平成21年度1級建築士-学科Ⅳ構造

建築士過去問解説

一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)

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〔H21 No.01〕図-1のような断面で同一材質からなる梁A及びBに、一点鎖線を中立軸とする曲げモーメントのみが作用している。これらの断面の降伏開始曲げモーメントをMy、全塑性モーメントをMpとするとき、断面内の応力度分布が図-2に示す状態である。梁A及びBにおけるMpとMyの比α=Mp/MyをそれぞれαA、αBとするとき、その大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、降伏応力度はσyとする。

1.αA>αB>1
2.αB>αA>1
3.1>αA>αB
4.1>αB>αA

解答 1:降伏開始曲げモーメントMyは、以下の式で求められる。
M= 降伏応力度(σy)×断面係数(Z)
また全塑性モーメント(MP)は、引張圧縮合力(ΣP)×応力中心距離(l)であり、断面係数は、Z = bh2/6 = IB/2aであるから、
MyAy×ZAy×(bh2/6)=σy(3a×4a×4a/6)=8a3σy
MyBy×ZBy×(IB/2a)
      =σy×{(3a×4a×4a×4a)/12-(a×2a×2a×2a)×2/12)}/2a
      =(22a3/3)σy
ブロック解法にてMPAとMPBを求めると、
MPA=(2a×3a×σy)×2a
      =12a3σy
MPB=(3a×a×σy)×3a + (a×a×σy)×a
      =10a3σy
よって、
α= MPA/MyA =12a3σy/8a3σy=3/2
α= MPB/MyB =10a3σy/(22a3/3)σy=30/22
ゆえに、α>1

〔H21 No.02〕図のような断面をもつ片持ち梁A及びBの先端に荷重Pが作用したとき、曲げによる最大たわみδA及びδBが生じている。梁AとBの最大たわみの比δA/Bの値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、梁A及びBは同一材質とする。

1.2
2.4
3.8
4.16

解答 2:集中荷重が作用する片持ち梁の弾性たわみδは、
δ = (1/3)・(Pl3/EI)
で求められる。題意より、荷重はP、ヤング係数はE、スパンは等しくl、1/3は定数である。これより、上の式は以下のように省略して比較することができる。
δ’ = 1/I
①片持ち梁Aの断面二次モーメントIA
IA = {2a × (a)3}/12 = 2a4/12
よって、δ= 1/IA = 12/2a4
②片持ち梁Bの断面二次モーメントIB
IB = {a × (2a)3}/12 = 8a4/12
よって、δ= 1/IB = 12/8a4
以上より、δA/B = δAB = (1/2) / (1/8) = 4 (選択肢2)

〔H21 No.03〕図のような荷重を受ける3ヒンジラーメンにおいて、A点における曲げモーメントの大きさとして、正しいものは、次のうちどれか。

1.2 Pl
2.4 Pl
3.14 Pl
4.28 Pl

解答 3:3ヒンジラーメン構造であるため、反力を求めるためには4つの式が必要になる。ここでは(ⅰ)ΣX=0、(ⅱ)ΣY=0、(ⅲ)ΣM=0の3つの釣り合い式および、(ⅳ)O点の右側の曲げモーメントの合計の式から求める。
(ⅰ)ΣX = 0
⇔ H1 + H2 + 10P = 0・・・①
(ⅱ)ΣY = 0
⇔ R1 + R2 – 15P = 0・・・② 
(ⅲ)ΣM1= 0
⇔ 15P×2l – 10P×l + H2×l – R2×3l = 0
⇔ H2 – 3R+ 20P = 0・・・③
(ⅳ)ΣM0(右)= 0
⇔ 2H2 – R2 = 0
⇔ R2 = 2H2・・・④

④を③に代入し、
H2 + 3(-2H2)+ 20P = 0
⇔ -5H2 = -20P
⇔ H2 = 4P(左向き)・・・⑤
⑤を①に代入し、
H1 + (4P) + 10P = 0
⇔ H1 = -14P(右向き)・・・⑥
⑤を④に代入し、
R2 = 2(4P) = 8P・・・⑦
⑦を②に代入し、
R1 + (8P) – 15P = 0
R1 = 7P・・・⑧
次にA点に生じる曲げモーメントMAの絶対値を求める。この時、点Aから左下を見る(上図を参照)。
MA = – H1×l 
      = – 14P  × l
      = – 14Pl
よって、その絶対値は 14Pl となる

