
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔H22 No.01〕建築設計の手法等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.建築物の計画における環境負荷の低減策の検討に当たっては、既存施設を改修し活用することより、既存施設を解体し新たな建築をつくることを優先して検討することが重要である。
2.サスティナブル(持続可能)な建築の計画に当たっては、自然、風土、地域性、場所性等の認識が重要である。
3.自然エネルギーを活用する建築においては、建築物の形態や配置、開口のとり方や断熱等、建築の基本的な構成に配慮することが重要である。
4.建築設計にかかわる者は、建築が近隣や杜会に及ぼす影響を自ら評価し、良質な社会資本の充実と公共の利益のために努力することが重要である。
解答 1:建築物は、長期間利用する方が環境負荷の低減策となる(ライフサイクルの考え方)。 従って、既存施設を解体し新たな建築をつくることは環境負荷の低減とならない。
2.サスティナブルな建築の計画にあたっては、ライフサイクルを通して省エネルギー、省資源、リサイクル、有害物質排出の抑制を図り、その土地に固有の自然、風土、地域性、場所性を認識し、将来にわたって生活の質を適度に維持・向上させることを目指さなければならない。
3.自然エネルギーは、太陽光、太陽熱、風力、火力、水力、地熱など、自然環境の中に存在するエネルギーで、利用した後も自然に還るという特徴がある。自然エネルギーを活用する建築においては、建築物の形態や配置、開口のとり方や断熱等、建築の基本的な構成に配慮することが重要である(設問文ママ)。
4.建築が世代を超えて使い続けられる価値のある社会資産となるように、建築設計に関わるものは、建築が近隣や社会に及ぼす影響を自ら評価し、良質な社会資本の充実と公共の利益のために努力しなければならない。
〔H22 No.02〕日本の歴史的な建築様式とその特徴との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
解答 2:設問の特徴の記述は「禅宗様」の特徴である。「天竺様(大仏様)」は、日本の伝統的な寺院建築様式の一つで、中国の様式を取り入れている。その特徴として指肘木、化粧屋根、用木への彩色がある。東大寺南大門や浄土寺浄土堂などがその代表。日本の建築史の流れはこのページを確認ください。

1.神明造りは、切妻屋根の棟の上に棟と直交する円形断面の堅魚木が並び、棟の両端に斜めに突き出した千木がある。伊勢神宮内宮正殿が代表的である。

3.禅宗様の特徴は、①部材が細く、②組物が精密に細工し、③屋根の反りが強く、④扇垂木、⑤火打窓、⑥結組が配置されている。円覚寺舎利殿が代表的である。

4.寝殿造りとは、平安時代にできた都の貴族の住宅の様式である。主人が居住する寝殿という建物を中心に、東西に渡殿(わたどの)という廊下で結ばれた対屋(たいのや)を、南には池のある大きな庭園を設けたものである。

〔H22 No.03〕「建築様式又は芸術様式」と「建築作品(建築家)」との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
解答 2:バシリカ・パラディアーナはルネサンス期の公会堂建築で、建築家アンドレーア・パッラディオによる作品。

アンドレーア・パッラディオ
1.「フィレンツェ大聖堂の大ドーム」は、正式名称をサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂といい、イタリアのフィレンツェに位置するカトリック教会である。フィリッポ・ブルネレスキはルネサンス初期の建築家である。

3.「タッセル邸」は19世紀にヨーロッパ全土に広がった装飾美術「アール・ヌーボー」の初期の代表例として有名。アール・ヌーヴォーとは、19世紀末にヨーロッパで流行した新しい装飾美術の様式であり、この「タッセル邸」も当時の新しい素材である鉄やガラスなどを用い、曲線的で、花や植物などの有機物をモチーフにしている。

