平成22年度1級建築士-学科Ⅱ環境・設備

建築士過去問解説

一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)

令和05年度試験日まであと 日!

〔H22 No.01〕環境工学で用いられる用語に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.照度分布は、照明器具の配光特性を示すため、照明器具の中心を原点として光源の光度を極座標に示したものである。
2.PMVは、室内の温熱感覚に関係する気温放射温度相対湿度気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。
3.熱損失係数は、室温に比べて、外気温が1℃だけ低いと仮定した場合に、「建築物内部から外部へ逃げる単位時間当たりの総熱量」を「建築物の延べ面積」で除した値である。
4.等価騒音レベルは、聴感補正された音のレベルの時間平均値であり、変動する騒音の評価に用いられる。

解答 1:記述の「照明器具の配光特性を示すため、照明器具の中心を原点として光源の光度を極座標に示したもの」は、「配光曲線」の説明である。
 「配光曲線」とは、照明器具(光源)から出てくる光が、どの方向にどれだけの強さ(光度)で出ているかを極座標にて表すもの。

一般電球(4.1W)の配光曲線


一方、「照度分布」は平面上の物体に照射された光の分布のこと。

照度分布図(船橋工学設計事務所HPより)


2.予測平均温冷感申告(PMV:Predicted Mean Vote)とは、室内における人の温熱感覚に関係する、気温、放射温度、相対湿度、気流速度、人体の代謝量及び着衣量を考慮した温熱環境指標である。PMVの値は「+3」で不快(暑い)と感じ、「-3」で不快(寒い)と感じる。0に近づくほど快適とされ、「+0.5~-0.5」程度が快適環境とされる。PMVの値が0から遠ざかるほど、不満足者が多くなるので、予想不満足者率(PPD:Predicted Percentage of Dissatisfied)の値も大きくなる。

3.熱損失係数(Q値)とは、住宅の断熱性能を数値的に表したものである。室内外の温度差が1℃の時、建物全体から1時間に床面積1㎡あたりに逃げ出す熱量を表わしている。Q値は値が小さいほど断熱性能が高いことになる。

4.等価騒音レベルとは、普通騒音計により測定したA特性音響エネルギーを観測時間内で平均し、レベル表示したものである。一般的に変動のある騒音の測定、評価に用いられるものである。

〔H22 No.02〕室内の熱・空気環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.床暖房時の床表面温度が体温より高くなると、低温やけどの原因となるので、一般に、床表面温度の上限は30℃程度が望ましい。
2.作業の程度に応じて代謝量が増えるにつれて、一般に、人体からの総発熱量に占める顕熱発熱量の比率は増加する。
3.ホルムアルデヒドを発散する材料を使用した天井裏からの汚染物質の流入を抑制するためには、常時、居室内を第二種換気とすることが有効である。
4.中央管理方式の空気調和設備を用いた居室においては、浮遊粉じんの量を、概ね0.15mg/m3以下とする。

解答 2:人体からの発生熱量は、顕熱と潜熱の2種類ある。顕熱(Sensible Heat)とは、放熱による温度の変化であり、潜熱(Latent Heat)は湿度の変化である。作業強度が大きくなると当然、発生熱量は大きくなる。このとき、より発汗するので潜熱の割合は大きくなる。

1.床暖房時の床表面温度が体温より高くなると、低温やけどの原因となるので、一般に、床表面温度の上限は30℃程度が望ましい。

3.ホルムアルデヒドを発散する材料を使用した天井裏からの汚染物質の流入を抑制するためには、気密性を高くするか、居室内の圧力を天井裏より低くしないこと(第二種換気方式とする等)が有効である。

4.中央管理方式の空気調和設備を用いた居室において、許容される浮遊粉じんの量は、0.15mg/m3以下とする。(ビル管理法)

空気調和設備を設けている場合の空気環境の基準

〔H22 No.03〕換気に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.上下に大きさの異なる二つの開口部がある室において、無風の条件で温度差換気を行う場合、大きな開口部における内外圧力差は、小さな開口部に比べて小さい。
2.デイスプレイスメント・ベンチレーション(置換換気)は、室内の設定温度よりもやや低温の空気を室下部から供給し、室内の発熱を利用して空気を暖めて上昇させて、室上部から排出する換気手法である。
3.建築物の気密化を図ることは、一般に、必要換気量を安定的に確保し、換気経路を明確にすることができる。
4.空気齢は、時間の単位をもつ換気効率に関する指標であり、その値が小さいほど発生した汚染物質を速やかに排出できることを意味する。

