
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔H25 No.01〕建築士が行う建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.建築計画を行うに当たって、建築の目的や意図に応じて、構造、設備、防災等の様々な専門分野の技術を総合的に調整した。
2.集合住宅の計画に当たって、当該地域の生活様式を含めた類似建築物の使われ方等に関する調査を行い、その分析結果を活用した。
3.診療所の規模計画において、コーホート要因法を用いて待合室を利用する単位時間当たりの外来患者数を予測し、待合室の床面積を算定した。
4.コミュニティ施設の計画に先立ち、建築主の要請に応じ、施設が提供するサービス、運営方法等を検討する会議に参加した。
解答 3:「コーホート要因法」とは、将来の人口を推計するものであり、出生・死亡の「自然増減」と、転出入の「純移動」の2要因をもとに算出する。病院や診療所の規模算出にあたっては「待ち行列理論」や「モンテカルロ・シュミレーション」などが用いられる。
1.意匠設計において、専門的な知識や技術、特に構造、設備、防災など多角的な視野で設計・計画を行っていく。
2.集合住宅の設計において、類似の集合住宅の使われ方などを調査・研究し、分析結果を設計背景とすることが有効である。
4.近年では、特に公共施設などの設計において、施設の運用や経営に関しても建築設計段階での関与が求められている。
〔H25 No.02〕近代の建築作品とその特徴との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
1.タッセル邸(V.オルタ)————————–アール・デコ
2.ロビー邸(フランク・ロイド・ライト)—プレーリーハウス
3.シュレーダー邸(G.T.リートフェルト)——デ・ステイル
4.サヴォア邸(ル・コルビュジェ)————近代建築の五原則
解答 1:「タッセル邸」は19世紀にヨーロッパ全土に広がった装飾美術「アール・ヌーボー」の初期の代表例として有名。当時の新しい素材である鉄やガラスなどを用い、曲線的で、花や植物などの有機物をモチーフにしている。

「アール・デコ」で有名なマンハッタンビル街
2.「ロビー邸」は、プレーリーハウス(草原住宅)の代表的建築で、低く長い庇と、水平が強調されたモダン設計だが、レンガタイルを用いた古典的な外観印象を与える。

3.「シュレーダー邸」は、へリット・リートフェルトによって設計された住宅で、新素材であるガラスとコンクリートを使用し、当時のレンガ造りの建物と比べると異質な存在である。また芸術運動「デ・ステイル」の象徴的建築物であり、建築と芸術の融合作品である。(動画音量注意!)
4.ル・コルビュジェは、「近代建築の5原則」として、ピロティ、屋上 庭園、自由な平面、水平連続窓、自由なファサードを提示し、この原則を具現させた作品が「サヴォア邸」である。

〔H25 No.03〕建築物の保存、再生、活用等の事例に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.アートプラザ(大分市)は、図書館をギャラリー等からなる芸術文化の複合施設にしたものである。
2.リンゴット工場再開発(トリノ)は、巨大な自動車工場を、見本市会場、音楽ホール、ホテル、会議場等からなる複合施設にしたものである。
3.倉敷アイビースクエア(倉敷市)は、連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心として、展示施設、ホテル等からなる複合施設にしたものである。
4.旧大社駅舎(出雲市)は、創建時の赤レンガの外観を再現するとともに、地震に対する安全性を高めるために免震工法を採用し、観光施設にしたものである。
解答 4:設問は辰野金吾が設計した「東京駅丸の内駅舎」の記述である。

東京駅丸の内駅舎

旧大社駅舎
1.「アートプラザ」は大分市出身の磯崎新による設計で、建築当初は県立図書館として30年程度運用していたが、大分市に譲渡され、現在は文化情報の交流の場とした芸術文化の複合施設となっている。

2.「リンゴット工場再開発計画」は1982年に閉鎖されたイタリアのフィアットの自動車工場の再開発事業である。再開発計画の設計コンペでレンゾ・ピアノの計画が選ばれ、1989年に複合施設として改修して会議センター、ホテル、事務所、音楽ホールなどに使用している。

3.「倉敷アイビースクエア」は、明治時代に建設された紡績工場を利用した複合施設。連続するのこぎり屋根をもつ平家建ての紡績工場の棟の一部を撤去してできたオープンスペースを中心として、展示施設、ホテル等からなる。