4.「レイクショアドライブ・アパートメント」は、ミース・ファン・デル・ローエによる建築である。鉄とガラスのカーテンウォールで全面を覆うツインマンションで、当時としては画期的な意匠であった。

〔H22 No.04〕建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.サッカースタジアムの計画において、観客の退出時や避難時の群集事故を防止するため、動線を「分離する」、「単純化する」、「長くする」等の工夫を行い、群集全体の流動性を妨げないようにした。
2.事務所ビルの避難階において、上階からの階段と下階からの階段を連続させない計画とした。
3.集合住宅のバルコニーの手すりについて、手すり部分を、内法が10cm×10cmの格子状とした。
4.住宅の屋内階段には、蹴込み板を設け、蹴込み寸法を3cmとした。
解答 3:バルコニーに設ける手すりは、子供が登る恐れがあり危険なので、格子状にするのは望ましくない。また縦ざんとする場合は幼児の頭が入らないように、その間隔は11cm以下とする。
1.競技場などの観客の退出時や避難時の群衆事故を防止するためには、群衆全体の連続的な流動性を失わないようにすることが重要である。この計画においては「動線の分離と単純化」及び「動線を長くする」ことが重要とされる。
2.避難階において、上階からの避難者と下階からの避難者が合流して混乱するのを避けるため、また、避難者が避難経路を認識しやすくするため、上階からの階段と下階からの階段は連続させないことが望ましい。
4.階段の基準は、①幅は140cm以上、蹴上げ16cm以上、踏面30cm以上、蹴込みは2cm以下としている。また蹴込み板を設けることで転倒の防止をする。
〔H22 No.05〕建築物と周辺環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.長方形の平面形状をもつ高層建築物によるビル風を防ぐためには、一般に、建設地における卓越風向に対して、建築物の平面の長辺を直交させるように計画する。
2.多雪地域の市街地内の建築物において、落雪による危険と雪の搬出の負担を軽減するため、無落雪屋根を採用する場合がある。
3.建築物が冬至の日において4時間以上の日影を周囲に及ぼす範囲は、一般に、建築物の高さよりも東西方向の幅に大きく影響される。
4.建築物に囲まれた広場や街路等の幅員をD、建築物のファサードの高さをHとした場合、D/Hはその外部空間の開放感や閉塞感を表す指標となる。
解答 1:ビル風による影響を小さくするために、風向に対して、建築物の平面の長辺ではなく、短辺を直交させるように計画する。
2.降雪量が多い地域では、屋根に積もった雪をそのままにしておくと、許容量を超えたときに雪の重みで屋根や建物が破損する可能性がある。このため、一般的な三角屋根は勾配をつけて雪が滑りやすいようにし、定期的に雪下ろしをする必要がある。ただし、雪下ろし中の事故や、落雪により人や車などに被害を加えてしまうこともあるため、最近では「無落雪屋根」を採用する施工例が多く見られる。
3.4時間以上日影となる範囲は、ある程度の高さではあまり変化せず、東西方向に最も影響を受ける。
4.D/Hが大きいほど開放感が強く、小さいほど囲繞感が強くなる。具体的な数値として、D/Hが4以上で囲繞感がなくなり、1〜1.5程度で均整があるとされ、あるいは1〜3程度であれば心地よい囲繞感があるとされている。D/Hそのものを街路の設計だけで操作することは困難だが、D/Hが大きすぎる場合には街路樹等で街路空間を分節し、茫洋とした印象を軽減するといった工夫が考えられる。また逆にD/Hが小さすぎる場合には、植栽や道路付属物、占用物の設置を極力避け、空間を広く見せるなどの対応が考えられる。
〔H22 No.06〕建築物の各部の寸法等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.車いす使用者の利用する便所の出入口を引戸とし、その有効幅を95cmとした。
2.総合病院における4床の病室の計画において、ベッド間隔を1m確保するために、1床当たりの床面積を8.0m2以上とした。
3.一般乗用車の自走式の立体駐車場の計画において、斜路の本勾配を1/6とし、斜路の始まりと終わりのそれぞれ長さ6mの部分については、緩和勾配を1/12とした。
