
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔H24 No.01〕環境工学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.騒音レベルは、A特性で感覚補正された量であり、低音域が優勢な騒音に対して、その値は、音圧レベルの値よりも低い値を示す。
2.振動レベルは、振動感覚補正を行って評価した振動加速度レベルである。
3.照度は、比視感度を反映していないので、輝度に比べて、見た目の明るさ感とよい対応を示さない。
4.マンセル表色系は、物体の表面色を表記するのに用いられ、「7.5YR8/5と表される色」より「7.5YR9/5と表される色」のほうが明るい。
解答 3:「比視感度(Luminosity function)」とは、人間の目が光の波長ごとの明るさを感じる強さを数値で表したもの。明るい場所での波長555nmで最大感度を1とし、その他の波長の強さを比で表している(暗い場所では507nm付近)。照度を表す「光束」は波長に関連して影響を受けるため、照度も比視感度を反映する。
1.A特性とは、最も聴感に近いとされる40phonの等ラウドネス曲線にほぼ相当する特性であり、人間の聴覚に合わせて低周波の音を小さく感じるように補正するものである。なお、C特性は可聴範囲についてフラットで、ほぼ音圧レベルに等しい。1kHz以下ではC特性のほうが音圧レベルは高い。
2.「振動レベル」とは、振動加速度レベルに人間の鉛直方向における振動感覚補正を加えたもの。
4.マンセル表色系は、色相、明度/彩度と表現する。よって、「7.5YR8/5」と「7.5YR9/5」とでは、明度は後者の「7.5YR9/5」が高い。
〔H24 No.02〕室内の温熱・空気環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.窓ガラスの室内側にカーテンを設けることは、冬期におけるガラス面の結露の防止対策として期待できない。
2.冷暖房機器は、一般に、外部負荷の少ない場所に設置するより、外部負荷の多い窓付近に設置するほうが、良好な室内の温熱環境が得られる。
3.室内の二酸化炭素濃度は、5%程度であれば人体への影響はない。
4.作用温度は、主に発汗の影響が小さい環境下における熱環境に関する指標として用いられ、空気温度と平均放射温度の重み付け平均で表される。
解答 3:建築基準法において二酸化炭素の濃度は0.1%(1,000ppm)としている。また標準大気においては0.03%程度、換気計算に用いられる許容量では0.15%としており、8%になれば10分間で生理的障害を起こす。設問の「5%」では人体の影響が考えられる。
1.冬期において、窓ガラス面付近にカーテンを設けることで、室内の多湿の状態を維持したまま温度が下がってしまうため、結露を起こしやすい状況となる。
2.冷暖房機器を外部負荷の大きい部分に設置した場合、負荷が室内全体に侵入する前に解消することができるため、室内温熱環境への影響を小さくできる。ゆえに、外部負荷の大きい窓面に冷暖房機を設置することは効果的である。
4.気温が同じ室内であっても、壁面温度と周囲気流の状態により体感温度は違う。作用温度(Operative Temperature)とは、周囲壁面の放射熱伝達と周囲気流の対流熱伝達と同じ量の熱交換を行なう均一温度の仮想閉鎖空間で表わされた温度である。放射暖房を行う際の熱環境に関する指標として用いられ、空気温度、平均放射温度、気流から求められる。発汗の影響が小さい環境の場合は、空気温度と平均放射温度の重み付き平均で表される。
〔H24 No.03〕図は、冬期において、定常状態にある外壁A、Bの内部における温度分布を示したものである。次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、図中のA、Bを構成する部材ア~エの各材料とその厚さ、室内外の温度、対流、熱放射等の条件は、それぞれ同じものとする。
1.イは、ウに比べて、熱伝導率が小さい。
2.ウの熱容量が大きい場合、Bは、Aに比べて、冷暖房を開始してから設定温度に達するまでに時間を要する。
3.AとBの熱貫流率は、等しい。
4.冬期における内部結露を防ぐための防湿層を設ける場合、A、Bともに、イより室内側に設ける必要がある。
解答 2:熱容量が大きい場合、その部材は暖まりにくく、冷めにくい。この場合、温度の変化が小さいので、空調設備の設定温度に達するまで時間がかかる。AとBを比べると、熱容量の大きいウは、Aが室内側にあるので、Aは、Bに比べて、冷暖房を開始してから設定温度に達するまでに時間を要する。
