」の割合である。(頻出問題)
〔H25 No.05〕建築物における防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.建築物の用途が異なる部分に設けられる区画については、原則として、発生した火災をその用途部分に留めるために防火区画とする。
2.中央部に光庭となるボイド空間を設けた超高層集合住宅において、ボイド空間を取り囲む開放廊下を避難経路とする場合には、煙の拡散を防ぐために下層部分からボイド空間への給気を抑制する必要がある。
3.等価可燃物量は、可燃物発熱量が等価な木材の重量に換算した量のことである。
4.吹抜けに面する通路において、吹抜けを経由した延焼の拡大や煙汚染を防止するための防火シャッターは、手摺の通路側ではなく吹抜け側に設けることが望ましい。
解答 2:ボイド空間の下層から上層への吸気を抑制してしまうと、上部の煙濃度が高くなってしまい危険である。そのため給気を促進するために上部を十分に開放し、下部に空気の流入口を設ける。

ボイド型を採用したエルザタワー55
1.複数の用途が存する建築物においては、その用途によって空間の形態・利用・管理方法が異なり、また、その用途が持つ可燃物や火気の量、質が異なってくる。そのため火災荷重や拡大の性質、煙の伝播の性状、適切な避難の方法が違うため、多数の人が利用するであろう用途や火災荷重の大きな用途、または就寝の用途に供する特殊建築物は、用途ごとの安全性を保つために相互に防火区画する(「異種用途区画」)。
3.建築物内の可燃物量の大小が、火災の規模を支配する最大の要因となる。室内は燃焼時の発熱時の異なる各種の材料で構成されているため、可燃物量の大小は、実際に存在する可燃物と同じ発熱量の木材の重量に換算した等価可燃物量を火災加重といい、火災継続時間の推定などに用いられる。
4.吹抜けに面する通路において、吹抜けを経由した延焼の拡大や煙汚染を防止するための防火シャッター(たて穴区画に用いる防火設備等)は、閉鎖するに際して、当該防火設備の周囲の人の安全を確保することができるものであることが要求される。このため、当該防火シャッターは、手摺の通路側ではなく吹抜け側に設けることが望ましい。
〔H25 No.06〕北緯35度の地点における日照・日射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、終日快晴とし、日照・日射を妨げる要素はないものとする。
1.夏至の日の可照時間は、北向き鉛直面より南向き鉛直面のほうが短い。
2.冬至の日の終日日射量は、南向き鉛直面より西向き鉛直面のほうが小さい。
3.東西方向に長い同じ高さの集合住宅が南北に二棟並ぶ場合、全住戸で冬至の日の日照時間を4時間確保するには、集合住宅の高さの約2倍の隣棟間隔が必要である。
4.春分・秋分の日において、南中時の直達日射量は、南向き鉛直面より水平面のほうが小さい。
解答 4:下の図より、春分・秋分の日における直達日射量は水平面が最も高く、次に南面、東西面になる。また、夏至の日の可照時間は、北向き鉛直面より南向き鉛直面のほうが短く(設問1)、冬至の日の終日日射量は、南向き鉛直面より西向き鉛直面のほうが小さい(設問2)。
3.東西方向に長い同じ高さの集合住宅が南北に二棟並ぶ場合、冬至の日の日照時間を4時間(影が一番短くなる南中時の前後2時間,10時から14時まで)確保するには、冬至の日の日影曲線で、南北方向の影倍率が約1.75倍程度必要となる。2倍程度とする設問文は許容範囲と判断する。
〔H25 No.07〕昼光・照明に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.均等拡散面上における輝度は、照度と反射率との積に比例する。
2.人の目には明るさの変化に順応する能力があり、明順応より暗順応のほうが時間を要する。
3.昼光率は、天空の輝度分布が一様であれば、全天空照度の影響を受けない。
4.白熱電球のランプ効率は、蛍光ランプに比べて周囲温度の影響を受けやすい。