(関連問題:平成24年1級学科4、No.02平成22年1級学科4、No.04令和元年2級学科3、No.04平成29年2級学科3、No.04平成28年2級学科3、No.04平成27年2級学科3、No.04平成26年2級学科3、No.04平成25年2級学科3、No.03平成24年2級学科3、No.05平成23年2級学科3、No.05平成21年2級学科3、No.05)

〔H21 No.04〕図のような水平力が作用する三層構造物において、各層の層間変位が等しくなるときの各層の水平剛性K1、K2、K3の比として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、梁は剛とし、柱の伸縮はないものとする。

解答 4:「層間変位(σ)」は各層に作用する層せん断力(Q)に柔性を乗じて求められる。また「柔性」は水平剛性(K)の逆数である。このため、以下のような式になる。
σ=Q×(1/K)
⇔K=Q/σ

「層せん断力(Q)」はその層より上部に作用する水平力の和であるため、
3層の層せん断力Q3=4P
2層の層せん断力Q2=3P+4P=7P
1層の層せん断力Q1=2P+3P+4P=9P

題意より各層の層間変位(σ)は等しいので、各層の水平剛性は、
K1:K2:K3= Q1:Q2:Q3= 9P:7P:4P

〔H21 No.05〕図のような鉛直荷重Pを受けるトラスA、B、Cにおいて、それぞれのローラー支持点の水平変位δA、δB、δCの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、各部材は同一材質とし、斜材の断面積はそれぞれa、2a、3aとし、水平材の断面積はいずれもaとする。

1.δABC
2.δABC
3.δBCA
4.δCBA

解答 4:トラスの軸力を算定し、それぞれのひずみを比較する。これらの架構において、水平方向の変位に影響を与える部材は横架構のみである。上の示力図より、それぞれの横架構の軸方向力は、反力はそれぞれ同じ大きさである。そのためNA2、NB2、NC2の大きさは、

NA2 < NB2 < NC2


となり、横架材は等質等断面であることから、

δ< δ< δC

〔H21 No.06〕図のような支持条件及び断面で同一材質からなる柱A、B、Cにおいて、中心圧縮の弾性座屈荷重の理論値PA、PB、PCの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、図中における寸法の単位はcmとする。

1.PA>PC>PB
2.PB>PA>PC
3.PB>PC>PA
4.PC>PA>PB

解答 1:弾性座屈荷重(Pe)は、以下の式で求めることができる。

Pe2EI/lk2

(E:ヤング係数、I:断面二次モーメント、lk:座屈長さ)
題意より、柱A、B、C、Dは、材長が同じlで、材質が同じであることからヤング係数Eも同じ、座屈長さlklとなる(下表を参考)。以上から、弾性座屈係数PA、PB、PCの大小関係は、断面二次モーメントで比較できる。
さて、その断面二次モーメントはそれぞれ以下のように計算される。
IyA = (10×303/12)×2 + (15×103/12)
     = (555×103) /12
IyB = (10×203/12)×2 + (35×103/12)
     = (195×103) /12
IyC = (37.5×203/12)
     = (300×103) /12
それぞれを比較すると、
IyA > IyC >IyB となり、PA > PC > PB 。

〔H21 No.07〕建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.風圧力を算出する場合の基準風速V0は、地方の区分に応じて規定されている。
2.多雪区域ではない地域において、暴風時又は地震時の荷重を、積雪荷重と組み合わせる必要はない。
3.多雪区域内において、長期積雪荷重は、短期積雪荷重の0.7倍の数値とする。
4.沖積層の深さが35mの軟弱な第三種地盤の地盤周期TCは、0.2秒以下である。

解答 4:地盤の種別は3種あり、そのうち第三種地盤は沖積層で、その深さが30m以上の地盤である。設問は「沖積層の深さが35m」であるので第三種地盤であるのは間違いない。しかし、その地盤周期は0.8秒程度であるので不適当。また、第一種地盤は0.4秒、第二種地盤は0.6秒程度。
建物の固有周期がこの地盤周期を超えると、振動特性係数は小さくなっていくので、軟弱な地盤であれば地盤周期は長くなり、振動特性は硬い地盤に比べて大きい。
(関連問題:平成29年1級学科4、No.07平成27年1級学科4、No.07平成25年1級学科4、No.08平成24年1級学科4、No.08平成20年1級学科3、No.09平成元年2級学科3、No.07平成28年2級学科3、No.08)