〔H25 No.04〕階段及び傾斜路の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.階段を昇るときの安全性を考慮し、段鼻を出さないように蹴込み板を設け、蹴込みを20mmとした。
2.吹抜け空間において、段板の側面を見せるために、側桁階段とした。
3.車いす使用者が利用する屋外の傾斜路の勾配を1/25とし、手摺は設けなかった。
4.屋内の階段に代わる歩行用の傾斜路の勾配を、1/12とした。
解答 2:段板の側面が見えるのは「ささら桁階段」もしくは「方げた階段」である。「側桁階段」は一般的に側板で段板を挟むので、側面は隠れる。

方げた階段
1.建築基準法上の階段の基準は、①幅は140cm以上、蹴上げ16cm以上、踏面30cm以上、蹴込みは2cm以下としている。
3.建築物移動等円滑化誘導基準のスロープに関する基準は、以下の7つ。
(1)幅は、階段に代わるものは 150cm以上、階段に併設するものは 120cm以上
(2)勾配は、1/12 以下
(3)高さ 75cm以内ごとに踏幅 150cm以上の踊場(勾配 1/20 以下の場合は除く)
(4)高低差が16cmを超え、かつ、勾配が1/20を超える傾斜がある部分には、両側に手すりを設ける
(5)表面は、粗面とし、又は滑りにくい材料で仕上げているか
(6)その前後の廊下等との色の明度、色相又は彩度の差が大きいことによりその存在を容易に識別できるも のとしているか
(7)傾斜がある部分の上端に近接する踊場の部分には、点状ブロック等を敷設しているか
設問文では勾配が1/25と緩い傾斜なので、手すりを設けなくてもよい。
4.階段に代わる歩行用の傾斜路は、建築基準法施行令により、勾配を1/8以下とし、表面は粗面とするか、又は滑りにくい材料で仕上げなければならない。
〔H25 No.05〕周辺環境を考慮した建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.高層建築物を建築する場合、地表付近の風速増加率は、周囲に低層建築物がある場合に比べて、周囲に建築物がない場合のほうが大きくなる。
2.建築物に囲まれた広場や街路等の幅員をD、建築物のファサードの高さをHとした場合、D/Hはその外部空間の開放感や閉塞感を表す指標となる。
3.多雪区域内の市街地の建築物において、落雪の搬出の不便さと落雷による危険とを避けるため、無落雪屋根を採用する場合がある。
4.スポ一ツ施設の配置計画において、屋外サッカー競技場は、競技のフィールドの長軸を南北にとることが望ましい。
解答 1:風速増加率が大きいほど、ビル風の影響を受ける。この値が1.0の場合、建築物の建築前後で風速の変化がないことを示している。
例えば、上空の風速が10s/mとし、周囲に建築物がないときの風速は6s/m、周囲に低層建築物がある場合の風速は4s/mとする。
この後に高層建築物を建てると前者が8s/m、後者が6s/mとなると仮定できる。
すると風速増加率はそれぞれ、
周囲に建築物がない場合: 8/6=1.33
周囲に低層建築物がある場合: 6/4=1.5
となるので、周囲に低層建築物がある場合の方が、風速増加率は大きくなる傾向にある。
2.D/Hが大きいほど開放感が強く、小さいほど囲繞感が強くなる。具体的な数値として、D/Hが4以上で囲繞感がなくなり、1〜1.5程度で均整があるとされ、あるいは1〜3程度であれば心地よい囲繞感があるとされている。D/Hそのものを街路の設計だけで操作することは困難だが、D/Hが大きすぎる場合には街路樹等で街路空間を分節し、茫洋とした印象を軽減するといった工夫が考えられる。また逆にD/Hが小さすぎる場合には、植栽や道路付属物、占用物の設置を極力避け、空間を広く見せるなどの対応が考えられる。
3.降雪量が多い地域では、屋根に積もった雪をそのままにしておくと、許容量を超えたときに雪の重みで屋根や建物が破損する可能性がある。このため、一般的な三角屋根は勾配をつけて雪が滑りやすいようにし、定期的に雪下ろしをする必要がある。ただし、雪下ろし中の事故や、落雪により人や車などに被害を加えてしまうこともあるため、最近では「無落雪屋根」を採用する施工例が多く見られる。