解答 4:「ランプ効率」は光源の発する全光束を消費電力で除した値である。白熱電球はランプ効率は低いが室内の温度変化において影響は受けにくく変化は小さい。対して蛍光ランプは20℃~25℃以外の温度ではランプ効率は大きく低下する。一般に、ランプ効率はLEDやナトリウムランプが高く、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、水銀ランプと続き、白熱電球やハロゲン電球は低い。
1.輝度は、光源面から特定の方向に出射する単位面積当たり、単位立方角当たりの光束であり、光源面を特定の方向から見たときの明るさを表す。照度と反射率との積に比例する。
2.一般に、明順応は比較的短時間で完了するが、暗順応には比較的長時間を要する。
3.昼光率は、(受照面照度/全天空照度)×100%で定義される。受照面照度は、窓と受照面の位置、ガラス面の状態、室内表面の反射率、窓外の建築物や樹木による遮蔽などの影響を受ける。なお、全天空照度が変化しても、それに比例して受照面照度も変化するため、昼光率は変化しない。
〔H25 No.08〕音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.内装材の吸音率が室内で一様な立方体の室において、その天井の高さのみを1/2に下げても、残響時間は1/2にはならない。
2.屋外において、遠方の音源から伝搬する音の強さは、空気の音響吸収によって低音域ほど減衰する。
3.環境基本法に基づく騒音に係る環境基準において、「道路に面する地域」以外の地域における夜間の基準値は、昼間の基準値に比べて10dB低い値とされている。
4.聴覚のマスキングは、目的音(マスクされる音)の周波数に対して妨害音(マスクする音)の周波数が低い場合に生じやすい。
解答 2:音のエネルギーは、空気の粘性や分子運動等に吸収され、また距離によって減衰していく。このとき周波数が高いほどよく吸収されるため、低い音の方が遠くまで聞こえる。
1.セービンの式は、残響時間の計算式の中でも吸音力の小さい残響時間の長い室の計算に適した式である。
T = 0.161V / αS
(T:残響時間、V:室容積、α:室内平均吸音率、S:室内総表面積)
上式から、室容積が2倍になっても、室内の等価吸音面積も増えるので、単純に残響時間は2倍になる訳ではない。
3.主として居住の用に供される地域では、原則として昼間は55dB(A)以下、夜間は45dB(A)以下とされている。「騒音にかかる環境基準について(平成10年環境庁告示64号)」
4.聴覚のマスキングは、聞こうとしている目的音(マスクされる音)が、妨害音(マスクする音:マスカー)に阻害され、聞き取りにくくなる現象のこと。一般に、周波数が両者とも近いか、目的音の方が高い場合に生じやすい。
〔H25 No.09〕吸音・遮音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.質量則において、単層壁の厚さが2倍になると、透過損失の値は約3dB増加する。
2.多孔質吸音材料では、その表面を通気性の低い材料によって被覆すると、高音域の吸音率が低下する。
3.厚さ6mmの単板ガラスは、厚さ3mmの単板ガラスに比べて全周波数帯域にわたって遮音性能が高いとは限らない。
4.軽量床衝撃源に対する床衝撃音の遮断性能は、カーペット等の柔らかい床仕上げ材を用いることにより向上する。
解答 1:質量則では「面密度(単位面積当たりの質量)」が大きい壁ほど、透過損失が大きくなる。単層壁の厚さが2倍になると、透過損失の値は約6dB増加し、厚さが3倍になれば透過損失の値は約9.5dB増加する。以下に計算式を乗せるが、無視しても構わない。
垂直入射の透過損失(TL)は、以下の式で求められる。
TL(dB)=20・log10(f・m)−43
f:周波数、m:面密度
設問のように壁の厚さ(面密度)が2倍になるので、代入すると、
TL'(dB)=20・log10(f・2m)-43
=20・log10(f・ m)−43+20・log102
=TL + 20・log102
log102=0.3010なので、20×0.3010=6.020
よって、単層壁の厚さが2倍になると、透過損失の値は約6dB増加する。