〔H21 No.08〕建築基準法における建築物に作用する地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.鉄筋コンクリート造の保有水平耐力計算を行う場合の地上部分の地震力は、標準せん断力係数C0が「0.2以上の場合」と「1.0以上の場合」の2段階の検討をする。
2.鉄骨造の地震力を算定する場合に用いる建築物の設計用一次固有周期T(単位 秒)は、特別な調査又は研究の結果に基づかない場合、建築物の高さ(単位 m)に0.03を乗じて算出することができる。
3.建築物の固有周期が長い場合や地震地域係数Zが小さい場合には、地震層せん断力係数Ci、標準せん断力係数C0より小さくなる場合がある。
4.地震地域係数Zは、過去の地震の記録等に基づき、1.0から1.5までの範囲で、建設地ごとに定められている。

解答 4:地震地域係数Zは、過去の地震の記録等に基づき、1.0から0.7までの範囲で定められている。ちなみに0.7は沖縄のみに設定されている。(自治体の条例により、1.2と定めている地域もある。)

〔H21 No.09〕木造2階建ての建築物において、軸組に下表のA仕様、B仕様、C仕様又はD仕様のものを組み合わせて用いた場合、建築基準法に基づく軸組の倍率として、誤っているものは、次のうちどれか。

1.内部にA仕様の筋かいをたすき掛けとしたもの———-3.0
2.内部にB仕様の筋かいをたすき掛けとしたもの———-6.0
3.片面にC仕様、他面にD仕様、内部にA仕様を用いたもの—-4.9
4.両面にD仕様、内部にB仕様を用いたもの————-—-4.8

解答 2:筋交いの壁倍率は、以下のポイントを暗記する。
ポイント1.面材と筋交いを併用する場合は、それぞれの倍率の和。
ポイント2.面材を両側につけると、倍率は2倍。
ポイント3.倍率の和は「5」を限度とする。
ポイント4.筋交いの倍率と面材の倍率は絶対暗記!!

まず、すぐに見て判断できるのが「ポイント3」。これにより、選択肢2が誤りであることがわかる。
(関連問題:平成29年1級学科4、No.09平成27年2級学科3、No.11)

〔H21 No.10〕木造2階建ての建築物において、建築基準法に基づく「木造建築物の軸組の設置の基準」に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.各階につき、張り間方向及びけた行方向の偏心率が0.3以下であることを確認した場合を除き、「木造建築物の軸組の設置の基準」に従って軸組を設置しなければならない。
2.図-1のような不整形な平面形状において、側端部分は、建築物の両端(最外緑)より1/4の部分(四角部分)である。
3.張り間方向及びけた行方向の側端部分の壁量充足率が1以下の場合には、建築物全体の耐力が十分に確保されているので、壁率比の確認は省略することができる。
4.図-2のような建築物の1階側端部分の必要壁量は、「aの部分は2階建ての1階」とし、「bの部分は平家建て」として算出する。

解答 3:「壁量充足率」は、存在壁量を必要壁量で割った値である。それぞれの「1」を超える場合、その時点で計算は終了する。しかし、「1」を下回る場合、各階の各方向ごとに「壁率比」を求め、0.5以上であることを確認する必要がある。また、この壁率比は、壁量充足率の「小さい値」を「大きい値で」除した数値である。(関連問題:令和02年1級学科4、No.09平成26年1級学科4、No.10平成22年1級学科4、No.10)

〔H21 No.11〕図に示す開口を有する鉄筋コンクリート造の壁部材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.式①を用いて算定した値が0.4以下であるので、開口のある耐力壁とみなす。
2.一次設計時に用いるせん断剛性の低減率を、式②を用いて算定する。
3.一次設計時に用いる許容せん断耐力の低減率を、式①、②及び③のうち最小値を用いて算定する。
4.開口補強筋の量は開口の大きさを考慮して算定し、開口補強筋はD13以上、かつ、壁筋と同径以上の鉄筋を用いる。