解答 4:「空気齢」は換気効率を示す指標であり、吹出口から供給された清浄空気が室内のある点に到達するまでの平均時間である。この空気齢が小さいほど、清浄空気が早く到着することを意味している。
 また設問の記述は「空気余命」に関する記述であり、室内のある点から排気口に至る平均時間をいう。この値が小さいほど発生した汚染物質を速やかに室外に排出できることを示している。

1.温度差換気において、上下二つの窓からの換気量は等しくなるが、給気・換気の双方の通気量を同じにするためには、開口が小さいとその通気量が多くなり、圧力が大きくなる。反対に、開口部の大きいほうが内外圧力差は小さくなる。

2.冷たい空気ほど重く、床付近に停滞する。この性質を活かしたディスプレイスメント・ベンチレーション(置換換気)は、室内に室温より低温の空気を送り込むことで室内にある空気を押し上げ、汚染空気を排出することにより換気を行う方式である。汚染物質が周囲空気より高温又は軽量な場合に有効である。

3.住宅の常時機械換気設備の計画において、必要な場所に必要な新鮮空気を供給し、また計画的に換気を行う空気の流れを把握する必要がある。その換気計画が有効に機能するには住宅の気密性を高め、隙間からの流入・流出を防ぐ必要がある。

〔H22 No.04〕伝熱・結露に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.結露や雨水の浸入によって断熱材内部の含水率が増加すると、水の熱伝導の影響により断熱性能の低下につながる。
2.断熱性能を高めることは、室温と室内表面温度の差を小さくすることにつながり、室内の上下の温度差も小さくすることができる。
3.表面結露の発生の有無は、「表面近傍空気の絶対湿度から求まる露点温度」と「表面温度」との大小によって判定することができる。
4.日射遮へい係数は、3mm厚の普通透明ガラスの日射遮へい性能を基準として表した係数であり、その値が大きいほど日射熱取得が小さくなる。

解答 4:日射遮蔽係数(SC値)は、厚さ3㎜の透明ガラスの日射熱取得率を基準(1.0)とし、各種ガラス等の任意の遮蔽物の日射熱取得率の割合を表したもので、値が大きいほど遮蔽効果は小さくなる。

1.断熱材は、繊維系断熱材と発泡プラスチック系断熱材との2種類に分類される。繊維系断熱材は細かい繊維の間に空気を閉じ込めることによって機能する。グラスウールに代表される無機繊維系断熱材と、ロックウールを主原料とした鉱物繊維系断熱材がある。一方、発泡プラスチック系断熱材は硬質ウレタンフォームに代表され、熱に弱いが、水に強く軽量であり、結露を防ぐ役割もある。断熱材に含む空気によって断熱性能を発揮するので、どちらも含水率が高くなると断熱性が著しく低下する。

2.断熱が不十分な空間においては、暖房時に壁体などで冷却された空気が下降し、床付近に停滞する。そのため空間内で上下に温度差が大きくなってしまう。そのため断熱性能を高めることで、暖房負荷を減少させ、温熱環境を改善させることができる。

3.「露点温度」とは、ある温湿度状態の湿り空気を冷却したときに、飽和状態となり水分の凝結が始まる温度をいう。空気中の水蒸気が露点温度より低い表面温度の物体に触れると、水分が凝結して水滴となる。このため、表面結露の発生の有無は、露点温度と表面温度の大小に影響される。

〔H22 No.05〕建築物における防火・防災に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.火災階から竪穴区画に侵入した煙は、直上階から順次充満し、最上階への煙の侵入は遅れる傾向にある。
2.横長の窓は、縦長の窓に比べて噴出する火炎が外壁から離れにくく、上階への延焼の危険性が高い。
3.廊下から避難階段への出入口の幅は、その階の避難人口や階段幅等を考慮して決定する。
4.避難経路の計画においては、「日常使用する動線を使って逃げようとする」、「明るい方向やひらけた方向へ向かう」等の避難行動特性を利用した計画とすることが望ましい。