2.多孔質吸音材料は音が繊維の細い隙間に直接入射することによって空気が振動することによって音エネルギーから熱エネルギーに変わり吸音される。そのため多孔質吸音材料は塗装や被膜を避け、露出して設置する。
3.3mmの単板ガラスと比較したとき、板厚を大きくしても全周波数帯域にわたって遮音性能が高いとは限らない。
4.カーペット等の柔らかい床仕上げ材は、食器の落下などの軽量床衝撃音に対する遮断効果をもち、重量床衝撃音に対してはスラブを厚くする方法がある。
〔H25 No.10〕色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.JISの安全色の一般的事項における「緑」の表示事項は、「指示」及び「用心」でる。
2.マンセル表色系において、マンセルバリューが5の色の視感反射率は、約20%である。
3.物体の表面色の見え方は、見る方向によって異なることがある。
4.視認性は、注視している対象がはっきり見えるか否かに関する属性であり、視対象と背景色との間の明度差の影響を大きく受ける。
解答 1:「安全色」として赤・黄赤・黄・緑・青・赤紫の6色が規定されている。それぞれ、赤は「禁止、危険、防火」、黄赤は「警告、航空、船舶」、黄は「注意」、緑は「安全」、青は「指示」、赤紫は「放射能」を表わす。
2.視感反射率とは、眼の感じる明るさが色 (光の波長) によって変わることを考慮にいれた反射率であり、マンセルバリュー(V)が、2
3.物体の表面色の見え方は、見る方向によって異なることがある。光源から照らされた角度と逆方向に反射した光を「正反射光」といい、様々な方向へ拡散して反射する光を拡散光という。正反射光の方向から見ると光源の色が強く見え、本来の表面色がわかりにくくなる。一般的に、表面色を見るときは、正反射光がない角度から拡散反射光を見てその色を判断する。
4.視認性は,注視している対象がはっきり見えるか否かに関する属性であり、視対象と背景色との間の明度差の影響を大きく受ける。二つの色を同時に見た場合、二つの色が相互に影響しあうことで単独で見た場合と見え方が違って感じる。この現象の種類には、彩度対比、色相対比、明度対比等があり、これらを色対比と呼び、空間的に隣接して並べて置いた2色を同時に見るときに生じる色対比を同時対比と呼ぶ。
〔H25 No.11〕空気調和・換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ディスプレイスメント・ベンチレーション(置換換気)は、汚染物質が周囲空気より高温又は軽量な場合や小空間に大風量の給気をする場合に有効である。
2.核店舗、準核店舗、専門店街からなる大型ショッピングセンターでは、業態による営業時間や負荷特性を考慮して、熱源をそれぞれで独立させることが望ましい。
3.放射床暖房方式は、天井の高い病院の待合室や議会ホール等に有効である。
4.吸収冷凍機は、一般に、同一容量の遠心冷凍機に比べて、振動及び騒音が大きい。
解答 4:「吸収冷凍機」は、吸収力の高い液体に冷媒を吸収させ、発生する低圧によって、別の位置の冷媒を気化させて低温を得る冷凍機のこと。直だき式、蒸気式、廃熱利用式などの種類があり、フロンを使わず臭化リチウムを吸収液に用いる。
騒音・振動が小さいが、冷媒分離のための熱を多く必要とするので、冷却水量が多くなり、遠心冷凍機に比べて冷却塔が大きくなる。
1.冷たい空気ほど重く、床付近に停滞する。この性質を活かしたディスプレイスメント・ベンチレーション(置換換気)は、室内に室温より低温の空気を送り込むことで室内にある空気を押し上げ、汚染空気を排出することにより換気を行う方式である。汚染物質が周囲空気より高温又は軽量な場合に有効である。
2.百貨店や大型ショッピングセンターにおいては、業態による営業時間や負荷特性を考慮して、熱源をそれぞれで独立させることが望ましい。
3.放射床暖房方式は、他の方式に比べ室内において上下温度差が生じにくく、天井の高い室の暖房にも適している。床暖房時の床表面温度が体温より高くなると、低温やけどの原因となるので、一般に、床表面温度の上限は30℃程度が望ましい。