競技に支障がないよう、競技者の目に高度の低い太陽光(東西方向)が入らないように、長軸線を南北方向にとることが望ましい。
〔H25 No.06〕建築物の各部の面積に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.事務所において、300人が執務するオープン型の執務室部分(机は対向配置とする。)の面積の合計を、2,500m2とした。
2.図書館において、書架のない閲覧室(4人掛で100席)の面積を、180m2とした。
3.劇場において、定員600人の固定式の客席部分の面積(通路を含む。)を、400m2とした。
4.総合病院において、ベッドの間隔を1m確保する4床病室の面積を、20m2とした。
解答 4:病院の病室の広さは、一般的に1床あたり内法寸法6.4m2で算出する。ただしこの場合はベッド間隔は60cm~70cmなので、設問の通りベッド間隔を1mとするときは一床あたり8.0m2で算出する。なので8.0m2×4床=32.0m2以上となる。
1.貸事務所における「基準階の貸室面積(=基準階面積-共用面積)」は,一般的に,9m2/人程度として計画する。また「対向配置」は、通路と椅子のスペースが共有されるためスペース効率が高い。よって、300人の執務の面積は2,500m2としても差し支えないと考える。
2.図書館における閲覧室の広さは、一般的に閲覧室1席あたり2-3m2/席 程度を目安とする。ただし、書架のない閲覧室においては1.8m2/席 程度とする。100席×1.8m2/席=180m2、正しい。
3.劇場の固定式の客席部分の床面積は、1席当たり0.5〜0.7m2程度を目安に設計する。
よって、600人x0.5〜0.7m2=300〜420m2
〔H25 No.07〕建築物の各部の寸法に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.排気量50cc-250ccクラスのオートバイの駐車場の計画において、平行駐車の1台当たりの駐車区画の寸法を、幅90cm×長さ230cmとした。
2.公共体育館の計画において、天井の高さを、バレーボールの公式試合が行えるように15mとした。
3.図書館の開架室における書架の間隔について、車いす使用者の利用と通行に配慮して、225cmとした。
4.事務所の階段について、昇降のしやすさに配慮し、踏面寸法をT、蹴上げ寸法をRとした場合、T+2R=45cm程度となるように計画した。
解答 4:昇降のしやすさに配慮した場合、踏面寸法をT、蹴上げ寸法をRとした場合、T+2R=55cm~65cm程度となるように計画する。
1.比較的小型の50cc~250ccのオートバイの駐車場は、一台当たりの駐車スペースを900mm×2,300mm程度とする。ちなみに自転車の駐輪スペースは、700mm×1,900mm程度とする。
2.体育館の計画でその高さは、卓球4m以上、武道場4.5m以上、バスケットボール7m以上、テニスコート12m以上、バレーボール12.5m以上とする。
3.車椅子が歩行者とすれ違う場合は1,200mmとして、車椅子同士だと1,800mm必要となる。今回の設問では書架の幅(450mm)を含めると、書架の間隔は1,650mm程度、もしくは2,250mm程度必要となる。
〔H25 No.08〕高齢者の安全な利用に配慮した一戸建ての住宅の改修に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.電気器具等のコードに足を引っ掛けて転倒することを防ぐために、マグネット式のコンセントを採用した。
2.同一レベルの床面において、床に段差があるように見間違えることを防ぐために、床仕上げの材料及び色彩を同じものとした。
3.浴室の計画において、浴槽の縁の高さについては、浴槽の跨ぎやすさを考慮して、洗い場の床面から5cmとした。
4.浴室と脱衣室の計画において、急激な温度変化によって血圧が大きく変動するヒートショックを防ぐために、浴室と脱衣室に暖房設備を設置した。
解答 3:「浴槽の縁の高さ」を考える場合、使用者が腰かけて跨ぐことが考えられる。そのため、車椅子から移乗したり、高齢者が一度腰かけて跨ぐことを考えると座面の高さ程度(約45cm)が望ましい。