4.シティホテルの一般用のフロントカウンターの高さを、客側の床面から85cmとした。
解答 4:フロントカウンターの高さは、肘の高さ約100-110cmにする。また車椅子利用者のためのカウンターは70-75cmとする。
1.車いす使用者が利用するトイレの出入口の有効幅は80㎝以上とする。
2.病院の病室の広さは、一般的に1床あたり内法寸法6.4m2で算出する。ただしこの場合はベッド間隔は60cm~70cmなので、設問の通りベッド間隔を1mとするときは一床あたり8.0m2で算出する。なので8.0m2×4床=32.0m2以上となる。
3.自走式の立体駐車場の車路は、傾斜部の本勾配を1/6以下とし、傾斜部の始まりと終わりに緩和勾配(本勾配の1/2)を設け、またその長さは、2.5~6m程度とする。
〔H22 No.07〕建築物の各部の寸法及び床面積に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.劇場において、車いす使用者用客席スペースを出入口に近い部分に設け、車いす1台当たりのスペースを幅90cm、奥行き120cmとした。
2.事務所において、ロの字形に机を配置する会議室(収容人員20人程度)の広さを、3.6m×7.2mとした。
3.図書館において、書架のない閲覧室(4人掛で100席)の床面積を、180m2とした。
4.洋食レストランにおいて、客席部分(50席)の床面積を、80m2とした。
解答 2:一般的な事務室の会議室の場合、一人当たり約2~3m2程度必要となる。20人の会議室であれば、約40~60m2程度必要となる。なお、ロの字形に机を配置する会議室にはデッドスペースが多くなりがちなので、スクール形式、コの字形式、シアター形式など、他の方式よりも広い面積での計画になり、40~60m2よりも面積は大きくなる。
1.車いす使用者用客席スペースを出入口に近い部分に設け、車いす1台当たりのスペースを幅90cm、奥行き120cmとする。また車椅子使用者用の観覧席は、客席・観覧席総数の0.5~1.0%以上とし、利用者が選択できるように複数用意できることが望ましい。
3.図書館における閲覧室の広さは、一般的に閲覧室1席あたり2-3m2/席 程度を目安とする。ただし、書架のない閲覧室においては1.8m2/席 程度とする。100席×1.8m2/席=180m2、正しい。
4.レストラン客席部分の広さは、一般的に1.0~2.0m2程度が標準的である。設問では50席なので、50~100m2程度で計画する。
〔H22 No.08〕車いす使用者及び視覚障がい者等の利用に配慮した建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.延べ面積2,000m2の集合住宅の共用エレベーター(トランク付)において、かごの寸法は幅140cm×奥行き135cmとし、かごの出入口の有効幅は90cmとした。
2.駅舎の通路において、視覚障がい者誘導用線状ブロックを、通路壁面から1m以上離して敷設した。
3.住宅において、壁に設置するコンセントの取付け高さは、高齢者や車いす使用者が利用しやすいように、床面から40cmとした。
4.車いす使用者が利用する洗面所において、洗面器の上端の高さは、床面から65cmとした。
解答 4:車椅子使用者が利用する洗面台は、クリアランスを床面から65cm程度設ける必要があるので、設問の条件では足りない。なので洗面器の上端の高さを床面から75cm程度にするのが望ましい。
1.集合住宅に設置される共用エレベーターは、車椅子使用者に配慮し、かごの寸法を幅140cm×奥行き135cm程度とする。トランク付きエレベーターとは、かごの中にトランクルームが設けられたエレベーターのことである。
2.駅舎の通路に視覚障害者誘導用の線上ブロックを敷設する場合には、旅客の同線と交差しない経路で、できるだけ曲がり角を少なくし、通路壁面や柱面などから1m程度離れた位置が望ましい。
3.高齢者や車椅子使用者の便を考慮して、コンセントの中心高さは床面から約40cm程度とする。
〔H22 No.09〕まちづくりに関する誘導制度等とその説明との組合せとして、最も不適当なものは、次のうちどれか。