解答 1:煙は火災発生階から一気に最上階へ昇り、最上階から充満していく。また、竪穴区画から各階に煙がもれないよう、竪穴区画に用いる防火設備には遮煙性能が必要である(建築基準法施行令第112条9項)。

2.縦長の窓は、噴出する火炎の勢いが強く、外壁から離れて噴出しやすい。逆に横長の窓は外壁に沿って噴出するので、上階への延焼の危険性が高い。

3.廊下から避難階段への出入り口の幅は、その階の避難人口や階段幅等を考慮して決められる。出入り口は階段の幅と同じか、それよりも狭く計画する。出入り口が広い場合、階段室内で滞留や混雑が生じ、階段での二次災害の恐れがある。

4.避難行動特性には、日常使用する動線を使って逃げようとする、明るい場所に向かう、などの他、複数の避難方向を判断する立ち止まり行動や、引き返し行動などがある。これらの特性を想定して避難経路の計画、避難誘導灯の設置を計画する。

〔H22 No.06〕北緯35度の地点において、南中時に太陽高度が60度となる日の日照・日射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。ただし、終日快晴とし、日照・日射を妨げる要素はないものとする。

1.南中時の法線面直達日射量は、水平面直達日射量の2/√3となる。
2.南中時の南向き鉛直面直達日射量は、水平面直達日射量の1/√3となる。
3.終日直達日射量は、水平面がどの向きの鉛直面よりも大きい。
4.日の出・日没の太陽位置は、春分・秋分の日に比べて南側となる。

解答 4:以下の図から、「日の出・日没の太陽位置」は春分・秋分の日を中心に、冬至の日は南寄り、夏至の日は北寄りになる。

水平面直達日射量(JV)は、地面に対して垂直に到達する日射量、法線面直達日射量(JN)は、太陽の日射角度に垂直面での日射量、南向き鉛直面直達日射量(JH)は、地面に対して立ち上がり鉛直面に水平に到達する日射量である。南中高度が60度の時、以下の比例関係が成立する。
JH : JN : JV = 1 : 2 : √3
1.上記の関係から、
JN : JV = 2 : √3
↔ √3・JN = 2・JV
↔ JN = 2/√3・JV
よって、南中時の法線面直達日射量は、水平面直達日射量の2/√3となる。
2.同様に、JH : JV = 1 : √3
↔ √3・JH = JV
↔ JH = 1/√3・JV
よって、南中時の南向き鉛直面直達日射量は、水平面直達日射量の1/√3となる。

3.北緯35度の地点において、南中時の太陽高度が約60度であるのは、夏期の条件である(春分・秋分は55度)。下の終日日射量を表わすグラフから、夏期の終日直達日射量は、水平面がどの向きの鉛直面よりも大きい。

〔H22 No.07〕照明に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.均等拡散面上における輝度は、照度と反射率との積に比例する。
2.演色性は、色温度が同じ光源であっても異なる場合がある。
3.モデリングは、物の色の見せ方に関わる照明光の性質である。
4.光束は、ある面を単位時間に通過する光の放射エネルギーの量を、視感度で補正した値である。

解答 3:モデリングとは、「照明の位置・光の方向・強さ・形状」によって立体感や質感を出すことであり、照明光の性質ではない。
1.輝度は、単位面積(m2)から発せられる光度(cd:lm/sr)であり、比視感度を考慮した見かけ(見た目)の明るさである。光源面だけではなく、反射面及び透過面についても定義できる。

2.演色性は、視対象の見え方を表わす特性であり、光源の分光分布によって、変化する。視対象の色をどの程度忠実に再現するかの特性であり、昼間の自然光の下での色の見え方に近いほど、演色性が高い。また、手術室や診察室は演色性の高い光源を用いる。

4.光束はルーメン(lm)で表される光の放射量であり、光の基本単位である。人の感覚は波長によって明るさの感じ方が異なるため、明るい場所での視覚の状態を1として、比視感度を乗じることによって補正されている。

〔H22 No.08〕音響に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.人の可聴周波数の範囲はおよそ20Hzから20kHzであり、対応する波長の範囲は十数mmから十数mである。
2.内壁の音響性能について、吸音率が高くても遮音性能が高いとは限らない。
3.単一材料からなる壁体の遮音性能について、質量則によれば、壁の面密度が大きいほど、また周波数が低いほど、壁の透過損失は大きくなる。
4.セービンの残響式によれば、室容積が大きいほど、また室内の等価吸音面積が小さいほど、残響時間は長くなる。