解答 3:一次設計時に用いる許容せん断耐力の低減率は、式③を用いて算定する。 
(関連問題:平成30年1級学科4、No.13平成29年2級学科3、No.14)

〔H21 No.12〕鉄筋コンクリート造の柱部材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地震時に大きな変動軸力が作用する外柱の曲げ耐力及びじんせい能は、変動軸力が少ない同断面・同一配筋の内柱と同等である。
2.柱と一体的に挙動する袖壁部分で、袖壁の厚さを150mm以上、壁筋を複配筋及びせん断補強筋比を0.4%以上としたものは、柱とともに地震に対して有効な構造部材とみなすことができる。
3.柱の許容曲げモーメントは、「圧縮縁がコンクリートの許容圧縮応力度に達したとき」、「圧縮鉄筋が許容圧縮応力度に達したとき」及び「引張鉄筋が許容引張応力度に達したとき」に対して算定した曲げモーメントのうちの最小値である。
4.他の層と比べて剛性・強度が低い層は、大地震時に大きな変形が集中するがあるので、当該層の柱には十分な強度及びじんせいを確保する必要がある。

解答 1:(前置き:地震時の柱の軸方向力の変動は、一般に、内柱より外柱のほうが大きくなり、曲げ耐力も大きくなる。 これは、2つの外柱に挟まれた内柱は、両側の外柱の軸方向力(せん断力)に打ち消されるためである。)
一般に、柱は負担している軸方向圧縮力が大きくなると、変形能力が低下し、粘りのない脆弱的な破壊が生じやすくなる。なので、じん性は内柱の方が大きくなる。
また、曲げ耐力は、軸方向圧縮力の増加に伴い増加するが、ある程度以上に軸方向圧縮力が増すと減少する。これにより、必ずしも、内柱より外柱のほうが曲げ耐力が大きくなるものではない。
(関連問題:平成26年1級学科4、No.25)

〔H21 No.13〕鉄筋コンクリート構造の部材の剛性に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地震力作用時における層間変形の算定時において、耐力壁脚部における地盤の鉛直方向の変形が大きい場合、耐力壁脚部に鉛直バネを設けた検討を行った。
2.一次設計の応力算定において、スラブ付き梁部材の曲げ剛性として、スラブの協力幅を考慮したT形断面部材の値を用いた。
3.柱部材の曲げ剛性の算定において、断面二次モーメントはコンクリート断面を用い、ヤング係数はコンクリートと鉄筋の平均値を用いた。
4.床を支持する小梁には、過大なを防止するために、十分な曲げ剛性を確保した。

解答 3:一般に、柱部材の曲げ剛性の算定においては、鉄筋の影響を無視して算定する。しかし、鉄筋の影響を考慮する場合は「等価置換断面2次モーメント」を用いて算定する。この「等価置換断面2次モーメント」は、鉄筋の断面をヤング係数比のn倍の断面に置き換えたものなので、設問の「平均値」を用いるものではない。

〔H21 No.14〕鉄筋コンクリート構造の部材のじんせいや破壊形式に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.純ラーメン部分の柱梁接合部内において、柱梁接合部のせん断強度を高めるために、帯筋量を増やした。
2.柱部材のぜい性破壊である付着割裂破壊を避けるため、断面隅角部に細径の鉄筋を配置した。
3.曲げ降伏する耐力壁のじんせいを高めるため、断面内の圧縮部分に当たる側柱のせん断補強筋を増やした。
4.曲げ降伏する梁部材について、曲げ降伏後のせん断破壊を避けるため、曲げ強度に対するせん断強度の比を大きくした。

解答 1:柱の帯筋は、せん断補強筋としての強度が期待されるが、柱梁接合部材においてはその効果がほとんど期待されない。ただし、柱梁接合部の帯筋比は、0.2以上で、補強筋比は1.5ピッチ以下と規定している。(鉄筋コンクリート構造計算規準)
(関連問題:令和元年1級学科4、No.11平成24年1級学科4、No.13平成28年1級学科4、No.12平成29年2級学科3、No.14平成25年2級学科3、No.15平成20年2級学科3、No.15)