1.マグネット式コンセントはコードを足に引っかけても簡単に外れるため、高齢者の転倒防止に有効である。
2.視覚障害者や視力が低下した高齢者が段差を視認しやすくするため、照度をJIS基準の2倍にし、輝度比を1.5~2.0程度にするのが望ましい。また逆に、同一レベルの床面で異なる色、材質、輝度比の大きい仕上げを行うと、段差があるように誤認し、つまづきやすいので避けた方が良い。
4.「ヒートショック」とは、急激な温度変化により身体が受ける影響のことで、暖かい居間からまだ冷たい浴室、脱衣室、トイレなど、温度差の大きいところへ移動すると、身体が温度変化にさらされて血圧が急変し、脳卒中や心筋梗塞などを引き起こす。ヒートショックを防ぐには 住宅内の温度差を小さくすることが有効であり、特に冷え込みやすいトイレ、脱衣所や浴室は注意が必要である。
〔H25 No.09〕首都の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.フランスの首都であるパリは、城壁を取り除いた跡に環状のプールヴァールを造り、それに放射状の幹線を追加して、交通の利便性の向上と都市景観の形成を図る計画案に基づいている。
2.オーストラリアの首都であるキャンベラは、三つの都市機能(中央官庁街、市政庁、業務商業機能)を三角形の項点に相当する位置に配置して都心部を構成し、その外側を郊外住宅地とする計画案に基づいている。
3.ブラジルの首都であるブラジリアは、ジェット機形の平面形状をもち、機体の胴体に相当する部分を住居地域、翼に相当する部分を政治的中枢地域とする計画案に基づいている。
4.アメリカの首都であるワシントンD.C.は、ポトマック川から国会議事堂に至る軸に象徴的な役割をもたせ、格子状街路に放射状街路を組み合わせた計画案に基づいている。
解答 3:「ブラジリア(ブラジル首都)」は、ジェット機形の平面形状をもち、機体の胴体に相当する部分を「政治的中枢地域」、翼に相当する部分を「住居地域」とする計画案に基づいている。
1.フランスの首都であるパリは古来から王朝の首都として機能するために城壁を環状に建設されてきた。「プールバール」は城壁の上の通路という意味である。ルイ14世が城壁を壊して環状の大通りとし、それに放射状の幹線を配置した。中世以来の複雑な路地を整理することで交通の利便性の向上と都市景観の形成を図った都市計画である。
2.オーストラリアがイギリスから独立する際の首都選定で、当時主要な都市であったシドニーとメルボルンの中間に位置するキャンベラに決定された。1911年国際コンペで建築家W.B.グリフィンの案が選定され、三つの都市機能(中央官庁街、市政庁、業務商業機能)を三角形の項点に相当する位置に配置して都心部を構成し、その外側を郊外住宅地とする計画案となった。また洪水の多い平野を人造湖に変えて治水を解決した。
4.アメリカの首都であるワシントンD.C.は、ポトマック川から国会議事堂に至る軸に象徴的な役割をもたせ、格子状街路に放射状街路を組み合わせた計画案に基づいている。(設問文ママ)
〔H25 No.10〕都市計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.丹下健三研究室による「東京計画1960」は、求心・放射型の都市構造の閉鎖性を否定し、都市軸の概念を導入することによって開放的な線形発展を可能にするという都市構造の提案である。
2.バックミンスター・フラーによる「ジオデシック・ドーム」は、地球上の都市域が連担し、地球全体が都市のネットワークによって覆われるという世界都市を示す概念の提案である。
3.ル・コルビュジェによる「輝く都市」は、地表面を開放し、空中に持ち上げた高層建築と道路の機能区分の明瞭さが特徴的な都市の再開発計画の提案である。
4.T.ガルニエによる「工業都市」は、住居地域を緑地帯によって工業地域から分離させたものであり、生活と労働の両面に対応した近代性を備える都市の提案である。
解答 2:設問の記述はC.A.ドクシアデスの「エキュメノポリス」である。「ジオデシック・ドーム」は正二十面体で球面を近似し、そこに正三角形に組み合わせた構造材を多数並べることによって組上げたドーム状の建築物のこと。バックミンスター・フラー(米)によって考案される。