解答 3:垂直入射の透過損失(TL)は、以下の式で求められる。
TL(dB)=20・log10(f・m)−43
(f:周波数、m:面密度)
式から、周波数、面密度が大きいほど、透過損失は大きくなる。

1.人の可聴周波数の範囲はおよそ20Hzから20kHzである。20Hz以下を低周波音、20kHz以上を超音波という。対応する波長の範囲は17mm~17mである。

2.音の成分は吸収成分と透過成分とがある。このため、どちらかの性能が高くても音が隣へ透過してしまう。

4.セービンの式は、残響時間の計算式の中でも吸音力の小さい残響時間の長い室の計算に適した式である。
T = 0.161V / αS
(T:残響時間、V:室容積、α:室内平均吸音率、S:室内総表面積)
上式から、室容積が大きいほど、また室内の等価吸音面積が小さいほど、残響時間は長くなる。

〔H22 No.09〕色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.マンセル表色系では、無彩色以外の色彩を2PB3/5のように表現し、2PBが色相、3が彩度、5が明度を示す。
2.ある面からの放射エネルギーが同じ場合、人の目(明所視)には、赤色よりも緑色のほうが強く感じられる。
3.一般に、色見本で見るよりも実際に壁に塗ったほうが、明度彩度ともに高く見える。
4.高齢者の色覚は、低照度条件下で色彩の分別能力が低下する傾向があるので、微小な色の追いを取り入れたデザインは、有効に機能しないことがある。

解答 1:有彩色の表記は「色相 明度/彩度」というように表す。例として、黄赤の純色であれば、YR6/12となり、YRは色相、6は明度、12は彩度である。また無彩色は明度のみの表記でN3やN9などと表す。


2.明所視において、赤より緑が強く感じる。 また、「プルキンエ現象」は、暗所視において、比視感度が最大となる波長が短い波長へずれる現象であるが、明所視時に比べて赤が弱く、青がより強く見える。明所視(明るい場所で見る場合)で同じ見え方であったとしても、夜や暗い場所(暗所視)では、赤より緑の方が明るく見える。

3.色見本で見るよりも実際に壁に塗ったほうが、面積効果により、明度や彩度ともに高く見える。

4.高齢者は加齢による視力低下や、白内障などにより、特に水晶体の黄変により白色と黄色の区別が困難になる。また黄色の補色である青系も色相判別が難しくなる。この理由によって、色相の変化のみによるデザインは、有効に機能しない場合がある。

〔H22 No.10〕空調設備の熱負荷計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.設計用外気条件に用いられるTAC温度は、実際の気象データを統計処理して得られた値であり、ある超過確率を設定して、稀にみられる猛暑等の要因を取り除いたものである。
2.外部から窓ガラスを通して室内に侵入する熱は、「日射が直接ガラスを透過して侵入する熱」と「室の内外温度差によって侵入する熱」の二つに分類される。
3.最大負荷計算において、照明、人体、機器等による室内発熱負荷については、一般に、冷房時は計算に含めるが、暖房時は安全側となるので、計算に含めないことが多い。
4.期間負荷の略算に用いる全負荷相当(運転)時間とは、冷房又は暖房負荷の年間の積算値を、最大熱負荷(熱源機器容量)で除した値である。

解答 2:「外部から窓ガラスを通して室内に侵入する熱」は、3つに分類される。

①.日射が直接ガラスを透過して侵入する熱
②.ガラスに吸収され、ガラスの温度を高めた後、対流および放射によって侵入する熱
③.室の内外温度差によって侵入する熱

1.TAC温度とは、超過確率を考慮した(省いた)設計用外気温度のことをいう。全国の主要都市の実際の気象データの統計を元に、例えば超過確率2.5%と設定したときは、2.5%の確率でしか現れない非常に稀な温湿度条件を取り除いた統計値である。