〔H25 No.12〕空気調和・換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.全熱交換器を病院に採用する場合は、外気及び還気に浮遊細菌が含まれている可能性を考慮し、高性能フィルターを全熱交換器の給気側に設ける。
2.最大負荷計算において、照明、人体、機器等による室内発熱負荷については、一般に、冷房時は計算に含めるが、暖房時は安全側になるので計算に含めないことが多い。
3.空気調和機の冷温水コイルまわりの制御については、一般に、二方弁制御より三方弁制御のほうがポンプ動力を減少させることができる。
4.透明フロート板ガラスを使用した窓の室内側にブラインドを設ける場合、一般に、暗色ブラインドより明色ブラインドのほうが日射遮蔽性能は高い。
解答 3:空気調和機の冷温水の流量を調節する方式は2つ、「変流量制御(二方弁制御)」と「定流量制御(三方弁制御)」がある。「定流量制御」は、変流量制御の2方弁に、コイルを通らない1方弁を加えたもので、常に一定の流量を保つ。
「定流量制御」→常に一定の流量を保つことができる。
「変流量制御」→ポンプ動力を削減することができ、省エネが期待される。
1.病院の空調計画において、外気及び還気に浮遊細菌が含まれている可能性を考慮し、通常の外気フィルターに加え、高性能フィルターを全熱交換器の給気側に設ける。
2.冷房時において、照明、人体、器具等による室内発熱負荷は、冷房機器の負荷につながる。逆に、暖房時にはプラスに働くので無視する場合が多い。
4.透明フロート板ガラスを使用した窓の室内側にブラインドを設ける場合、一般に、暗色ブラインドより明色ブラインドのほうが日射遮蔽性能は高い(設問分ママ)。
〔H25 No.13〕空気調和・換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.熱負荷に応じて送風量を調整する変風量(VAV)方式は、部屋ごと又はゾーンごとの温度制御が可能である。
2.空調制御において、PI制御は、比例動作に積分動作を加えたものであり、比例動作のみでは生じやすいオフセットを取り除く複合動作方式である。
3.軸流吹出し口の吹出し気流は、一般に、ふく流吹出し口の吹出し気流に比べて誘引比が小さいため広がり角が小さく到達距離が短い。
4.蓄熱式空調システムでは、建築物の冷房負荷が小さくなる中間期の冷房においても、冷房負荷の大きい夏期と同様に、冷凍機の成績係数を高く維持することが可能である。
解答 3:「誘引比」とは、吹出した風量に対する誘引した風量の比率のこと。一般に誘引比が小さい方が、到達距離は長くなる。
軸流吹出し式は誘引比が小さく、到達距離が長い。対して、ふく流吹出し式は誘引比が大きく、到達距離は短い。
1.「VAV空調方式」とは変風量単一ダクト方式のことをいい、一定に保たれた送風温度を吹出し空気の風量を変えることによって温度調整し、室温を制御する方式である。部屋ごと又はゾーンごとの温度制御も可能である。
2.空調制御は比例動作のみではうまく機能しない。このため、基本となるP(比例動作)に、I(積分動作)、D(微分動作)の2つを組み合わせてオフセットを調整する。組み合わせによってPD動作、PI動作、PID動作などがある。
4.冷房負荷が小さくなると、一般に冷凍機は部分負荷運転となり、高効率での運転が出来ずに成績係数が低下する。蓄熱式空調システムでは、冷水や氷を作る際に全負荷運転を行うことが可能なため、成績係数を高く維持することが可能である。
〔H25 No.14〕給排水衛生設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.排水再利用水の原水として、手洗い・洗面器及び湯沸器の排水は利用できるが、厨房の排水は利用できない。
2.近年、大便器の節水化が進み、1回当たりの洗浄水量を4l以下としたものが市販されている。
3.受水槽の材質については、FRP、鋼板、ステンレス鋼板、木等があり、使用目的や使用方法に応じて選定する。
4.節水こま入り給水栓は、こまの底部を普通こまより大きくした節水こまによって、ハンドルの開度が小さい時の吐水量を少なくして、節水を図る水栓である。