1.材料内の温度分布の角度が大きいほど、屋外と室内の温度差が大きいことを表わし、断熱性が大きく、熱伝導率は小さい。これにより、材料ウは材料イよりも断熱性が低く、熱伝導率は大きい。
3.熱貫流量は、室内側及び屋外側の表面での熱伝達と、壁面を構成している各部材の熱伝導を含む、壁体全体の単位面積あたりの伝熱の割合なので、構成部材が同じであれば並び替えても熱貫流量は同じである。
4.一般的に、暖房時の室内側の湿度は高い。この湿気を含む空気が、壁内に入ると、内部結露が生じやすい。従って、断熱材(イ)に室内の高湿空気が入り込まないように、室内側に防湿層を設ける。
〔H24 No.04〕換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.住宅の常時機械換気設備として、浴室等の水まわりの排気ファンを用いる場合、給気口が設けられた各居室の必要換気量を安定的に確保するためには、住宅全体の気密性を高くするほうが効果がある。
2.外気に面して上下に大きさの同じ二つの開口部がある室において、無風の条件で温度差換気を行う場合、換気量は内外温度差の二乗に比例する。
3.空気齢は、室内のある地点における空気の新鮮度を示すものであり、その値が小さいほど、その地点の空気の新鮮度は高い。
4.喫煙によって発生する浮遊粉じんに基づく必要換気量は、一般に、喫煙によって発生する一酸化炭素に基づく必要換気量に比べて大きい。
解答 2:自然換気量は、
・流量係数、開口部面積、風速に比例し、
・内外部圧力の差、風圧係数の差、開口部の高さの差、内外部の温度の差の平方根に比例する。
1.住宅の常時機械換気設備の計画において、必要な場所に必要な新鮮空気を供給し、また計画的に換気を行う空気の流れを把握する必要がある。その換気計画が有効に機能するには住宅の気密性を高め、隙間からの流入・流出を防ぐ必要がある。
3.空気齢は室内の換気の程度を示す指標であり、流入口から室内に入った所定量の空気が、室内のある地点に到達するまでに経過する平均時間である。空気齢が小さいほどその部分の空気の新鮮度は高くなり、換気効率が高いとされる。
4.浮遊粉じんに対する換気量が最大となり、基本必要換気量は浮遊粉じんによって決まる。(以下、理由であるが、理解しなくてもいい。)
・二酸化炭素に対する必要換気量QCO2は、外気の二酸化炭素濃度を350ppmとし、また総合的指標としての設計基準濃度1,000ppmを用いて、
QCO2=0.0022[m3/本] / ((1,000-350)×10-6)=3.4[m3/本]
・浮遊粉じんに対する必要換気量Qduは、外気の浮遊粉じん濃度が0mg/m3の場合、設計基準濃度が0.15mg/m3であるから、
Qdu=19.5[mg/本] / (0.15[mg/m3]-0[mg/m3])=130[m3/本]
・一酸化炭素に対する必要換気量QCOは、外気の一酸化炭素濃度が0ppmの場合、設計基準濃度が10ppmであるから、
QCO=0.00006[m3/本] / ((10-0)×10-6)=6.0[m3/本]
となり、浮遊粉じんに対する必要換気量が最大となる。
〔H24 No.05〕建築物の防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.高層建築物の上階への延焼防止のためには、スパンドレルを十分に確保する必要があり、ファサードデザインに応じてバルコニーや庇等により対応する方法がある。
2.水平避難方式は、一つの階を複数のゾーン(防火区画や防煙区画)に区画し、火災の発生していないゾーンに水平に移動することによって安全を確保する方法であり、高齢者や幼児が利用する施設において有効である。
3.耐火建築物において、火災の初期段階における煙層の降下の速さは、火源の発熱量よりも火源の広がり面積に大きく支配される。
4.室内の可燃物量が同じ場合、一般に、外気が流入する開口面積が大きいほど火盛り期の火災継続時間が長くなる。
解答 4:一般に、外気量が多いほど燃焼速度が大きくなる。そのため火盛り期の火災継続時間は短くなる。
1.「層間区画」は、上下階の延焼拡大を防止する目的で計画される。床、庇、バルコニー、スラブなどの水平部材での区画のほか、スパンドレル、袖壁等の垂直部材での区画の方法がある。
2.病院等で採用される水平避難方式は、階段での自力避難が困難な者などを出火したエリアから隣接する防火区画されたエリアへ移動させ、避難時間の余裕を生み出したうえで、介助避難させる方法である。
3.煙層の厚さや降下する速度は、火源の面積に支配される。これを「燃料支配の火災」という。また、燃焼の継続は開口部から流入する空気量に支配される。これを「換気支配の火災」という。