3.冷房時において、照明、人体、器具等による室内発熱負荷は、冷房機器の負荷につながる。逆に、暖房時にはプラスに働くので無視する場合が多い。

4.全負荷相当運転時間とは、需要家が必要とする年間熱負荷を、最大熱負荷時の稼働で熱供給を行った場合に、年間何時間の熱供給に相当するかを指すもの。年間熱負荷/最大熱負荷で表される。全負荷運転時間が大きいほど、稼働効率の良い熱供給施設となる。

〔H22 No.11〕図A-Dは、空調設備熱源方式の模式図である。図中の熱源装置の名称の組合せとして、 最もものは、次のうちどれか。

解答 3:[難問] 熱源には以下のような特徴があるので、参考にする。

〔H22 No.12〕空調・換気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.遠心冷凍機の冷水出口温度を低く設定すると、成績係数(COP)の値は高くなる。
2.空調におけるPID制御は、比例、積分、微分の三つの利点を組み合わせた制御方式である。
3.BMS(ビルディング・マネジメント・システム)は、設備の機能を確認するために必要な室温やエネルギー消費量等を計測・計量し、得られたデータを効率的に分析する機能のことである。
4.一般の空調・換気ダクトにおいて、直管部の単位長さ当たりの圧力損失は、風速の二乗に比例する。

解答 1:COP(成績係数: Coefficient Of Performance)は、冷房機器のエネルギー消費効率の目安として使われる係数であり、COPの数値は大きいほど性能が良い。「遠心冷凍機(ターボ冷凍機)」は空調機との間で循環する冷水から潜熱を奪い、再び空調機へ冷水を送り出す。この冷水の温度が低いと奪う熱が少なくなるため冷凍効率が悪くなる。

2.PID制御とは、P(比例動作)、I(積分動作)、D(微分動作)の三つを組み合わせた制御を意味する。

3.BMSは、ITを利用して業務用ビルの照明や空調などを制御し、最適なエネルギー管理を行うもので、要素技術としては人や温度のセンサーと制御装置を組み合わせたものであり、得られたデータを効率的に分析する機能のことである。

4.換気ダクトにおける「直管圧力損失」や「局部圧力損失」は、複雑な計算式や表から算出され、風速の2乗に比例する。

〔H22 No.13〕給排水設備の設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.屋上を庭園にする計画であったので、屋上に開口する通気管は、屋上から3m立ち上げた位置で大気中に開口した。
2.公共下水道が合流式の地域において、雨水排水管は、屋外にトラップますを設けて汚水排水管に接続した。
3.厨房排水において、グリース阻集器が有するトラップは、油脂により機能が保てなくなる可能性があったので、さらに臭気防止用のUトラップを設けた。
4.排水横管からの通気の取り出しは、排水横管断面の垂直中心線上部から45度以内の角度で取り出した。

解答 3:「グリース阻集器」は、主にホテルや飲食店などの業務用厨房などで用いられる排水設備であり、下水に排水する前に冷却・凝固して油分・ゴミを分ける。ただし、阻集器はゴミ・油分を「分離・阻集・貯留」する機能のみしかないので、溜まったゴミ・油分は清掃などで定期的に排除する必要がある。また阻集器はトラップの役割も持つので、トラップを設けてしまっては二重トラップになるのでトラップ設置は避ける。

1.屋根を貫通する通気管の末端は、屋根から200mm以上立ち上げて大気中に開口する。また屋根を庭園、運動場、物干し場等に使用する場合は、屋上を貫通する通気管は、屋上から2m以上立ち上げて大気中に開口する。ただし、出入口や窓がある場合には、その開口部の上端から600mm以上立ち上げて、もしくは開口部から水平に3m以上離して開口する。

2.「合流式下水道」では、汚水と雨水を一緒に下水処理場へ送るこのため、汚水トラップ・雨水トラップの両方を設ける。対して「分流式下水道」は汚水用管路のみを埋設し、汚水は下水処理場へ、雨水は川や海に直接放流する。下水道本管からの害虫等の侵入防止を目的として、汚水トラップを設ける必要がある。

4.排水横管からの通気管取り出しは、排水横管の頂部または頂部から45°以内に取り出す。

〔H22 No.14〕給排水設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.逆サイホン作用による逆流のがある大便器洗浄弁やホース接続する散水栓には、バキュームブレーカーを設ける。
2.排水再利用水の原水としては、洗面器や手洗器からの排水のほかに、厨房排水も利用できる。
3.一般的な事務所ビルにおいて、給水系統を飲料水と雑用水に分ける場合、飲料水 60〜70%、雑用水30〜40%程度の使用水量の比率で計画する。
4.集合住宅の各住戸用の横管は、一般に、スラブ上面と仕上げ床面の間に配管する。