解答 1:「排水再利用システム」とは、生下水を浄化し、トイレ用水、散水、冷却・冷房用水、消火用水、清掃用水などに使用できる排水再利用システムのことである。ここで用いられる原水は、洗面器や手洗器からの排水だけでなく、厨房排水や便器洗浄排水も利用することができる。ただし、厨房排水や便器洗浄排水の場合は、高度な処理が必要になる。
2.1970年代では14Lが主流であったが、技術が進み現在は4.8Lが主流になっている。節水型では3.8Lも登場している。
3.受水槽の材質には木材も使用することができ、他にも鋼板、ステンレス鋼板、強化プラスティックなどがある。木製受水槽は①断熱性が高く、②水密性が高く、③内部の防食処理が不要などの利点がある。樽や桶をイメージすると理解しやすい。
4.節水こま入り給水栓は、こまの底部の大きさを普通こまより大きくした節水こまによって、ハンドルの開度が小さい時の吐水量を少なくするものであり、普通こまと比較すると30〜40%の節水を図ることができる。
〔H25 No.15〕給排水設備の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.厨房の排水において、油脂分により排水管が閉塞することを防止するためにグリース阻集器を設置した。
2.一般的な事務所ビルにおいて、断水等に対処するため、飲料用受水槽の容量を、1日予想給水量の2倍とした。
3.排水管の掃除口は、配管が45度を超える曲り部分等に設けるとともに、管径が100mmを超える配管には30mごとに設けた。
4.公共下水道が合流式であったので、建築物内の雨水排水管と汚水排水管を別系統で配管し、屋外の排水ますで双方を接続した。
解答 2:「飲料用受水槽」の容量は、1日の使用水量の1/2程度を標準とする。水を多く貯めすぎると水質の低下によって不衛生になる恐れがある。(ただし、災害消火用に飲料用受水槽の容量を2倍にすることも可能ではあるが、残留塩素濃度を維持するための塩素注入等を行う必要がある。例外があるため明らかな間違いではないが、その他の選択肢が正しいことから、この肢2が不適当と考える。)
1.グリース阻集器は、主にホテルや飲食店などの業務用厨房などで用いられる排水設備である。油分の多く含む排水では、その油分とゴミなどが下水管内に付着して流れを阻害してしまう場合がある。そのため、下水に排水する前にグリース阻集器で冷却・凝固して油分・ゴミを分ける。
3.排水管の掃除口は、配管の曲がり部分等に設けるとともに、延長が長い横走り配水管に設ける間隔は、管径が100mm以下の場合は15m以内、100mmを超える場合は30m以内とするのが望ましい。
4.「合流式下水道」では、汚水と雨水を一緒に下水処理場へ送るこのため、汚水トラップ・雨水トラップを設ける(一つに併せても良い)。対して「分流式下水道」は汚水用管路のみを埋設し、汚水は下水処理場へ、雨水は川や海に直接放流する。下水道本管からの害虫等の侵入防止を目的として、汚水トラップを設ける必要がある。
〔H25 No.16〕床面積100m2の部屋において、イ~ホの条件により計算した視作業面の平均照度に最も近いものは、次のうちどれか。
条件
イ.照明器具: Hf点灯方式蛍光灯32W2灯用
ロ.照明器具の設置台数:20台
ハ. 32W Hf蛍光ランプ(定格出力)の全光束:3,500lm/灯
ニ.照明率:0.65
ホ.保守率:0.7
1.320 lx
2.640 lx
3.750 lx
4.980 lx
解答 2:平均照度を光束法で求める場合、以下の式で求める。
E = (N・F・U・M) / A
N:照明器具の台数(=20台)
F:全光束(=3,500lm/灯 × 2灯)
U:照明率(=0.65)
M:保守率(=0.7)
A:作業面の面積(=100m2)
この式から、E = 637 lx ≒ 640 lx(選択肢2)
〔H25 No.17〕電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.太陽光発電システムの構成要素の一つであるパワーコンディショナは、インバータ、系統連系保護装置及び蓄電池が組み合わされたものである。