モントリオール万博アメリカ館
1.「東京計画1960」とは、丹下健三を中心とする東京大学の丹下研究室による計画。東京・晴海と千葉・木更津を道路で結び、その周辺に「海上都市」をつくる。世界の大都市では「放射状」構造が多く見られたが、この計画においては放射状の都市構造を否定し、東京湾上に「線状」に拡張する都市構造を提案するものである。
3.ル・コルビジェは、人口過密で環境の悪化する近代都市を批判し、3つの計画「人口300万人の現代都市」「ヴォアザン計画」「輝ける都市」を発表した。「輝ける都市」高層ビルを建設して公開空地(オープン・スペース)を確保し、街路を整備して歩車分離とする計画案である。
4.T.ガルニエによる「工業都市(1917)」は、人口35,000人の架空の都市を想定し、住居地域を緑地帯によって工業地域から分離させたものであり、生活と労働の両面に対応した近代性を備える架空の都市の提案である。都市間を結ぶ高速道路・幹線道路・鉄道からなる交通インフラのサーキュレーションシステム、沿岸に設けられた港湾施設など、これらが都市構造として分離配置された都市機能を支えるという近代都市を提起している。
〔H25 No.11〕まちづくりに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design)は、心理学的効果を考えた設計によって、犯罪抑止効果を高める計画手法である。
2.TOD (Transit Oriented Development)は、明確な歩車分離に基づき、自動車交通の効率化を最大限に活かす計画手法である。
3.コンパクトシティは、市街地の無秩序な拡大を抑制しながら、都市地域の環境整備に重点を置き、環境的・経済的持続性を高める都市モデルである。
4.ストリートファニチャーは、街路や広場等の屋外空間で使用されるベンチ・柵・水飲み場等の工作物等の総称である。
解答 2:TOD(Transit Oriented Development)は、公共交通機関の利用を前提として、過度に自動車へ依存しない持続可能な都市を実現する方法の一つである。
1.CPTED(Crime Prevention Through Environmental Design:セプテッド)は、防犯環境設計とも訳され、心理学的効果を考えた設計によって、犯罪抑止効果を高める計画手法である。
3.「ニューアーバニズム」はアメリカで発達した都市設計であり、イギリスでは「アバンビレッジ」、ヨーロッパ・日本では「コンパクトシティ」などが同様の概念を持っている。郊外へと無秩序に広がった都市を、伝統的なコミュニティが持つ価値によって再構築することを目指す考えが原点にある。
4.「ストリートファニチャー(street furniture;街路家具)」は、街路や広場等の屋外空間で使用されるベンチ・柵・水飲み場、バス停の屋根等の工作物等の総称である。
〔H25 No.12〕住宅に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.サービス付き高齢者向け住宅は、バリアフリー構造を有し、介護・医療と連携して高齢者を支援するサービスの提供等に関して一定の基準を満たし、単身高齢者世帯、高齢者夫婦世帯等の居住の安定を確保するための賃貸等の住宅である。
2.コレクティブハウスは、各住戸の独立性を保ちながら、子育てや家事等の作業を共同で担い合う相互扶助的なサービスと住宅とを組み合わせた集合住宅である。
3.シルバーハウジング・プロジェクトは、高齢者の生活特性に配慮した住宅及び附帯施設の供給並びにライフサポートアドバイザーにより福祉サービスの提供を行う事業である。
4.コーポラティブハウスは、建築主が入居希望者の意見に従い建築する賃貸集合住宅である。
解答 4:「コーポラティブハウス」は自ら居住する住宅を建設しようとする者が組合を結成し、共同して事業計画を定め、建築物の設計、工事発注等を行って住宅を取得し、管理していく方式である。建築主が入居者の意見に従い建築する方式ではない。
1.「サービス付き高齢者向け住宅」は、民間による高齢者向けのサービス・サポートの付いた賃貸マンションである。サービス・サポートとは、具体的には、安否確認、緊急時の対応、生活相談などが提供される。また公的機関によるものは「シルバーハウジング」と呼ばれる。(例えば「深沢環境共生住宅(東京都)」など)
2.「コレクティブハウス(Collective House)」とは、共同住宅の形式の一つで、それぞれの住居スペースでプライベートを確保しつつ、厨房や食堂などの共有スペースにおいて住居人同士が日常的に交流を図り、生活の一部を共有するものである。
3.シルバーハウジング・プロジェクトとは、住宅施策と福祉施策の連携により、高齢者等の生活特性に配慮したバリアフリー化された「公営住宅」等と「ライフサポートアドバイザー」による日常生活支援サービスの提供を併せて行う、高齢者世帯向けの公的賃貸住宅の供給事業のこと。
〔H25 No.13〕商業建築等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.プロセニアム形式の劇場の計画において、1階の各座席から舞台を見下ろしたときのふ角を5〜15度までの範囲に保ちつつ、すべての座席から舞台の先端が見えるようにした。
2.事務所ビルの便所の計画において、衛生器具の個数を、男女別の想定利用人数と待ち時間に対する利用者の評価であるサービスレベルにより定めた。
3.20階建ての事務所ビルの計画において、概算で乗用エレベーターの台数を設定する際に、エレベーター利用対象人員250人当たり1台とした。
4.シティホテルの計画において、各階単位での改修を考慮するとともに、階高を低く抑えるために、客室ごとに分離したPS(設備縦シャフト)とはせずに、集中PS(設備縦シャフト)を採用した。
解答 4:集中PSは各階それぞれにまとめて設けるので各室の計画・変更が容易になる。ただし、集中PSから各室への横引き配管が増えるため、一般的に、階高は高くなってしまう。
1.プロセニアム形式の劇場の計画において、1階の各座席から舞台を見下ろしたときの「ふ角」は15度以下(最大30度以下)が望ましい。2階席がある場合は1階客席最高列の観客の目とプロセニアム頂部を結ぶ線に2階席がかからないようにし、すべての座席から舞台の先端が見えるようにすることが望ましい。
2.事業所に設ける便器の数は労働安全衛生規則628条によって規定されている。
・男性用と女性用に区別する
・男性用大便器:60人に1個以上
・男性用小便器:30人に1個以上
・女性用大便器:20人に1個以上
3.事務所ビルの計画における乗用エレベーターの設置台数は、一般に、ピーク時の値として出勤時の交通量をもとにシミュレーションを行い、5分間集中率を貸ビルでは在籍人数の10〜15%、自社ビルでは20〜25%として交通計算を行い、平均運転間隔を40秒以下とするのが望ましいとされている。ただし、交通計算を行わない場合は200〜300人に1台とする。
〔H25 No.14〕公共建築物とその特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.水戸芸術館(茨城県水戸市)は、公園内に立地するため、周辺環境との調和を重視し、高さは2階と低く抑え、建築群を回廊でつないだ施設である。
2.丸亀市猪熊弦一郎現代美術館(香川県丸亀市)は、建築と美術と都市空間が一体となった景観に寄与しており、駅前の広場に面した壁画部分に入口をもつ施設である。
3.八代市立博物館「未来の森ミュージアム」(熊本県八代市)は、公園の一角に築かれた丘に埋まるように1階の展示室があり、2階にエントランス、最上階に収蔵庫が設置されている。
4.新潟市民芸術文化会館「りゅーとぴあ」(新潟県新潟市)は、本体施設の屋上庭園と複数の浮島状の空中庭園が回遊性をもつペデストリアンデッキで結ばれ、公園と一体化したパブリックスペースを形成している。
解答 1:設問は内井昭蔵が設計した「世田谷美術館」の記述である。