解答 1:「高度利用地区」は、都市計画法第9条に定められており、以下の様に規定されている。
“用途地域内の市街地における土地の合理的かつ健全な高度利用と都市機能の更新とを図るため、建築物の容積率の最高限度及び最低限度、建築物の建蔽率の最高限度、建築物の建築面積の最低限度並びに壁面の位置の制限を定める地区とする。”
説明に該当するのは「高度地区」である。
2.「景観地区」 とは景観法に規定され、市街地の良好な景観の形成を図るため、都市計画に定められる地区のこと。景観地区内において建築物の建築等をしようとする者は、原則として、あらかじめ、その計画が、所定の規定に適合するものであることについて、市町村長の認定を受けなければならない。
3.「連担建築物設計制度」とは、単一の敷地では適用ができない場合でも、既存の建物を含む複数の敷地・建物を一体として合理的な設計をし、特定行政庁の認定により、当該敷地群を一つの敷地とみなして、接道義務、容積率制限、建ぺい率制限、斜線制限、日影制限等を適用できる制度である。
4.「総合設計制度」は、都市計画で定められた制限に対して、建築基準法で特例的に緩和を認める制度の一つである。公開空地の確保により市街地環境の整備改善に資する計画を評価し、特定行政庁の許可により、容積率制限や斜線制限、絶対高さ制限を緩和することができる。
〔H22 No.10〕計画的につくられた都市に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.オーストラリアの首都であるキャンベラは、三つの都市機能(中央官庁街、市政庁、業務商業機能)を三角形の項点に相当する位置に配置して都心部を構成し、その外側を郊外住宅地とする計画案に基づいている。
2.ロンドンの北方に位置するミルトン・ケインズは、イギリス最大級のニュータウンであり、近隣住区論による空間構成を忠実に具体化した計画案に基づいている。
3.ブラジルの首都であるブラジリアは、ジェット機形の平面形状をもち、機体の胴体に相当する部分を政治的中枢地域、翼に相当する部分を住居地域とする計画案に基づいている。
4.インドのパンジャブ州都であるチャンディガールは、格子状に分割した区域(ユニット)と7段階に機能分けした道路網からなる計画案に基づいている。
解答 2:「ミルトン・ケインズ(英)」は1辺約1kmの格子状の幹線道路網が特徴。
1.オーストラリアがイギリスから独立する際の首都選定で、当時主要な都市であったシドニーとメルボルンの中間に位置するキャンベラに決定された。1911年国際コンペで建築家W.B.グリフィンの案が選定され、三つの都市機能(中央官庁街、市政庁、業務商業機能)を三角形の項点に相当する位置に配置して都心部を構成し、その外側を郊外住宅地とする計画案となった。また洪水の多い平野を人造湖に変えて治水を解決した。
3.ブラジリア(ブラジル)は、人口湖のほとりに建設された、ジェット機形の平面形状で計画されたブラジルの首都である。機体の胴体に相当する部分に国会議事堂や行政庁舎、最高裁判所などの「政治的中枢地域」、翼に相当する部分を高層住宅や大使館などがある「住居地域」とする計画案に基づいている。
4.チャンディガール(インド・パンジャブ)は、格子状に分割した区域(ユニット)と7段階に機能分けした道路網からなる計画案に基づいている。

〔H22 No.11〕住宅等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.接地型の集合住宅の共用庭は、コミュニテイの活性化を図るほかに、住棟間のプライバシーを確保するための緩衝スペースとしても機能させることができる。
2.住宅の設計において、高齢者の部屋を出入口近くに配置すると、外部からのケアサービスを受けるうえで有効である。
3.住宅地まわり等の道路において設けられるハンプは、車の速度を歩行者と同程度までに落とすことを目的としている。
4.非常用エレベーターは、平常時において一般乗用エレベーターとして使うことができない。
解答 4:非常用エレベーターは、平常時において一般乗用エレベーターとして使うことは可能である。ただし避難経路として利用することはできない。