2.自家発電設備であるコージェネレーション設備は、排熱を有効利用することで総合エネルギー効率(低位発熱量基準)を70〜80%に向上させ、省エネルギー効果を図ったものである。
3.鉛蓄電池等の電力貯蔵設備の主な用途・目的は、負荷や受電電力の平準化、自然エネルギー発電の平準化、停電時の非常用電源、瞬時電圧低下や停電の補償等である。
4.BEMSは、室内環境とエネルギー性能の最適化を図るため、設備の省エネルギー制御やLCC削減等の運用支援等を行うビル管理システムである。
解答 1:「パワーコンディショナー」とは、インバータ部と系統連系保護装置を用いて直流の電気を交流に変換し、太陽電池などの家庭用発電システムで発生する直流電力を家庭内での利用、または蓄電池への充電、系統への売電などに適した、安定した出力に整える。
2.コージェネレーションシステムの原動機としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン等が使用される。熱電比(供給可能熱出力を発電出力で除した値)が小さく、最も効率がいい順序として、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンとなる。
3.鉛蓄電池等の電力貯蔵設備の主な用途・目的は、負荷や受電電力の平準化、自然エネルギー発電の平準化、停電時の非常用電源、瞬時電圧低下や停電の補償等である(設問分ママ)。
4.BEMSとは「ビル・エネルギー管理システム(Building Energy Management System)」の略称で、ビル内のエネルギー消費に関するデータの蓄積・分析が可能である。対象はオフィスビルや商業ビルに限られている。データに基づいて効率的なエネルギー利用へと改善を重ねていくことにより、エネルギー効率を高められる。
〔H25 No.18〕防災設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.排煙口は、防煙区画部分の各部分から水平距離で30m以下となるように設けなければならない。
2.廊下や通路部において、避難の方向を明示する誘導灯は、通路誘導灯に区分される。
3.定温式熱感知器は、急激な温度上昇を生じる厨房やボイラー室には設置しない。
4.ドレンチャー設備は、外部等からの延焼を防止するため、ドレンチャーヘッドから放水し、水幕をつくる消火設備であり、重要文化財の神社や仏閣等に使用されている。
解答 3:自動火災報知設備の「差動式熱感知器」は、室内(周囲)の温度が一定の上昇率になると作動する。そのため、火を使用する厨房室、ボイラー室、サウナ室等には使用しない。そのかわり、周囲が一定の温度以上になると火災信号を発する「定温式熱感知器」を使用する。
1.建築基準法において、排煙設備が必要な建築物は、床面積500m2以内ごとの防煙区画が必要となる。防煙区画部分の各部分から水平距離で30m以下となるように設けなければならない。設置高さは、天井面から80cm以内、かつ、防煙垂れ壁の下端よりも上に設け、排煙風道に直結する。
2.誘導灯は、避難口の位置や避難の方向を示すもので、非常時に停電した場合でも安全に避難誘導させるものである。それぞれ目的により避難誘導灯・通路誘導灯・客席誘導灯の3種類に分類される。
・避難誘導灯:避難口に設置し、緑字に白、文字もしくは絵で表示する。
・通路誘導灯:室内や廊下に設置し、避難の方向を、緑字に白、文字もしくは絵で表示する。また避難に必要な明るさ(1lx以上)を与える。
・客席誘導灯:劇場や映画館などの客席通路部分に設置され、床面に避難に必要な明るさ(通路中心で2lx以上)を与える。
4.ドレンチャー設備は、外部等からの延焼を防止するため、ドレンチャーヘッドから放水し、水幕をつくる消火設備であり、重要文化財の神社や仏閣等に使用されている。
〔H25 No.19〕建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.エレベーターの設計用水平標準震度は、建築物の高さ31mを境にして大きく異なる。
2.病院等の災害応急対策活動に必要な施設においては、受水槽や必要な給水管分岐部に地震感知により作動する緊急給水遮断弁を設けることが望ましい。