〔H21 No.15〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.弱軸まわりに曲げを受けるH形鋼の許容曲げ応力度は、幅厚比の制限に従う場合、許容引張応力度と同じ値とすることができる。
2.SN490材の許容引張応力度は、板厚による影響を受けないので、板厚25mmと50mmとでは同じ値である。
3.F10Tの高力ボルト摩擦接合において、使用する高力ボルトが同一径の場合、1面摩擦接合4本締めの許容せん断耐力は、2面摩擦接合2本締めの場合と同じ値である。
4.高力ボルト摩擦接合部(浮きさびを除去した赤さび面)の1面せん断の短期許容せん断応力度は、高力ボルトの基準張力の0.45倍である。

解答 2:構造用鋼材は、板厚によってその許容応力度が変わってくる。
構造用鋼材の許容応力度は、以下のように定められる(建築基準法施行令第90条)。このFの値は40mmを基準として板厚によって定められている。(関連問題:令和元年1級学科4、No.29平成29年1級学科4、No.29)

〔H21 No.16〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.柱・梁に使用する材料をSN400BからSN490Bに変更したので、幅厚比の制限値を大きくした。
2.軸方向力と曲げモーメントが作用する露出型柱脚の設計においてベースプレートの大きさを断面寸法とする鉄筋コンクリート柱と仮定して、引張側アンカーボルトを鉄筋とみなして許容応力度設計を行った。
3.H型断面の梁において、横座屈を生じないようにするために、この梁に直交する小梁の本数を増やした。
4.骨組のじんせいを高めるため、塑性化が予想される部位に降伏比の小さい材料を使用した。

解答 1:柱・梁の「幅厚比の制限」は、断面形状に関わらず、「材料の基準強度(F)」に反比例する。この時、下の表から、SN400とSN490では、SN490の方が基準強度が大きくなるので、幅厚比の制限値は小さくなる。(関連問題:平成26年1級学科4、No.17)

〔H21 No.17〕図は鋼板の突合せ溶接(完全溶込み溶接)を模式的に表したものである。次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.図の溶接金属は、溶接材料から溶接部に移行した溶着金属と溶接部の中で母材が溶融した部分からなる。
2.図の(a)の部分は、熱影響部といい、溶接などの熱で組織、きん的性質、機械的性質などが変化を生じた、溶融していない母材の部分である。
3.図に示した方法の溶接部の許容引張応力度は、鋼種に応じた溶接材料を用いた場合、母材の許容引張応力度と同じとすることができる。
4.図の溶接方法のJISにおける記号表示は、のように表される。

解答 4:溶接記号表示は、矢印・基線・尾の三線からなり、開先形状は基線に記入する。U字突合せ溶接は以下の通り。設問は隅肉溶接の溶接記号である。

U字突合せ溶接

〔H21 No.18〕鉄骨構造の筋かいに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.山形鋼を用いた筋かいの有効断面積の計算においては、筋かいの断面積からファスナー孔による欠損部分及び突出脚の無効部分の断面積を差し引いて求める。
2.座屈拘束ブレースは、軸力材(芯材)の外側を座屈拘束材で囲むことにより軸カ材の座屈による強度低下が防止されており、塑性変形能力に優れた筋かいである。
3.引張力を負担する筋かいの設計において、筋かいのじんせいを確保するため、その降伏耐力は、接合部の破断耐力に比べて大きくする必要がある。
4.細長比の大きい部材を筋かいに用いる場合、筋かいは引張力に対してのみ有効な引張筋かいとして設計する。

解答 3:筋かいにおいて、軸部が引張降伏点に達した後、破断点に到るまでの塑性変形によって地震エネルギーを吸収する必要がある。そのため、端部及び接合部の破断耐力は、軸部の降伏耐力よりも大きく(1.2倍以上)する必要がある。
(関連問題:令和元年1級学科4、No.16平成29年1級学科4、No.15平成25年1級学科4、No.19)

〔H21 No.19〕鉄骨鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.鉛直荷重を受ける架構の応力及び変形の計算は、一般に、鉄筋コンクリート構造の場合と同様に行うことができる。
2.柱の短期荷重時のせん断力に対する検討に当たっては、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の許容せん断耐力の和が、設計用せん断力を下回らないものとする。
3.柱梁接合部における帯筋は、一般に、鉄骨梁ウェブを貫通させて配筋する。
4.梁に設けることができる貫通孔の径は、鉄筋コンクリート構造に比べて、鉄骨部材に適切に補強を施すことにより、大きくすることができる。