〔H24 No.06〕日照・日射・採光に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ライトシェルフは、室内照度の均斉度を高めるとともに、直射日光を遮蔽しながら眺望を妨げない窓システムである。
2.春分の日と秋分の日において、水平面上に立てた鉛直棒の直射日光による影の先端の軌跡は、ほぼ直線となる。
3.窓面における日照・日射の調整について、一般に、水平ルーバーは西向き窓面に、垂直ルーバーは南向き窓面に、設置すると効果的である。
4.高所において、鉛直や鉛直に近い向きで設置される窓を項側窓といい、特に北側採光にすると安定した光環境が得られる。
解答 3:南面には太陽高度の高い日射が差し込むため、水平ルーバーが有効である。しかし東西面には太陽高度が低い日射が差し込む。そのため水平ルーバーでは日射を遮るには効果が低いため、西面の窓には垂直ルーバーを計画する。

屋根屋の提案.comより
1.ライトシェルフは、窓中段部に設置した庇により、庇下部の窓面からの日射を遮しつつ、庇上部の拡散ガラス等を用いた窓面から室内に自然光を導く手法である。室内照度の均斉度を高めるとともに、直射日光を遮蔽しながら眺望を妨げない窓システムである。

2.春分の日と秋分の日において、水平面上に立てた鉛直棒の直射日光による影の先端の軌跡は、ほぼ直線となり、影の南北方向の長さは一定となる。

4.北側に設けられたの高窓(ハイサイドライト)は、直射日光を受けにくく、1年を通し、安定した天空光を室内に導くことができる。
〔H24 No.07〕吸音・遮音に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.施工性に優れるボード直張り工法(コンクリートにせっこうボードを接着剤で点付けする方法)は、せっこうボードを張り付けることによって壁体全体の面密度が高くなるにもかかわらず、一般に、遮音等級Dによる評価は低下する。
2.複層ガラス(厚さ3mmのガラス2枚と乾燥空気を封入した6mmの中空層とからなる)は、その面密度の合計と同じ面密度をもつ単板ガラス(厚さ6mm)に比べて、断熱性能に優れるだけでなく、500Hz付近の中音域の遮音性能においても優れる。
3.孔あき板は、共鳴器型のメカニズムで吸音するので、音楽室等において吸音面として使用する場合、特定の周波数の吸音過多に注意する必要がある。
4.多孔質吸音材料を、より広帯域にわたる吸音を目的として使用する場合、吸音材の背後に空気層を設けることが効果的である。
解答 2:複層ガラスでは、その中空層において中音域で共鳴透過現象が生じてしまい、合わせガラスや単板ガラスよりも透過損失は低くなる。
1.単層壁と中空二重壁とでは遮音性能が異なるが、必ずしも中空二重壁が有利とは限らない。中空二重壁では低音域において遮音性が低下する現象(低温域共鳴透過)が起こる。ボード直貼り工法(いわゆるGL工法)も中空二重壁であるので、壁体全体の面密度が高くなるにもかかわらず、一般に、遮音等級Dによる評価は低下する。
3.孔あき吸音材料はせっこうボードなどの板に直径5~15mm程度の孔を多数あけたもの。音がこの孔を通るときに、孔の周りで摩擦が発生して音が熱エネルギーにかわり吸音される。主に低音域や中音域の音が吸収される。多孔質や板状材料と同じく背後の空気層の厚みがあるほど、低音域を吸音する。
4.グラスウール、ロックウール、木毛セメント板、ウレタンフォームなどの「多孔質材料」は、材料中に多数の空隙や連続した気泡をもつ。材料中の空気が振動する際に抵抗が働き、音のエネルギーが繊維間の摩擦によって熱エネルギーに変換され、吸音効果を生じる。とくにグラスウールは、ガラス繊維を綿状に加工したもので、吸音材の他に断熱材、防火性を高める不燃材料としても使用される。多孔質材料の吸音周波数特性は、中・高音域の音に対して吸音性能が高く、低音域側の吸音率を高めるには、材料を厚くする、もしくは密度を高めるか、背後に空気層を設ける。
〔H24 No.08〕音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.同種で同じ音圧レベルの音源の数が、ほぼ同じ位置において四つになると、音源が一つの場合に比べて、音圧レベルの値は約6dB増加する。
2.拡散性が高い室において、室の平均吸音率が2倍になると、室内平均音圧レベルの値は約3dB減少する。
3.様々な無数の音源が広範囲に点在する都市を面音源として捉えると、都市に建つ高層マンションの上階において、音の距離減衰による騒音レベルの低下は、あまり期待できない。