1.接地型集合住宅の共用庭は、コモンスペースともいい、共用庭から各住戸にアクセスする「コモンアクセス型」では、住民同士のコミュニティを活性化させる場となり、「路地アクセス型」では住棟間のプライバシーを確保するための緩衝地帯として機能する。
2.高齢者の寝室は車椅子の使用や、緊急時の避難、外部からのケアサービスを受けることなどを想定して、出入り口の近くに配置する。
3.ボンエルフとは、歩行者の快適性を考えつつ、自転車や自動車の通行を可能にした方式(歩車共存)である。歩車共存にするにあたり、車の速度を抑制するため車路を蛇行させる手法を「シケイン」といい、路面を部分的に盛り上げる手法を「ハンプ」という。
〔H22 No.12〕集合住宅の作品(設計者)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.シーランチ・コンドミニアム(チャールズ・ムーア他)は、10戸の週末用住居群を海の眺望を考慮して、敷地の勾配に沿って中庭を囲むように配置した低層集合住宅である。
2.カサ・ミラ(アントニオ・ガウディ)は、波状の有機的なファサードを有し、各住戸の平面が異なる高層集合住宅である。
3.ユニテ・ダビタシオン(ル・コルビュジェ)は、メゾネット型住戸を主とし、多様な施設を複合した高層集合住宅である。
4.ハーレン・ジードルンク(アトリエ5)は、市街地に建つ商業施設を複合した高層集合住宅である。
解答 4:ハーレン・ジードルンクは郊外の傾斜地に建てられた低層集合住宅である。

ハーレン・ジードルンク
1.シーランチ・コンドミニアムはチャールズ・ムーアによる設計であり、太平洋から吹く海風を受け流すように傾斜した屋根が特徴的である。

2.カサ・ミラはアントニオ・ガウディによる設計である。地下1階、地上6階で、従来の壁構造ではなく、柱と梁で耐力を確保することで壁を薄くし、自由な空間と波打つファサードをつくった。

3.ユニテ・ダビタシオンは、ル・コルビュジエによって設計されたピロティのある高層の集合住宅である。建築物内には家族用、単身用の住戸があり、その多くがメゾネット型住戸である。一階のピロティは建築物全体を持ち上げる印象を持たせ、その太い柱の内部には配管がなされている。

〔H22 No.13〕事務所ビルの計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.基準階の事務室の床面積を1,000m2とする貸事務所ビルの計画において、男子小便器3個、男子大便器3個、女子便器4個とした。
2.事務室内の排煙については、照明器具に設けたスリットを利用した天井チャンバー方式とし、防煙垂れ壁の下端を天井面から下方へ25cmとした。
3.25階建ての一社専有の事務所ビルのエレベーター計画において、エレベーターを行き先別にグルーピング(バンク分け)せずに計画した。
4.基準階の床面積が2,000m2の30階建ての貸事務所ビルの計画において、レンタブル比を高めることができ、構造上も有効なセンターコア型を採用した。
解答 3:エレベーターの計画は、ある程度高層になってくるとゾーニング(グループ分け)を行う。コンベンショナルゾーニング方式を採用した常用エレベーターにおいては、各ゾーンのサービスフロアの階数が10階~15階になるようにし、乗り継ぎ階を設ける。設問では25階なので、例えば1階を出発階とし、2階から11階、11階から25階行きの2ゾーンにするなどのグルーピングをする必要がある。
1.事業所に設ける便器の数は労働安全衛生規則628条によって規定されている。
・男性用と女性用に区別する
・男性用大便器:60人に1個以上
・男性用小便器:30人に1個以上
・女性用大便器:20人に1個以上
2.天井チャンバー方式は、天井内をチャンバー(箱型の空間)にして、天井にスリットなどの開口部を設置し、天井内の排煙口から排煙を行うシステムである。一般に防煙垂れ壁は、原則として天井から500㎜の高さが必要であるが、天井チャンバーと併用する場合は250mm以上とする。
4.センターコアはコアの周囲を耐力壁で回すことで構造上有効とし、高層建築物において採用される。また建築物の中心にコアを配置しているので両サイドもしくは周囲に収益室を配置することができ、レンタブル比を高めることができる。