解答 2:設問の「鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分の許容せん断耐力の和」は、累加強度式といい、せん断力に対する算定では用いない。鉄骨部分とRC部分の設計せん断力を別々で算定し、それぞれの短期許容せん断力以下であることを検討する。
(関連問題:平成28年1級学科4、No.14平成27年1級学科4、No.23平成24年1級学科4、No.19平成23年1級学科4、No.19)

〔H21 No.20〕建築構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.プレストレストコンクリート部材に導入されたプレストレス力は、コンクリートのクリープやPC鋼材のリラクセーション等により、時間の経過とともに減少する。
2.同一架構において、プレストレストコンクリート部材と鉄筋コンクリート部材とを併用することができる。
3.地上4階建ての壁式鉄筋コンクリート構造において、許容応力度計算による検討を行う場合、4階の耐力壁のせん断補強筋比は、0.1%とすることができる。
4.壁式鉄筋コンクリート構造において、耐力壁に使用するコンクリートの設計基準強度を 18N/mm2から24N/mm2に変更すると、必要となる壁量を減じることができる。

解答 3:地上4階建ての壁式鉄筋コンクリート構造なので、下の表から0.20%となる。

〔H21 No.21〕地盤及び基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地下外壁に作用する土圧は、地表面に等分布荷重が作用する場合、一般に、「地表面荷重がない場合の土圧」に「地表面の等分布荷重に静止土圧係数を乗じた値」を加えたものとする。
2.地盤の許容支持力度は、標準貫入試験のN値が同じ場合、一般に、砂質地盤より粘土質地盤のほうが大きい。
3.軟弱地盤の下部に良質な支持層のある敷地において、支持層に達する支持杭を採用する場合には負の摩擦力を考慮し、軟弱地盤中の摩擦杭を採用する場合には負の摩擦力を考慮しなくてもよい。
4.基礎の極限鉛直支持力は、傾斜地盤上部の近傍の水平地盤に基礎がある場合、斜面の角度、斜面の高さ、法肩からの距離に影響を受けるので、一般の水平地盤に基礎がある場合に比べて大きくなる。

解答 4:「極限鉛直支持力」とは、極めて稀に発生する地震(数百年に1度の頻度)における杭の鉛直方向の最大支持力のことである。傾斜地盤上部の近くに基礎がある場合は、滑りや様々な要因により、一般に極限鉛直支持力は低下する。
(関連問題:平成25年1級学科1、No.23平成22年1級学科4、No.21平成20年1級学科3、No.07)

〔H21 No.22〕地盤及び基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地盤の液状化は、地表面から約20m以内の深さの沖積層で地下水位以下の緩い細砂層に生じやすい。
2.地盤沈下の生じる原因としては、地下水の過剰な揚水や埋立てによる下部地盤の圧縮等がある。
3.直接基礎は、地震時の上部構造からの水平力に対し、液状化などの地盤破壊がなく、かつ、偏土圧等の水平力が作用していなければ、基礎底面と地盤との摩擦により抵抗できると考えられる。
4.同一工法の杭基礎を用いる建築物において、杭の径のみが異なる場合、地震時の水平力に対し、杭頭固定曲げモーメントは、径が小さい杭ほど大きくなる。

解答 4:杭頭固定曲げモーメントは、負担する水平力と比例する。また、杭径が大きいほど、曲げ剛性が大きくなり、負担する水平力は大きくなる。これより、杭頭固定曲げモーメントは、径が小さい杭ほど小さくなる。
(関連問題:平成23年1級学科4、No.22)

〔H21 No.23〕基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.直接基礎と杭基礎を併用する場合には、それぞれの基礎の鉛直・水平方向の支持特性と変形特性を適切に評価する。
2.水平力が作用する杭基礎において、地震時に液状化する可能性がある地盤では、水平地盤反力係数を低減して、杭の水平力に対する検討を行う。
3.軟弱地盤において良好な支持地盤が深く、支持杭基礎工法によると極端に費用が高くなる場合、地盤改良又は摩擦杭を用いることを検討する。
4.直接基礎及び杭基礎の長期許容支持力Raは、基礎の材料の許容応力度以下の範囲で、地盤の破壊に基づく極限支持力Ruの2/3以下とする。