4.自由音場において、無指向性点音源とみなせる騒音源から50m離れた位置における騒音レベルの値が73dBの場合、100m離れた位置における騒音レベルの値は約70dBになる。
解答 4:点音源の場合、50mと100mの距離は、2倍になり、音の強さが1/4となる。これより、音のレベルは6dB小さくなるので、73−6=67dBとなる。
1.同種で同じ音圧レベルの音源の数が、ほぼ同じ位置において4つになると、音の強さは4倍になる。これより、音の強さ(I)と音の強さのレベル(IL;音圧レベル)の関係は、IL=10logI/Ioであることから、
IL’=10log 4I/Io
=10logI/Io + 10log22
log102≒0.301であるから、
=10logI/Io + 10×2×0.301
=10logI/Io + 6.02
よって、IL’≒IL+6
→6dbの増加となる。
2.室内平均音圧(Lp)=Lw-10・log10A+6
Lw:音源の音響パワーレベル、A:室内の吸音力(室内表面積×室内平均吸音率)
室内の吸音率が2倍になると、2Aとなり、
Lp’=Lw-10log102A+6
=Lw-(10log102+10log10A)+6
log102≒0.301であるから、
Lp’=Lw-10×0.301-10log10A+6
=Lw-10・log10A+3
よって、Lp’=Lp-3
→3dbの減少となる。
3.極めて小さい点から音が放射される点音源に対して、面から音を放射する音源を面音源という。無限大の面音源の場合、音圧レベルは、距離によって減衰しない。このため、様々な無数の音源が広範囲に点在する都市を面音源として捉えると、都市に建つ高層マンションの上階において、音の距離減衰による騒音レベルの低下は、あまり期待できない。
〔H24 No.09〕昼光・照明・色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.昼光率は、室内表面による反射の影響を受けない。
2.建築物の外壁や屋根の色は、「冬期の日射吸収」又は「夏期の日射反射」のいずれを優先させるべきかについて検討する際に重要である。
3.白熱電球は、色温度が約2,800Kの赤みがかった光色であり、ランプ効率は低いが、演色性は高い。
4.全般照明方式は、一般に、タスク・アンビエント照明方式に比べて、電力消費量が多くなる。
解答 1:昼光率は、直接入射する昼光と、室内反射して入射する光の合計で評価する。そのため、開口部の大きさ、形、位置だけでなく、ガラス面の状態や室の内装によっても影響を受ける。
2.例えば、比較的日差しの強く、気温が高い沖縄においては「夏期の日射反射」を優先し、空調負荷を低減させる。逆に北海道においては「冬期の日射吸収」を優先して暖房負荷を優先して屋根や外壁の色を検討する。
3.白熱電球は、色温度が低く、赤みがかかった光色を放つ。ランプ効率は低いが、演色性は高い。「ランプ効率」は光源の発する全光束を消費電力で除した値である。白熱電球はランプ効率は低いが室内の温度変化において影響は受けにくく変化は小さい。対して蛍光ランプは20℃~25℃以外の温度ではランプ効率は大きく低下する。一般に、ランプ効率はLEDやナトリウムランプが高く、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、水銀ランプと続き、白熱電球やハロゲン電球は低い。
4.タスク・アンビエント照明方式は、全般(アンビエント)照明と、局部(タスク)照明を併用する照明法である。部屋全体の照度を低く抑え、作業面や商品などを局部器具で明るくする。全般照明方式と比べて照明効率が良く、省エネが期待できる。
〔H24 No.10〕空気調和・換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.風量14,400m3/h、有効開口率0.33の排気ガラリの面積は、1.5m2程度が望ましい。
2.空調エネルギー消費係数 (CEC/AC) は、その値が小さいほど空気調和設備に係るエネルギーが効率的に利用されていることを示す。
3.空気調和機の冷温水コイルの通過風速は、凝縮した水の飛散抑制と搬送動力の低減を考慮し、2〜3m/s程度が望ましい。
4.データセンターのエネルギー効率を定量的に評価する指標PUE(Power Usage Effectiveness)は、「データセンター全体のエネルギー消費量」を「IT機器のエネルギー消費量」で除した値であり、その値が小さいほど省エネルギー性が高い。
解答 1:排気ガラリの風速は約2~3m/s 程度と定められており、その風速は風量を有効開口面積で除して求める。
風速 = 風量/有効開口面積 = 風量/(有効開口率×ガラリ面積)