水戸芸術館
2.「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」は、建築と美術と都市空間が一体となった景観に寄与しており、駅前の広場に面した壁画部分に入口をもつ施設である(設問文ママ)。館内は地上3階建てで、トップライトやスリッドからうまく光を取り込んだ開放的な空間構成をしている。

3.「未来の森ミュージアム」は、旧八代城主である松井家が所蔵する様々な美術品を中心に、過去から現在に至るまでの八代の文化と歴史を紹介する博物館である。公園の一角に築かれた丘に埋まるように1階の展示室があり、2階にエントランス、最上階に収蔵庫が設置されている(設問文ママ)。

4.「りゅーとぴあ」は、建物屋上のレンズ状にふくらむ庭園の他に6つの空中庭園と水路や池、滝などがあり、潤いの空間を形成している。回遊する遊歩道と庭園は、街の生活の中に溶け込む憩いのスペースとなっている。

〔H25 No.15〕一般的な総合病院の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.病棟の計画において、電子カルテを導入し、看護作業拠点を各病室から近いところに分散配置した。
2.診療部門の計画において、放射線治療室を地階に配置した。
3.緩和ケア病棟の計画において、病室を全て4床とし、衛生上の観点から便所は病室の外にまとめた。
4.病院内で使用する物品の管理を一元化するために、SPD部門を設けた。
解答 3:緩和ケア病棟において、患者のプライバシー保護のため、原則として個室とし、水回りなども個室内に設置する。
1.病棟の計画において、電子カルテを導入し、看護作業拠点を各病室から近いところに分散配置するのは適切である。電子カルテを導入すると「情報の共有や一元管理」が可能となり、「看護作業拠点を分散配置」することが可能となる。なお、看護作業拠点とは、ナースステーションやナースコーナーのことをいい、看護作業の準備や物品の管理、訪問者への対応、情報の記録や管理などの作業スペースである。