解答 4:直接基礎及び杭基礎の許容支持力Raは、
長期の場合、Ra ≦ 1/3 Ru
短期の場合、Ra ≦ 2/3 Ru
設問は長期の場合の許容支持力なので、1/3 Ru となる。

〔H21 No.24〕建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.地上6階建ての建築物(1階が鉄骨鉄筋コンクリート造、2階以上が鉄骨造)の構造計算において、2階以上の部分の必要保有水平耐力を、鉄骨造の構造特性係数DSを用いて計算した。
2.高さ25mの鉄骨鉄筋コンクリート造、地上6階建ての建築物の構造計算において、塔状比が4.9であり、剛性率及び偏心率の規定値を満足していたので、許容応力度等計算により安全性の確認を行った。
3.高さ30m、鉄骨鉄筋コンクリート造、地上7階建ての建築物において、外壁から突出する部分の長さ2.5mの鉄筋コンクリート造の片持ち階段について、その部分の鉛直震度を1.0Z(地震地域係数)として、本体への接続部も含めて安全性の検証を行った。
4.高さ30m、鉄骨鉄筋コンクリート造、地上7階建ての建築物において、3階の耐力壁の量が4階に比べて少ない計画とする必要があったので、3階の耐力壁の取り付かない単独柱については、曲げ降伏先行となるようにせん断耐力を高めた。

解答 2:設問文「高さ25m、鉄骨鉄筋コンクリート造、地上6階建ての建築物」の場合、許容応力度等計算(ルート2)とすることができる。しかし、設問文「塔状比が4.9」以下である場合、許容応力度等計算(ルート2)ではなく、保有水平耐力計算(ルート3)とする。告示(昭和55)第1791号
(関連問題:平成20年1級学科3、No.13)

〔H21 No.25〕建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.上下層で連続する耐力壁の全高さと幅の比(全高さ/幅)が大きい場合、耐力壁の項部を剛性の高い梁で外周の柱とつなぐことによって、一般に、地震時にその耐力壁が負担する地震力の割合を高める効果がある。
2.積層ゴムアイソレータを用いた基礎免震構造は、地震時において建築物に作用する水平力を小さくすることはできるが、地盤と建築物の間の相対変位は大きくなる。
3.地震時に建築物に生じるを抑制するためには、重心と剛心の位置が変わらない限り、耐力壁等の耐震要素を建築物の外周部に分散して配置するより、同量の耐震要素を平面の中心部に集中して配置したほうが有効である。
4.制振構造に用いられる鋼材や鉛などの履歴減衰型の制振部材は、履歴エネルギー吸収能力を利用するものであり、大地震時に小さな層間変形から当該部分を塑性化させることが有効である。

解答 3:地震時に建築物のねじれへの耐性を「ねじり剛性」という。ねじり剛性が大きいほど、ねじれに対する抵抗能力が大きく、ねじれに対して強い建築物といえる。このねじり剛性を大きくするには、耐震要素を外周部に分散し、バランスよく偏心が少なくなるように配慮する。
(関連問題:平成22年1級学科4、No.25)

〔H21 No.26〕建築物の構造計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.長い杭により支持される建築物の計画において、地下室を設けることは、一般に、杭の鉛直支持力に対する安全性を低下させるので好ましくない。
2.鉄骨造の多層骨組の建築物において、床を鉄筋コンクリートスラブとした場合には、一般に、各骨組に水平力を伝達するために、床スラブとこれを支持する鉄骨梁をシアコネクター等で緊結する必要がある。
3.梁が鉄骨造で柱が鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物を計画する場合は、一般に、柱鉄骨の曲げ終局強度が、梁鉄骨の曲げ終局強度に比べて著しく小さくならないように計画し、柱梁接合部における円滑な力の伝達を図る必要がある。
4.コンクリート充てん鋼管(CFT)構造の柱においては、外周の鋼材による拘束(コンファインド)効果により、一定の要件を満足すれば、充てんコンクリートの圧縮強度を、通常の鉄筋コンクリート造の場合よりも高く評価することができる。