このとき風量の単位をm3/hからm3/sに換算すると、14,400 m3/h = 14,400/3,600 = 4 m3/s
風速を求める式に設問で与えられた値を入れると、
2 ~ 3 = 4 / (0.33×ガラリ面積)
これを解くと、
ガラリ面積 = 4 / (0.33 × 2~3) ≒ 4 ~ 6 m2
2.設備システムエネルギー消費係数(Coefficient of Energy Consumption:CEC)とは建物内設備のエネルギー効率を表す指標である。空調設備はCEC/AC、換気はCEC/V、照明はCEC/L、給湯はCEC/HW、エレベーターはCEC/EVなどの種類がある。数値が小さいほど、設備に係るエネルギーが効率的に利用されていることを示す。
3.空気調和機の冷温水コイルの通過風速が小さいと搬送される空気量が小さくなってしまい、通過風速を大きくすると凝縮した水の飛散量が多くなってしまう。冷温水コイルの通過風速は、凝縮した水の飛散抑制と搬送動力の低減を考慮し、2〜3m/s程度が望ましい。
4.データセンターのエネルギー効率を定量的に評価する指標PUE(Power Usage Effectiveness)は、「データセンター全体のエネルギー消費量」を「IT機器のエネルギー消費量」で除した値であり、その値が小さいほど省エネルギー性が高い(設問分ママ)。
〔H24 No.11〕空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.氷蓄熱方式は、一般に、水蓄熱方式に比べて、蓄熱槽容量を小さくすることができる。
2.吸収冷凍機は、一般に、同じ能力の圧縮冷凍機に比べて、冷却水量が少なくできるので、冷却塔を小型化することができる。
3.冷却水を直接大気に開放しない密閉式冷却塔は、一般に開放式冷却塔に比べて、送風機動力が大きくなるが、水質劣化に伴う冷凍機の性能低下は少ない。
4.ポンプの軸動力は、一般に、「ポンプの吐出し量」と「全揚程」に比例する。
解答 2:「吸収冷凍機」は、吸収力の高い液体に冷媒を吸収させ、発生する低圧によって、別の位置の冷媒を気化させて低温を得る冷凍機のこと。直だき式、蒸気式、廃熱利用式などの種類があり、フロンを使わず臭化リチウムを吸収液に用いる。
騒音・振動が小さいが、冷媒分離のための熱を多く必要とするので、冷却水量が多くなり、遠心冷凍機に比べて冷却塔が大きくなる。
1.氷蓄熱方式の冷凍機は水蓄熱方式よりも小型化が可能であるが、成績係数は低下してしまう。
3.「開放式冷却塔」は冷却水を直接大気に触れさせることにより冷却するため、大気の影響を受ける。対して「密閉式冷却塔」は冷却水が大気に直接触れないので水質劣化の恐れが「開放式」よりも小さい。ただし間接的な冷却なので送風機動力が大きくなり、コストも大きくなりがちである。これを解消するために温度センサーにより冷却水の出口温度を検出し、ファン発停制御及びファン回転数制御を行えるようにする。
4.ポンプの軸動力は、一般に、「ポンプの吐出し量」と「全揚程」に比例する(設問分ママ)。
〔H24 No.12〕換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.シックハウス対策のための換気を機械換気方式で行う場合、必要有効換気量を求める際の換気回数は、当該居室の天井の高さによっては異なる値となる。
2.一般の換気ダクトにおいて、ダクトの曲がり部分や断面変化部分に生じる局部圧力損失は、風速に正比例する。
3.置換換気方式は、一般に、混合換気方式に比べて、換気効率が高くなる。
4.取入れ外気量を室内のCO2濃度に応じて制御する方式は、外気負荷の軽減に有効である。
解答 2:換気ダクトにおいて、ダクトの曲がり部分や断面変化部分に生じる「局部圧力損失」は、風速の2乗に比例する。
局部圧力損失P = 1/2 (全圧損失係数 × 空気密度 × 風速2)
1.国土交通省告示第273号により、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる場合、居室の天井高さの区分に応じて換気回数を減ずることができる。
3.置換換気方式は、一般に、混合換気方式に比べて、換気効率が高くなる(設問文ママ)。
4.換気計画ではCO2濃度が高い室内空気を排出し、新鮮外気を取り入れることでCO2濃度を小さくする。しかし外気を多く取り入れることは空調負荷が大きくなるため、外気取り入れ量を制限するのは空調負荷を低減するために有効である。その方式の一つとして、室内空気のCO2濃度を検知し、一定のCO2濃度になると外気取り入れを最小限に抑える方式が「CO2濃度制御方式」である。