2.放射線の防護の観点から「地階」や「別棟」に配置されることが多い。また放射線治療室を利用するのは、主に入院患者であるため、「利便性」は重要視されない。

4.病院内で使用する物品の管理を一元化するために、SPD(Supply Processing Distribution;物品管理センター)部門を設けるのは適切である。病院内で使用する物品の全てをSPD部門によって一元管理し供給できる。物品や情報の管理が効率化し、供給部門の「面積効率を高める効果」も期待できる。
〔H25 No.16〕建築計画で考慮すべき人間の行動等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.アフォーダンスは、人間同士の距離のとり方自体がコミュニケーションとしての機能をもち、文化によって異なるとする考え方である。
2.パーソナルスペースは、人間が身体のまわりにもっている、他の人間に侵入されたくない心理的な領域のことである。
3.プレグナンツの法則は、視界に複数の対象があるときに、これらをまとまりとして知覚したものを簡潔でよい形として捉える傾向のことをいう。
4.ソシオフーガルは、複数の人間が集まったときに、知らない人間同士が異なる方向に顔を向けているような状態をいう。
解答 1:「アフォーダンス」は、モノに備わった、ヒトが知覚できる「行為の可能性」である。例えば50cm×50cmの箱があると、ヒトは、物を入れる・腰掛ける・高いところに手を伸ばすために上に乗る」など、人の行動が予測される。
2.ロバート・ソマーは個人の縄張り(パーソナルスペース)は持ち運び可能であり、男女で異なるとした。男性のパーソナルスペースは、前方を集中して見る特性があることから前方に長い楕円形で、後ろや横の半径が短い形をしている。女性は視野が広く全体を見渡す特性があることから、前後左右が均等な円形をしている。
3.プレグナンツの法則(M. ウェルトハイマー)は、視界に複数の対象があるときに、全体として、単純で規則的で安定した秩序ある形にまとまろうとする傾向のことをいう。例えば、ある箇所が隠された図形を見ると、都合の良い形状に補正して視えてしまう現象等が該当する。簡素化の法則とも呼ばれる。
4.「ソシオペタル」とは、人が集まって交流を活発にすることが想定される状態をいう。反対に不活性な状態を「ソシオフーガル」といい、駅や空港、待ち合わせ場所などで採用される。
〔H25 No.17〕建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.直前の隣接する2項の和が次の項となるような数列(フィボナッチ数列)を順次作成していくと、その連続する2項の比率は黄金比に近づく 。
2.木割りは、我が国の伝統的な建築において、各部構成材の比例と大きさを決定するシステムである。
3.木造軸組構法の住宅において、真壁式は、一般に、大壁式に比べて、防寒・防音性に優れている。
4.和室において、床の間に向かって、左側に書院、右側に床脇を設けたものを、本勝手という。
解答 3:「真壁式」は壁面を柱面よりも内側に納め、柱が外に現れる。「大壁式」は壁面を柱の外側に設けるので、柱は見えない。一般的に、大壁式の方が「防寒・防音性」に優れている。
1.直前の隣接する2項の和が次の項となるような数列(フィボナッチ数列)を順次作成していくと、その連続する2項の比率は黄金比(約1:1.618)に近づく。
2.「木割り」とは、柱の太さや柱間の距離を基準として,建築の部材寸法を実寸法でなく、比例関係によって寸法を割り出す方法を言う。日本建築における「木割り」は工匠の経験的手法から発達し、法隆寺の構造材に一定の規格が見られるほど古くから存在する。江戸時代には優れた大工家系が技術を結集した一家の秘伝書として「木割書」がまとめられ、平内家の「匠明(しょうめい)」が有名である。
4.本勝手とは、書院造りの座敷において、床の間に向かって左側に付書院、床の間、右側に床脇棚があるものをいう。
〔H25 No.18〕建築の資格者等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る技術的事項を総括する者である。
2.施工管理技士は、施工技術の向上を図るため、建設業者の施工する建設工事に従事し又はしようとする者を対象として行う技術検定に合格した者である。
3.工事監理者は、建築士の設計によらなければならない建築物の工事を行う場合に、建築主が選定しなければならない建築士である。
4.監理技術者は、主任技術者を補佐するために、工事請負者が工事現場に置かなければならない専任の技術者である。
解答 4:建設業者は工事を施工するためには「主任技術者」を置かなければならない。また建設業法第26条に定められる所定の金額以上になる場合は「監理技術者」を置かなければならない。なので設問のように主任技術者と監理技術者は補佐関係にはない。