解答 3:事務所ビルにおいて、一般に、上水(飲料用・手洗い等)と雑用水(便所や散水)の2系統給水が採用され、また必要に応じて消火用水槽を設ける。2系統給水の比率は、上水は30~40%、雑用水は60~70%程度とする。

1.逆サイホン作用とは、上水の給水管に上水以外の水・液その他の物質が流入する現象。それを防止するため「バキュームブレーカー」を、大便器洗浄弁やホース接続する散水栓などの上水側に設ける。

2.「排水再利用システム」とは、生下水を浄化し、トイレ用水、散水、冷却・冷房用水、消火用水、清掃用水などに使用できる排水再利用システムのことである。ここで用いられる原水は、洗面器や手洗器からの排水だけでなく、厨房排水や便器洗浄排水も利用することができる。ただし、厨房排水や便器洗浄排水の場合は、高度な処理が必要になる。

4.横管はスラブと床仕上げとの間の空間に配管されることが多い。排水管に関してはスラブを貫通させて下の階の天井裏、もしくは地下ピットに配管させる場合もある。

〔H22 No.15〕照明設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.ナトリウムランプのランプ効率は高く、一般に、130〜180 lm/Wである。
2.照明設備の下面にルーバーを取り付ける場合、取付け前と同じ平均照度を確保するために必要な照明消費エネルギーは増大する。
3.保守率は、「ある期間使用後の作業面の平均照度」を「初期の作業面の平均照度」で除した値である。
4.一般的なLEDランプの平均的ランプ効率は、Hf蛍光ランプの平均的ランプ効率(約100 lm/W)に比べて50%以上高い。

解答 4:「発光効率(平均的ランプ効率)」とは、1Wの電力でどれだけの明るさ(光の量)を発生させられるかを表す数値で、単位は「lm/W」で表される。LEDランプは発光の指向性が強く、器具内部で無駄になる光が少ないためランプ効率が高く、消費電力が少ないので省エネである。※出題時は高効率のものでも100lm/Wくらいで、蛍光灯と同程度でしたが、最近では、150lm/Wを超える超高効率のものも増えてきており、 蛍光灯を上回る効率を実現してきている。このため、出題時は肢4が回答番号で「最も不適当」であったが、現在は必ずしも「最も不適当」とは言えない。

1.高圧放電ランプは、水銀ランプ、メタルハライドランプなどの高圧放電系ランプの総称で、道路、工場、高天井などに使用される。白熱電球に比べて寿命が長く、色温度は高く、演色性は低い。ただし、トンネルや道路に使用される高圧ナトリウムランプは、色温度は低いが、発光効率は最も高い。(高圧は130-150lm/W、低圧は135-180lm/W)

2.照明設備の下面にルーバーを取り付けた場合、グレア防止に効果がある。ただし、ルーバーによって室全体が暗くなるため、取り付け前と同じ平均照度を確保するためには、ワット数(消費電力)が大きい照明器具を使用する必要があり、照明消費エネルギーは増大する。

3.照度計算に用いられる保守率は、ランプの経年劣化やほこり等による照明器具の光束減少の程度を表す数値である。「初期の作業面の平均照度」に対する「ある期間使用後の作業面の平均照度」の割合で表わせられる。

〔H22 No.16〕電気設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.蓄電池を使用しない非常電源における自家発電設備は、常用電源が停電してから電圧確立までの所要時間を40秒以内とする。
2.埋設接地極は、酸等で腐食するがなく、なるべく水気の少ない場所を選んで地中に埋設する。
3.夜間、無人となる防火対象物において、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して点灯する方式の誘導灯を設置した場合、無人となる時間については、誘導灯を消灯することができる。
4.需要率は、「最大需要電力」を「負荷設備容量」で除した値である。