3.一般的な事務所ビルにおいて、水槽類を除く建築設備機器を同一階に設置する場合、局部震度法による設計用標準震度は、防振装置を付した機器のほうが大きい値となる。
4.エスカレーターの落下防止のため、一般に、エスカレーターの一端を梁等の支持材に堅固に固定し、他端は非固定でかかり代を十分に確保する。
解答 1:エレベーターの設計用水平標準震度は、建築物の高さが60m(超高層ビル)を超える場合、割増をして算定される。(昇降機耐震設計・施工指針)
2.病院等の災害応急対策活動に必要な施設においては、受水槽や必要な給水管分岐部に地震感知により作動する緊急給水遮断弁を設けることが望ましい。
3.局部震度法による設計用標準震度(設計用地震力による方法で建築非構造部材の耐震に関する性能を評価する場合に、建築非構造部材の重量に乗じて設計用地震力を求めるための係数)は、防振装置(防振ゴム,コイルばね等)を付した機器のほうが、応答加速度は小さくなるが、応答変位は大きくなるため地震力の割増が必要となり、その係数は大きい値となる。
4.エスカレーターの落下防止のため、一般に、エスカレーターの一端を梁等の支持材に堅固に固定し、他端は非固定でかかり代を十分に確保する(設問分ママ)。
〔H25 No.20〕環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.CASBEEにおいて、建築物の設備システムの高効率化評価指標として用いられるERRは、「評価建物の省エネルギー量の合計」を「評価建物の基準となる一次エネルギー消費量」で除した値である。
2.35年寿命を想定した一般的な事務所ビルのライフサイクルCO2においては、「運用段階のエネルギー・水消費によるCO2排出量の占める割合」より、「設計・建設段階及び廃棄段階によるCO2排出量の占める割合」のほうが大きい。
3.地域冷暖房システムの活用は、ヒートアイランド現象の緩和に有効である。
4.日本におけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、建築物における一次エネルギー消費量を、建築物・設備の省エネ性能の向上、エネルギーの面的利用、オンサイトでの再生可能エネルギーの活用等により削減し、年間での一次エネルギー消費量が正味(ネット)でゼロ又は概ねゼロとなる建築物である。
解答 2:「ライフサイクルCO2(LCCO2)」は一般に、「建設時(資材生産・輸送・施工)」、「運用時」、「保守(修繕・更新)」及び「廃棄時(解体除却)」の4分類で示される建築物のライフサイクルの各過程におけるCO2排出量を推定する。建替え周期35年とする場合、それぞれ、20%、50%、25%、5%程度である。
1.環境評価ツールとしては、イギリスで1990年に「BREEAM」が、アメリカで1996年に「LEED」が開発され、日本では2002年のCASBEE(建築環境総合性能評価システム)が相当する。CASBEEにおける評価基準のうち、BEE(建築物の環境性能効率)は「建築物の環境品質・性能」÷「建築物の外部環境負荷」で算出され、ERR(Energy Reducation Radio)は「評価建物の省エネルギー量の合計」÷「評価建物の基準となる一次エネルギー消費量」で算出された値である。
3.地域冷暖房システムとは、地域の企業等から製造された熱を集約し、その地域内の建築物へ供給する方式である。地域冷暖房システムは未利用熱の活用による排熱削減が期待でき、ヒートアイランド現象の緩和にも効果が期待できる。
4.ZEBとは「先進的な建築設計によるエネルギー負荷の抑制やパッシブ技術の採用による自然エネルギーの積極的な活用、高効率な設備システムの導入等により、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で、再生可能エネルギーを導入することにより、エネルギー自立度を極力高め、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物」のこと。
1級建築士の学科対策
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