〔H24 No.13〕給排水衛生設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.さや管ヘッダー方式は、集合住宅等における給水管及び給湯管の施工の効率化や配管の更新の容易さ等を図ったものである。
2.自然冷媒ヒートポンプ給湯機は、自然冷媒を用い、大気から熱を得て、高温の湯を貯湯して給湯する装置であり、一般に、電気温水器に比べてエネルギー効率が高い。
3.給湯設備における加熱装置と膨張タンクとをつなぐ膨張管には、止水弁を設けてはならない。
4.セントラル給湯システムの給湯管には、一般に、ダクタイル鋳鉄管が用いられる。
解答 4:「ダクタイル鋳鉄管」は我が国ならず、世界中で用いられている埋設用の水道管、下水管、ガス管である。セントラル給湯システムの給湯管には、銅管やステンレス管、耐熱性硬化塩化ビニル管などが用いられている。
1.さや管ヘッダー工法とはパイプシャフト内などに設置したヘッダーから各給水、給湯箇所へ、たこあし状に配管する方法で、集合住宅における給水管及び給湯管の施工の効率化や配管の更新の容易さを図ったものである。
2.自然冷媒ヒートポンプ給湯機は、自然冷媒を用い、大気から熱を得て、高温の湯を貯湯して給湯する装置であり、一般に、電気温水器に比べてエネルギー効率が高い。冷媒に二酸化炭素を用いた自然冷媒ヒートポンプ給湯器が普及している。
3.膨張管は給湯設備の貯湯タンク内の圧力が一定以上に高くなった場合に圧力を調節する配管で、常時開放する。そのため止水弁などを設けてはならない。
〔H24 No.14〕給排水衛生設備の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.事務所ビルにおける在勤者一人当たりの設計用の1日給水量を、80lと想定した。
2.排水槽において、排水及び汚泥の排出を容易にするため、槽底部に吸い込みピットを設け、槽底部の勾配は、清掃時の安全等に配慮して、吸い込みピットに向かって1/15とした。
3.受水槽のオーバーフロー管及び水抜き管において、虫の侵入及び臭気の逆流を防ぐため、トラップを設けて排水管に直接接続した。
4.洗落とし式大便器に比べて溜水面が広く、汚れが付着しにくいことから、サイホン式大便器を採用した。
解答 3:受水槽のオーバーフロー管や水抜き管は、水槽内への逆流防止、ガス・臭気・衛生害虫などの侵入を防ぐためにいったん空気中へ開放する「間接排水方式」をとる。
1.設計用給水量は、以下を参考にする。
・戸建て住宅– 200(l/人) ~ 400(l/人)
・集合住宅—– 200(l/人) ~ 350(l/人)
・事務所——– 60(l/人) ~ 100(l/人)
・ホテル——– 350(l/人) ~ 450(l/人)
・総合病院—–1,500(l/人)~3,500(l/人)
・小中学校—– 70(l/人)~ 100(l/人)
2.排水における「地下ピット(ビルピット)」とは、排水を地下空間内に流し、吸い込みピットに溜めた後、排水ポンプで公共ますへ排水する設備であり、ビルや公共施設などで用いられる。このとき吸い込みピットへ汚水が流れやすくするために、底面は1/15~1/10程度の緩やかな勾配をつける。

4.洗落とし式は水の勢いのみで排出するので、溜水面は狭く、封水深が浅い。そのため臭気が発散しやすく、汚物が付着しやすい。
〔H24 No.15〕照明設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.中小規模の事務所ビルの照明・コンセント系統の配電方式には、電圧降下、電力損失、設備費等を考慮して、単相3線式100/200Vが採用されることが多い。
2.光束法による平均照度計算において、照明率に影響を及ぼす要素には、室指数、器具効率、室内反射率及び照明器具の配光が含まれる。
3.照明器具の光源の色温度の高低は、一般に、高いほうから昼白色蛍光ランプ、昼光色蛍光ランプ、高圧ナトリウムランプの順である。
4.同一の照明器具配置において、適正照度維持制御(センサーにより自動的に設定照度へ調光する制御)の適用の有無による照度の差は、ランプの清掃の直前、又はランプの交換の直前の時点で最小となる。
解答 3:光源の色温度の、赤色は温度が低く、青白い色は高い。そのため昼光色蛍光ランプ(6,500K)、昼白色蛍光ランプ(5,000K)、高圧ナトリウムランプ(2,050K)の順になる。
1.中小規模の事務所ビルの照明・コンセント系統の配電方式には、一般に、単相3線式100/200Vが採用されている。一方、小規模な住宅における屋内の電気方式には、一般に、単相2線式100V又は単相3線式100V/200Vが用いられる。