〔H22 No.14〕公共建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.体育館の計画において、バスケットボールコートに必要な広さとバレーボールコートに必要な高さからアリーナの容積を決定した。
2.一般的な総合病院の計画において、病棟・外来・診療・供給・管理の五つの部門の構成を設定し、各部門間の人と物の動線について検討した。
3.コンサートホールの計画において、演奏者と観客の一体化を図ることを意図して、客席が演奏者を取り囲むシューボックス型の空間形式を採用した。
4.小規模なコミュニティ施設の計画において、施設の夜間利用を想定して、夜間専用の出入口を設け、専用カードキーで利用できる計画とした。
解答 3:シューボックス型は音響を安定する目的で計画し、設問の「演奏者と観客の一体化を図ることを意図して、客席が演奏者を取り囲む」形式はアリーナ型の特徴である。
1.体育館の計画にあたって、「広さ」はバスケットボールコートを基準に、「高さ」はバレーボールコートを基準にボリュームの検討を行う。
2.一般的な総合病院は5部門(病棟・外来・診療・供給・管理)によって構成される。これら部門同士の動線を綿密に検討することが必要となってくる。
4.夜間利用が想定される場合は、夜間専用出入口を通常出入口とは別に設け、出入りを限定する手法として暗証番号方式か、カードキーにより入退館できるようにシステム化する。
〔H22 No.15〕保育所の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.園庭は、年齢に応じて異なるタイプを計画し、1、2歳児用の園庭には芝生を植えた緩やかで小さな丘を設けた。
2.保育室は、乳児と幼児の数の変動に対応できるように、乳児用と幼児用とを間仕切のないワンルームとした。
3.年長児用保育室には、集団で遊ぶための大きな空間のほかに、絵本コーナーやごっこ遊びのコーナーとして小さな空間を設けた。
4.便所は、年齢に応じて異なるタイプを計画し、1、2歳児用の便所では便器間の仕切りを設けずオープンなつくりとした。
解答 2:保育室の計画で、乳児は幼児と比べてまだ歩くことがおぼつかなく、ほふくすることが多い。そのため行動能力が異なるので乳児室と幼児室は兼用してはならない。
1.園庭は保育空間と一体的に計画し、年齢・運動能力に応じたスペースを配置する。年少児用の園庭は保育室に面して設け、安全性や自然を感じるように芝生を植え、興味や関心を持たせるような小さな丘を設けることも有効である。
3.年長児に対しては小学校入学へ向けてさまざまな刺激ある働きかけや関わりが必要になってくる。このため集団で行動するスペースや静かに落ち着く空間である絵本コーナーやごっこ遊びのコーナーを設ける。
4.1、2歳児用の便所では、保育士が世話をしやすいように間仕切りを設けない場合がある。
〔H22 No.16〕環境に配慮した建築計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.郊外に建つ研修センターにおいて、空調負荷の低減を図るために、地下の設備配管ピットに外気を通すクールチューブ・ヒートチューブを採用した。
2.市庁舎において、空調設備への依存を低減しつつ快適な環境をつくりだすために、屋上を緑化したり、風の道を確保する計画とした。
3.事務所ビルにおいて、窓まわりにおける外部からの熱処理をするために、窓と設備を一体化したペリメーター空調の一つであるエアフローウィンドウ方式を採用した。
4.事務所ビルにおいて、空調負荷の低減を図るために、氷蓄熱システムからの冷風を利用して夜間に躯体に蓄冷させ、昼間に躯体に吸熱させるナイトパージを採用した。
解答 4:「ナイトパージ」は夜間の冷気(自然エネルギー)を利用し、夜間や早朝の外気が室内の温度よりも低い場合、涼しい外気を建物に取り込んで、建物に蓄熱された熱をあらかじめ逃がしておく方式である。氷蓄熱システムは用いない。
1.「クールチューブ・ヒートチューブ」は、地中に埋設したチューブ(塩ビ管、ポリエチレン管など)やコンクリートのトレンチに外気を通すことにより、年間で安定した温度を保つ地中熱を利用するものである。これにより、空調負荷の低減を図ることができる。