解答 2:埋設接地極、もしくは打込接地極は、ガス・酸などのための腐食の恐れがあるので、これを避け、なるべく水気の多いところに設置する。

1.消防用設備等の非常電源として用いる自家発電設備で、蓄電池を使用しないものは、常用電源が停電してから電圧確立及び投入までの所要時間を40秒以内とする必要がある。(昭和48年2月10日消防庁告示第一号)

3.夜間など、無人となる防火対象物において、自動火災報知設備の感知器の作動と連動して点灯する方式の誘導灯を設置した場合、無人となる時間については、誘導灯を消灯することができる(設問文ママ)。

4.需要率は、「負荷設備容量の総和」に対する「最大需要電力」の割合である(設問文ママ)。一般の電灯需要家では、需要率は、50%から75%程度。

〔H22 No.17〕消火設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.二酸化炭素消火設備及び泡消火設備は、いずれも酸欠効果と冷却効果によって消火する設備である。
2.スプリンクラー設備の設置が必要なホテルにおいて、床面から天井までの高さが10mを超える吹抜けのロビーには、放水型ヘッド等を用いたスプリンクラー設備を設置する。
3.社会福祉施設、病院、ホテルに設置する屋内消火栓設備については、一般に、1号消火栓を採用する。
4.粉末消火設備は、微細な粉末の薬剤を使用するものであり、凍結しないので、寒冷地に適している。

解答 3:工場、倉庫、危険物貯蔵庫には1号消火栓が設置され、その他の場所では1号・2号のいずれでも良い。ただし、1号消火栓は2人で操作するので、社会福祉施設、病院、ホテルに設置する屋内消火栓設備については、一般に、一人で操作ができる2号消火栓を採用する。

1.二酸化炭素消火設備はガス系消火設備の一つで、主に「窒息効果」 (燃焼時に必要な酸素の供給を絶つ)によって防護区画内の炎を消すものである。泡消火設備は、危険な場所、大きな駐車場、格納庫などに用いられる。火災時の熱によって急激に蒸発するときに熱を奪うことによる「冷却効果」と、燃焼面を蒸気で覆うことによって酸素を遮断する「窒息効果」によって消火する設備である。

2.スプリンクラー設備の設置が必要なホテルでは、床面から天井までの高さが10mを超える高天井の部分においては、放水型ヘッドを使用したスプリンクラー設備が適している。

4.粉末消火設備は、粉末の薬剤を加圧ガスで噴射し、主に薬剤の「窒息効果」により消火する設備である。安価で入手しやすく、持ち運びのしやすさ、操作のしやすさなどのメリットがある。

〔H22 No.18〕昇降機設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.荷物用エレベーターは、荷物の輸送を目的とし、荷扱者又は運転者以外の人の利用はできないが、人荷用エレベーターについては、一般乗客も利用することができる。
2.エレベーターの定格速度とは、かごに積載荷重の80%を載せた状態で上昇する場合の最高速度をいう。
3.エレベーターのサービス水準の指標となる平均運転間隔とは、エレベーターが始発階を出発する平均の時間間隔をいい、一般的な貸事務所ビルにおいては、40秒以下が望ましい。
4.エスカレーターの勾配が30度を超える場合には、「勾配は35度以下」、「踏段の定格速度は30m/分以下」、「揚程は6m以下」等の制限を受ける。

解答 2:「定格速度」は、建築基準法129条の9において「かごの定格速度は、積載荷重を作用させて上昇する場合の毎分の最高速度をいう」と定義されており、「定格積載量の100%の負荷を載せた場合」を指す。

1.荷物用エレベーターは、荷物の輸送を目的とし、荷扱者又は運転者以外の人の利用はできないが、人荷用エレベーターについては、一般乗客も利用することができる(設問文ママ)。

3.事務所ビルの計画における乗用エレベーターの設置台数は、般に、ピーク時の値として出勤時の交通量をもとにシミュレーションを行い、5分間集中率を貸ビルでは在籍人数の10〜15%、自社ビルでは20〜25%として交通計算を行い、平均運転間隔を40秒以下とするのが望ましいとされている。