2.光束法による平均照度計算における照明率は、光源から出る光束のうち、作業面に入射する光束の割合であり、器具形式(器具効率)や仕上げの反射率、室指数により求める。
3.色温度は、一般的に昼光色蛍光ランプ6,500K、メタルハライドランプ5,600K、白色蛍光ランプ4,500K、蛍光水銀ランプ4,100K、白熱電球2,850K(ケルビン)、高圧ナトリウムランプ2,100Kである。
〔H24 No.16〕電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.火災原因の一つであるトラッキング現象は、コンセントに溜まったほこりが水又は湿気を含むことにより、プラグの二極間に徴弱な電流が流れる現象である。
2.電圧の種別において、交流の750V以下のものは、低圧に区分される。
3.接地には、外部雷保護用接地、電位上昇による人体の感電等を防ぐ保安用接地、電位変動による電子機器の機能障害を防ぐ機能用接地等がある。
4.太陽光発電システムのうち系統連系システムは、系統(商用電力)と連系して当該需要家への電力の安定供給を図るもので、蓄電池を備えることにより、停電時に非常用電源として使用可能な防災形システムもある。
解答 2:電圧の種別は、以下の表を参考にする。
1.トラッキング現象とは、コンセントと電源プラグの隙間に溜まったほこりが、空気中の湿気を吸収して次第に電気を通しやすい状態になり、最後はショートし発火する現象のことである。
3.接地には、「外部雷保護用接地」、電位上昇による感電等を防ぐ「保安用接地」、電位変動による電子機器の機能障害を防ぐ「機能用接地」等がある(設問文ママ)。
4.太陽光発電のシステムは「独立型」と「系統連系型」の2種類に分けられている。系統連系は、電力会社の電力系統に発電設備を接続することである。
〔H24 No.17〕防災設備の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.隣接した二つの防煙区画において、防煙垂れ壁を介して一方を自然排煙、他方を機械排煙とすることはできない。
2.水噴霧消火設備は、噴霧水による冷却作用と噴霧水が火炎に触れて発生する水蒸気による窒息作用等により、火災の抑制・消火をする固定式の消火設備である。
3.非常用の照明装置の予備電源は、停電時に、充電を行うことなく30分間継続して点灯できるものとする。
4.連結散水設備は、火災時に消防車により送水口から送水して消火する設備であり、一般に、誤作動による被害を回避したいコンピュータ室等に用いられる。
解答 4:「連結散水設備」は、地階の火災発生時に備えて天井に散水ヘッドを設置し、火災時に消防ポンプ自動車から送水口・配管を通じて送水を行って消火する設備である。ただし、コンピュータ室に設置すると、誤作動の場合にはその損失が大きくなる。このためコンピュータ室には不活性ガス消火設備を設置するのが望ましい。

不活性ガス消火設備(出典)
1.隣接した2つの防煙区画において異なる排煙方式を用いる場合は、垂れ壁では防煙区画とはできず、防火区画もしくは間仕切りによる防煙区画とする。
2.水噴霧消火設備は、スプリンクラー設備と同様に水を散水して火災を消火する設備である。スプリンクラー設備よりも散水される水滴が細かく、火災時の熱によって急激に蒸発するときに熱を奪うことによる「冷却効果」と、燃焼面を蒸気で覆うことによって酸素を遮断する「窒息効果」によって消火する設備である。
3.「非常用照明装置」は、地震や火災による停電時に避難に必要な照明を与える役割を持つ。常温下で床面において水平面照度で1lx(蛍光灯を用いる場合には2lx)以上を確保する必要がある。また予備電源(内蔵型または別置型)を設け、停電時に、充電を行うことなく30分聞継続して点灯できるものとする。
〔H24 No.18〕昇降機設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.エレベーターの昇降路内において、原則として、エレベーターに必要のない給水や排水等の配管設備を設けてはならないが、所定の要件を満たした光ファイバーケーブルは設置することができる。
2.エスカレーターは、連続輸送が可能で、一般に、エレベーターの十数倍の輸送能力がある。
3.非常用エレベーターを2台設置する必要がある場合、原則として、集中配置とする。
4.小荷物専用昇降機については、かごの水平投影面積は1m2以下、かごの天井高さは1.2m以下に限定される。
解答 3:建築基準法施行令に規定されている。「2以上の非常用エレベーターを設置する場合には、避難上及び消火上有効な間隔を保つて配置しなければならない。」建築基準法施行令第129条の13の3第2項