2.たとえば沖縄県名護市役所庁舎では、深い庇を設けて直射日光を避け、「風の道」をとおす計画とし、夏期における冷房負荷の低減を図っている。
3.エアフローウィンドウシステムは、二重のガラス間に室内空気を通して熱負荷を低減する方式である。ガラス間にブラインドを内蔵するとさらに効果がある。一般に、夏期における室内温熱環境の改善に有効で、冬期におけるコールドドラフトの防止にも効果が期待される。
〔H22 No.17〕建築の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.パーソナルスペースは、人の身体を囲んでいる心理的な領域のことであり、立位より平座位のほうが大きくなる。
2.オフィスランドスケープは、固定間仕切を使わず、ローパーティション・家具・植物等によって、適度なプライバシーを保った事務空間を形成することである。
3.コンバージョンは、既存建築物の用途変更・転用のことであり、都市部においては事務所ビルを集合住宅に改修した例もある。
4.劇場における舞台の上手は、客席から見て舞台の右側のことである。
解答 1:「パーソナル・スペース」とは,他者が自分に近づくことを許せる距離帯(心理的な縄張り)をいい、性別・年齢・姿勢(立位・座位)等によっても異なり、立位や椅子座位に比べて平座位のほうがその距離は小さくなる。
2.「オフィスランドスケープ」は、一般に、固定間仕切を使用せず、ローパーティション・家具・観葉植物などによって事務室のレイアウトを行う手法である。
3.コンバージョン(Conversion)とは、既存建築物の用途変更・転用のことである。用途を変更することで、その建築物の資産価値を再生することが目的である。都市部においては事務所ビルを集合住宅に改修した例もあり、歴史的建造物を商業施設とする場合もある。
4.舞台用語である「上手」と「下手」は、主に舞台の左右を区別するために使われる。 上手は「客席から見て右」、下手は「舞台から見て左」を示す。能や歌舞伎においては身分の高い者が上手におかれ、下手から入退場する。
〔H22 No.18〕建築物の設計・工事監理の契約に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.建築士法に定められた、設計又は工事監理の契約を締結する際に行う重要事項(業務の内容及びその履行に関する事項)の説明等は、管理建築士以外の建築士が行ってはならない。
2.建築設計業務、監理業務等の契約において、報酬の変更、再委託の条件、著作権の扱い、契約の解除等の諸条項については、通常、建築設計・監理等業務委託契約約款において示される。
3.工事監理者は、「工事と設計図書の照合及び確認」を行うに当たり、一般に、設計図書に定めのある方法による確認のほか、目視による確認、抽出による確認、工事施工者から提出された品質管理記録の確認等、確認対象工事に応じた合理的方法とすることができる。
4.建築士事務所の開設者が、その業務に関して請求することのできる報酬については、国土交通大臣がその基準を定めている。
解答 1:建築士法で定める重要事項の説明については、管理建築士のほか、当該建築士事務所に属する一級建築士も行うことができる(士法24条の7第1項)。
2.設計・監理の契約書のひな形である、四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」における内容には、例えば以下の事項が記載されている。
・著作権の扱い
・再委託の条件
・報酬に関すること
・契約の解除等
3.建築士は、工事監理を行う場合において、工事が設計図書のとおりに実施されていないと認めるときは、直ちに、工事施工者に対して、その旨を指摘し、当該工事を設計図書のとおりに実施するよう求め、当該工事施工者がこれに従わないときは、その旨を建築主に報告しなければならない(士法18条3項)。また、工事施工者の行う工事が工事請負契約の内容(設計図書に関する内容を除く。)に適合しているかについて、目視による確認、抽出による確認、工事施工者から提出される品質管理記録の確認等、確認対象工事に応じた合理的な方法により確認を行う(平成21年告示15号)。