解答 1:地下室を設けることで、支持杭の長さは短くなる。杭の長さが短ければ杭の建て入れ精度が高まり、また鉛直支持力に対する安全性についても影響は小さい。また、設問文に「長い杭」と記述されているので、地下に対しての影響はないと考える。

〔H21 No.27〕木材に関する次の記述のうち、最も不逓当なものはどれか。

1.木表は、木裏に比べて乾燥収縮が大きいので、木表側が凹に反る性質がある。
2.防腐剤を加圧注入した防腐処理材であっても、仕口や継手の加工が行われた部分については、再度、防腐処理を行う。
3.木材の繊維方向の材料強度は、一般に、圧縮強度より引張強度のほうが大きい。
4.含水率が繊維飽和点以下の木材の伸縮率は、含水率が小さくなるほど小さくなる。

解答 3:「木材の繊維方向の材料強度」は一般的に、以下の通りになる。
曲げ > 圧縮 > 引張 > せん断
これより、引張強度よりも圧縮強度の方が大きい。
(関連問題:平成26年1級学科4、No.27平成24年1級学科4、No.27平成23年1級学科4、No.27)

〔H21 No.28〕コンクリート強度に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.セメントの粒子が大きいものほど、コンクリートの初期強度の発現が早くなる。
2.コンクリートの硬化初期の期間中に水分が不足すると、セメントの水和反応に必要な水分が不足し、コンクリートの強度発現に支障をきたす。
3.コンクリートの硬化初期の期間中にコンクリートの温度が2℃を下回ると、コンクリートの強度発現が遅延する。
4.コンクリートは、気中養生したものより、水中養生したもののほうが、強度の増進が期待できる。

解答 1:セメントの粒子が細かいほど、表面積が大きくなり、水和作用が早くなるため、初期強度の発現は早くなる。
(関連問題:平成29年1級学科4、No.28)

〔H21 No.29〕金属材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.鋼材に含まれる化学成分におけるP(リン)やS(硫黄)は、一般に、鋼材のじんせいに悪影響を与える。
2.建築構造用ステンレス鋼(SUS304)のヤング係数は、アルミニウム合金に比べて小さい。
3.建築構造用耐火鋼(FR鋼)は、高温時の耐火性に優れており、600℃における降伏点が常温規格値の2/3以上あることを保証した鋼材である。
4.SN490B(板厚12mm以上)は、引張強さの下限値が490N/m2であり、「降伏点又は耐力」の上限値及び下限値が定められている。

解答 2:「ヤング係数」とは、材料の固さを表す指標の1つで、ヤング係数が大きければ部材は固く、小さければ部材は柔らかい。SUS304のヤング係数は1.93×105N/mm2で、アルミニウムは0.68×105N/mm2なので、SUS304のヤング係数の方が大きい。

〔H21 No.30〕次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

1.「限界耐力計算」においては、積雪、暴風及び地震のすべてに対して、極めて稀に発生する荷重・外力について建築物が倒壊・崩壊しないことをそれぞれ検証することが求められている。
2.「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく「日本住宅性能表示基準」に規定される「耐震等級」において、等級1は、等級2に比べて、より大きな地震力に対して所定の性能を有していることを表示するものである。
3.高炉スラグを利用した高炉セメントを構造体コンクリートに用いることは、再生品の利用によって環境に配慮した建築物を実現することにつながる。
4.免震建築物が所期の性能を発揮する上で、免震層が正常に機能するように維持管理することは重要であるので、設計者は建築物の管理者に対して、このことを認識するように説明を行う必要がある。

解答 2:「住宅の品質確保の促進等に関する法律」において、耐震等級(損傷等級・倒壊防止共通)は等級1から等級3まで区分されている。
等級1:極めて稀に発生する地震力に対して
等級2:極めて稀に発生する地震力の1.25倍に対して
等級3:極めて稀に発生する地震力の1.50倍に対して
つまり、等級数が大きくなるにつれ、より大きな地震力に対して耐力が大きい。
(関連問題:平成29年1級学科4、No.30平成26年1級学科4、No.30)

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投稿日:2019年8月1日 更新日:

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