1.エレベーターに必要のない給水や排水等の配管設備を設けてはならないが、所定の要件を満たした光ファイバーケーブルは設置することができる。国土交通省平成17年告示第570号
2.エスカレーターは連続輸送ができ、エレベーターの十数倍の輸送能力を有する。エレベーターが約400〜500人/h・台の運送能力であることに対し、エスカレーターは6000〜9000人/h・台の輸送能力がある。
4.小荷物専用昇降機は、物を運搬するための昇降機で、かごの水平投影面積が1m2以下で、かつ、天井の高さが1.2m以下のもの。人の乗降はできない。
〔H24 No.19〕建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.エレベーターの防災対策において、地震時管制運転装置に使用するP波(初期微動)感知器は、原則として、エレベーターの昇降路項部に設置する。
2.空調用冷凍機等に用いられる冷媒のノンフロン化に伴い、自然冷媒であるアンモニア、二酸化炭素又は水が冷媒として用いられることがある。
3.地下水の温度は、一般に、夏期には外気の温度よりも低く、冬期には外気の温度よりも高いので、ヒートポンプの熱源に地下水を利用すると、外気を用いる場合に比べてエネルギー効率が高い。
4.コージェネレーション方式の発電用の原動機としては、一般に、ガスエンジン、ディーゼルエンジン又はガスタービンが使用される。
解答 1:地震時管制運転装置を構成する感知器は、P波とS波用がある。P波とは地震の初期微動のことで、大きく揺れる本震(S波)よりも数秒前に到達する。P波感知器が作動したら最寄り階に自動停止し、S波が来る前に迅速な避難を可能にする。点検・非常時の操作の必要があるため、昇降路底部もしくは基礎に近い階に設ける。
2.ノンフロン冷媒や発泡剤の開発が進められている。アンモニアや二酸化炭素等を冷媒に用いた冷蔵庫・冷凍庫や、シクロペンタンを発泡剤としたノンフロン断熱材が開発・実用化されている。
3.地中や地下水、井水などの温度は、年間を通して安定している。これらを熱源にしたヒートポンプは、空気を熱源としたヒートポンプに比べて能力が安定しており、高効率で、容量を小さくすることができる。
4.コージェネレーションシステムの原動機としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン等が使用される。熱電比(供給可能熱出力を発電出力で除した値)が小さく、最も効率がいい順序として、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンとなる。
〔H24 No.20〕環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.エアフローウィンドウは、夏期における室内温熱環境の改善には有効であるが、冬期におけるコールドドラフトの防止には効果がない。
2.北緯35度付辺において、隣接建築物や常緑樹等の影に入らない場所に太陽熱温水器を設置する場合、真南からの方向の振れが±45度以内、かつ、傾斜角が対地角度0〜30度の範囲に設置すると、設置角度の影響による年間の集熱量の差は小さい。
3.天井が高く気積が大きいアトリウムでは、火災時の対策として、上部に蓄煙空間を設ける煙制御が有効である。
4.都市のヒートアイランド現象は、「建築物や自動車からの排熱」、「建築物や地盤ヘの日射の蓄熱」、「蒸発冷却を促す緑地や水面の減少」等により引き起こされる。
解答 1:エアフローウィンドウシステムは、二重のガラス間に室内空気を通して熱負荷を低減する方式である。ガラス間にブラインドを内蔵するとさらに効果がある。一般に、夏期における室内温熱環境の改善に有効で、冬期におけるコールドドラフトの防止にも効果が期待される。
2.集熱器によって得られる集熱量が最大1年間を通して最大になるための最適傾斜角度は、その地方の緯度と同じにするのが良い。自然循環形の器具は、傾斜角度20°~35°の範囲で設置するように設計されている。
3.蓄煙とは, 室容積のうちの天井から人の高さまでの空間を人体に無害な煙の蓄積空間として利用する考えであり、従来からアトリウムなどの高天井空間において主たる煙制御として位置付けられていたものである。
4.都市のヒートアイランド現象は、「建築物や自動車からの排熱」、「建築物や地盤ヘの日射の蓄熱」、「蒸発冷却を促す緑地や水面の減少」等により引き起こされる。二酸化炭素の増加は直接的な原因ではない。
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