4.「国土交通大臣は、中央建築士審査会の同意を得て、建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準を定めることができる。(士法25条)」これに基づき、平成21年国交省告示15号にその基準を定めている。
〔H22 No.19〕建築積算に関する次の記述のうち、建築工事建築数量積算研究会「建築数量積算基準」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.共通仮設は、仮設図面等に基づいて積み上げ計算するか、標準的な項目については適切な統計値により算出することができる。
2.鉄筋の所要数量は、その設計数量の4%割増しを標準とする。
3.仕上改修の計測・計算において、改修に必要な余幅の図示がある場合に限り、適切な余幅を加えて計測・計算することができる。
4.建築物の改修の撤去に伴う発生材の計測・計算については、設計図書に数量が明示されていないときは、関係法令に基づき品目ごとに分別し、「建築数量積算基準」の各章で定めた撤去数量とする。
解答 3:「仕上改修」とは、既存仕上げの撤去、除去と新設、補修を行うことを指す。この際に必要な余幅は図示によるものとし、図示がないときは、適切な余幅を加えて計測・計算する。
1.「共通仮設」とは、複数の工事種目に共通して使用する仮設であり、仮設図面に基づいて積み上げて計算するか(計画数量)、標準的な項目については適切な統計値により算出することができる。
2.鉄筋の所要数量は、その設計数量の4%割増を標準として算出する。(建築数量積算基準)
形鋼、鋼管及び平鋼ー5%
広幅平鋼及び鋼板(切板)ー3%
ボルト類ー4%
アンカーボルト類ー0%
デッキプレートー5%
4.建築物の改修の撤去に伴う発生剤の計測・計算については、設計図書に数量に明示されている場合はその数量による。ただし、設計図書に数量が明示されていないときは、関係法令に基づき分別し、「建築数量積算基準」の各章で定めた撤去数量とする。
〔H22 No.20〕プロジェクトマネジメントに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.プロジェクトのスケジュール管理のためには、クリティカルパスを見極め、重点的に管理することが有効である。
2.性能発注方式は、一般に、設計者が施工候補者に一定の性能基準を提示した上で、技術提案を求めて施工者を選定する発注方式である。
3.プロジェクトの内容の確定度が低い設計初期段階では、VE(バリューエンジニアリング)の効果は低い。
4.フィージビリテイスタディは、計画されている内容について、都市計画等の上位計画との整合性、技術的課題、採算性等、多面的に実現の可能性を検討するものである。
解答 3:「VE(バリューエンジニアリング)提案:価値工学」は、工事費の低減提案や施工技術の研究と導入提案等であるが、企画・設計段階から施工段階まで幅広く用いられている。設問の記述とは反して、むしろ早めの導入が望ましい。
1.クリティカル・パスは、建築プロジェクトの全工程をネットワーク図で表し、線で結んだ時に最小となる経路のこと。マスタースケジュールに記載されるうちの一つ。
2.「性能発注方式」とは、発注者が要求した品質やコスト、期間で実現できるように、発注条件を整理・指定してから発注をかける方式のこと。 建物の形状や具体的な機器、材料までは決めずに、建物や設備がどのような能力を発揮すべきかという「性能」から条件を設定する。 これによって、コストや工期が計画から大きく外れることを予防する。例えば、シックハウス対策で換気扇の性能を「壁付け換気扇」「必要換気量が171㎥/h必要である」と指定すると、施工者はその条件を満たす機器を選択して設置する。
4.「フィージビリティ・スタディ」とは、実現可能性調査と和訳され、計画されている内容が実現可能か、実施することに意義や妥当性があるかを多角的に、また事業経営の面からも調査・検討する作業である。計画前の予備調査、または都市計画などの上位計画との整合性、技術的課題、採算性などが調査対象となる。
1級建築士の学科対策
・イラストでわかる一級建築士用語集
・1級建築士 学科試験 要点チェック