1.管理建築士は、その建築士事務所の業務に係る次に掲げる技術的事項を総括するものとする(士法24条)。
一 受託可能な業務の量及び難易並びに業務の内容に応じて必要となる期間の設定
二 受託しようとする業務を担当させる建築士その他の技術者の選定及び配置
三 他の建築士事務所との提携及び提携先に行わせる業務の範囲の案の作成
四 建築士事務所に属する建築士その他の技術者の監督及びその業務遂行の適正の確保
2.施工管理技士は、施工技術の向上を図るため、建設業者の施工する建設工事に従事し又はしようとする者を対象として行う技術検定に合格した者である(設問文ママ、建設業法第27条)。
3.建築主は、建築士の設計によらなければならない建築物の工事を行う場合は、建築物に規模に応じた建築士資格をもつ工事監理者を定めなければならない(建築基準法5条の6第4項)。
〔H25 No.19〕建築積算に関する次の記述のうち、建築工事建築数量積算研究会「建築数量積算基準」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.土砂量は、地山数量とし、掘削による増加、締固めによる減少は考慮しない。
2.山留めを設ける場合、山留め壁と躯体の根切りにおける余幅は、1.0mを標準とする。
3.連続する梁の全長にわたる主筋の継手については、梁の長さにかかわらず、梁ごとに0.5か所あるものとみなす。
4.シート防水におけるシートの重ね代は、計測の対象としない。
解答 3:連続する梁の全長にわたる主筋の継手は、梁の長さに応じて箇所数は決定し、原則として、梁の長さが5.0m未満は0.5ヶ所、5.0m以上10.0m未満は1ヶ所、10.0m以上は2ヶ所あるものとみなす。
1.「地山」とは、人為的な盛土などが行われていない、自然のままの地盤のことである。盛土は空気を含むので体積は増加し、締固めは体積が減少する。このため土砂量は地山数量と定めている。
2.根切りにおいて、山留め工法を選択する場合、山留め壁と躯体との間の余幅は、根切り深さにかかわらず1.0mを標準とする。
4.シート防水におけるシートの重ね代は、計測の対象としない(設問文ママ)。重ね代は、原則として、躯体及び準躯体の設計寸法による面積(実面積)とし、立ち上がり部分も設計寸法に基づく面積とする。
〔H25 No.20〕建築の企画やマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.BIMは、設計、施工、維持管理までのコストや工期、品質情報等すべてを統合したデータを活用して業務を進める手法であり、一般に、三次元モデルを使って表現される。
2.CSRは、企業等が所有する不動産について、「企業価値向上」の観点から、経営戦略的な視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方である。
3.BCPは、企業が災害や事故で被害を受けても、重要な業務が中断しないこと、中断しても可能な限り短い期間で再開すること等、事業の継続を追求する計画である。
4.VE提案は、基本性能の維持を前提とした工事費低減の提案、工事施工者独自の施工技術の導入の提案等である。
解答 2:設問の記述は「CRE(企業不動産)戦略:Corporate Real Estate」である。「CSR(企業の社会的責任):Corporate Social Responsibility」は、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、自主的に社会に貢献する責任のことである。
1.BIM(Building Information Modeling)とは、建築物に関する情報のモデリング手法。建築物の企画から、設計、施工、維持管理までの業務について、コストや工期、品質情報等の全てのデータを統合した三次元モデルを活用して行う手法である。
3.事業継続計画(BCP)は、企業が災害や事故で被害を受けても、重要な業務を優先的になるべく中断させず、中断しても可能な限り短い期間で復旧し再開すること等、事業の継続を追求するための事前計画である。具体的な内容は以下のとおり。
①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
②緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
⑤全ての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図る。
4.「VE(バリューエンジニアリング)」は、生産性・経済性を検討する具体的な手法として行われるもの。工事費の低減提案や施工技術の研究を行い、導入提案(VE提案)等であるが、企画・設計段階から施工段階まで幅広く用いられている。プロジェクトのなるべく早い段階での導入が望ましく、効果も高くなる。
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