4.エスカレーターの勾配が30度を超える場合には、「勾配は35度以下」、「踏段の定格速度は30m/分以下」、「揚程は6m以下」等の制限を受ける(設問文ママ)。

〔H22 No.19〕建築設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.壁面に吹きつける雨水が下部の屋根面に流下する場合は、一般に、壁面面積の50%を下部の屋根面積(水平投影面積)に加算して、雨水排水管の管径を求める。
2.逆潮流とは、太陽光発電や燃料電池による発電等の設備を有する需要家から商用電力系統へ向かう電力潮流のことである。
3.事務所における年間一次エネルギー消費量のうち、空調・換気用のエネルギーは、一般に、全体の40〜50%程度である。
4.外気冷房は、窓を開放することにより、外気を導入し、空調負荷を低減する手法である。

解答 4:「エンタルピー」とは、熱エネルギー(全熱量)の状態量の指標である。温度が高いとエンタルピーは大きくなる。「外気冷房」は、室外の空気温度(エンタルピー)が、室内の空気温度(エンタルピー)よりも低い時に外気を導入し、冷房と換気を行う。この外気冷房方式は、内部発熱の大きい事務所ビル、デパート、商業建築物などで採用され、必要外気量が小さい場合に効果が期待される。ただし、冬期の低湿な空気を導入する場合は加湿処理のための負荷が増える。

1.雨水排水管の管径の算定は一般に各地域における最大雨量と屋根面積を用いて計算が行われるが、当該屋根上に上階の壁がある場合は壁に吹き付けられる雨水の流下も考慮する必要がある。このとき、垂直面に30度で雨が吹き付けるものとして、壁面積の50%を加える。

2.電力会社の発電施設から、送電線をつたって電力が家庭や企業に流れていくことを「順潮流」という。対して、逆潮流とは、太陽光発電や燃料電池による発電等の設備を有する需要家から商用電力系統へ向かう電力潮流のことである。

3.建築物で使われるエネルギーは、主に空調のための温熱・冷熱を作り出す「熱源」、その熱を運ぶ「熱搬送」、お湯や蒸気を作り出す「給湯・蒸気」、照明・OA機器などの「照明・コンセント」、エレベータ・エスカレータなどの「動力」、これら以外の「その他」に大別される。空調・換気用のエネルギーは、「熱源」「熱搬送」「給湯・蒸気」に分類され、以下のグラフより、約40-50%程度を占めている。

〔H22 No.20〕建築物の省エネルギーに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.熱交換換気の採用による省エネルギー効果の検討に当たっては、熱回収による冷暖房負荷低減だけでなく、ファン動力の増分も考慮する必要がある。
2.コージェネレーションシステムの原動機にガスエンジンを使用した場合、一般に、ガスタービンを使用した場合に比べて、熱電比(供給可能熱出力を発電出力で除した値)が大きい。
3.パッシブソーラーシステムに用いる開口部には、高い日射透過率と断熱性が求められ、一般に、南面の開口面積が大きいほど集熱効果が高い。
4.ヒートポンプ式家庭用給湯機のエネルギー利用効率は、貯湯槽の容量や選択した制御モード(沸き上げの温度・量・タイミングを制御)の影響を受ける。

解答 2:コージェネレーションシステムの原動機としては、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービン等が使用される。熱電比(供給可能熱出力を発電出力で除した値)が小さく、最も効率がいい順序として、ガスエンジン、ディーゼルエンジン、ガスタービンとなる。

1.全熱交換器には、回転型と静止型がある。回転型は全熱交換器のローターを回転させ、排気から給気に熱回収する。静止型は特殊加工紙の仕切板と間隔板で構成されており、全熱交換器自体に空気を通過させるための送風機が必要となる。

3.パッシブソーラーシステムは、機械的な装置を用いずに、建物の構造や建材などを工夫し、自然の伝熱を利用して蓄熱・放熱を行うことで室内を快適な状態に保つシステムである。この開口部には、高い日射透過率と断熱性が求められ、一般に、南面の開口面積が大きいほど集熱効果が高い。

4.家庭用ヒートポンプ給湯器は(エコキュート)は大気の熱を集めて熱エネルギーに変える、高い効率でお湯を沸かすことができる。エコキュートには、お湯を貯めておく役割の「貯湯ユニット」とお湯を高効率で沸かす「ヒートポンプユニット」という二つのユニットで構成される。そのエネルギー利用効率は、貯湯槽の容量や選択した制御モード(沸き上げの温度・量・タイミングを制御)の影響を受ける。

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投稿日:2019年8月1日 更新日:

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