
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔H20 No.01〕図のような断面A、B、CのX軸に関する断面二次モーメントをそれぞれIA、IB、ICとしたとき、それらの大小関係として、正しいものは、次のうちどれか。
1.IA>IB>IC
2.IA>IC>IB
3.IB>IA>IC
4.IB>IC>IA
5.IC>IA>IB
解答 4:長方形の断面二次モーメントは I = bh3/12、円(直径D)の断面二次モーメントは、 I =πD4/64 である。また断面Bは以下の図のように求める。IxA = {a×(2a)3}/12 = 8a4/12 = 0.67a4
IxB = {2a×(2a)3}/12 – (a×a3)/12
= (16a4 – a4)/12 = 15a4/12 = 1.25a4
IxC = π×(2a)4/64 = 3.14×16a4/64 = 0.785a4
よって、IxB > IxC > IxA
〔H20 No.02〕図のような梁のA点及びB点にモーメントが作用している場合、C点に生じる曲げモーメントの大きさとして、正しいものは、次のうちどれか。
解答 5:下図のように反力を仮定する。ΣH = 0 ⇔ HD = 0
ΣV = 0 ⇔ RD + RE = 0
ΣMD = 0 ⇔ M – M – 6l×RE = 0
⇔ RE = 0
よってRE = 0次に上図のように点Cから左に注目し、MCを求める。
MC = M
〔H20 No.03〕図のような骨組に水平荷重100kNが作用したとき、部材BCの引張力Tは50kNであった。このとき、柱ABのA点における曲げモーメントの絶対値として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、梁は剛体とし、柱AB及びCDは等質等断面で伸縮はないものとする。
1.30.0 kN・m
2.37.5 kN・m
3.45.0 kN・m
4.60.0 kN・m
5.90.0 kN・m
解答 3:柱ABに生じるせん断力QABと、せん断力QABが作用する反曲点を定め、柱ABのA点における曲げモーメントMAを求める。
まず水平荷重100kNを、斜材(部材BC)が負担する水平荷重(1)を求め、次にラーメンが負担する水平荷重(柱のせん断力)(2)とに分けて考える。
(1)斜材(部材BC)が負担する水平荷重を求める。
部材BCには、引張力T=50kNが生じている。Tの水平方向分力が、部材BCが負担する水平荷重となる。
直角三角形の三角比(3:4:5)から、Tの水平方向分力(PTX)が得られる。
PTX(部材BCが負担する水平荷重)= 50kN×(4/5)=40kN
(2)ラーメン全体が負担する水平荷重(柱のせん断力)を求める。
ラーメンが負担する水平荷重=100kN-40kN=60kN
柱ABと柱BCは等質等断面であり、かつ柱頭および柱脚の条件が同じなので、それぞれの柱の負担水平荷重(せん断力)は、等しく、柱ABと柱CDに生じるせん断力QABとQCDは等分される
QAB=QCD=60kN×(1/2)=30kN
次に、柱ABのA点の曲げモーメントMAを求める。
梁は剛体であることから、剛接合の柱頭は回転拘束となる。また柱脚も固定なので、反曲点の位置は柱の真ん中となる。これより、柱ABのA点の曲げモーメントMAは、次のとおりである。
MA = QAB × (反曲点から柱頭までの距離)
= 30kN×3/2m = 45kN・m
〔H20 No.04〕図-1のようなラーメンに作用する荷重Pを増大させたとき、そのラーメンは図-2のような崩壊メカニズムを示した。ラーメンの崩壊荷重Puとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、柱、梁の全塑性モーメントをそれぞれ3Mp、2Mpとする。
解答 2:ラーメンの崩壊荷重は、「仮想仕事の原理」を応用し、崩壊荷重Puを外力(1)、全塑性モーメントMPを内力(2)として求める。このとき点B、点Cにおける角度をそれぞれXB、XCと置き、A点、B点、C点のひずみをσ1、σ2、σ3と置くと(上図)、
θ = σ1/2l ・・・①
⇔ σ1 = 2l・θ ・・・①’
XB = σ2/2l ・・・②
XC = σ3/l ・・・③
σ1=σ2=σ3 なので、①’を②と③に代入すると、
XB = σ2/2l = (2l・θ)/2l = θ
XC = σ3/l = (2l・θ)/l = 2θ
(1)外力による仕事W外
W外 = Pu × 2l × θ= 2Pul・θ
(2)内力による仕事W内
W内 = 3MP×θ + 2MP×θ + 3MP×θ + 3MP×θ + 2MP×2θ + 3MP×2θ
= 21MP・θ
W外 = W内なので、
2Pul・θ = 21MP・θ
⇔ Pu = 21MP / 2l
〔H20 No.05〕図のような荷重を受けるトラスにおいて、部材ABに生じる軸方向力として、正しいものは、次のうちどれか。ただし、軸方向力は、引張力を「+」、圧縮力を「-」とする。
1.-2√2 P
2.-√2 P
3.0
4.+ √2 P
5.+ 2√2 P
解答 5:下図のように切断し、切断法によって部材ABの軸方向力を求める。求める部材ABを含んでトラスを切断し、釣り合い条件から求める。(この問題の場合、片持ち系トラスなので、反力を求めなくても、自由端側のみで求めることができる。)
ΣMC = 0
⇔ -P×2l – 2P×l + NAB × √(2)l = 0
⇔ NAB × √(2)l = 4Pl
⇔ NAB = 4P/√2 = 2√2 P(引張力)
〔H20 No.06〕次の架構のうち、静定構造はどれか。
解答 4:静定構造物かどうかを判断するには、判別式を用いる。
m = n + s + r – 2k ( m = 0で静定)
n : 反力数
s : 部材数
r : ある節点において、1つの材に剛接合されている部材数
k:支点と節点の数(支点と節点が一点に集まっているときは、まとめて1つと数える)
1. m = 5 + 6 + 2 – 2・7 = -1 (不安定)
2.m = 3 + 4 + 0 – 2・4 = -1 (不安定)
3.m = 5 + 4 + 0 – 2・4 = +1 (安定で1次不静定)
4. m = 3 + 5 + 2 – 2・5 = 0 (安定で静定)
4.m = 4 + 3 + 2 – 2・4 = +1 (安定で1次不静定)
(関連問題:令和元年1級学科5、No.06)
〔H20 No.07〕土質及び地盤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.地盤の極限鉛直支持力は、一般に、土のせん断破壊が生じることにより決定される。
2.粘土質地盤の粘着力は、一軸圧縮強度により求めることができる。
3.砂質地盤の許容応力度の算定において、支持力係数は、内部摩擦角が小さくなるほど大きくなる。
4.ボーリング孔内水平載荷試験により、水平地盤反力係数を求めることができる。
5.スウェーデン式サウンディング試験により、原位置における土の硬軟、締まり具合又は土層の構成を判定するための静的貫入抵抗を求めることができる。
解答 3:砂質土地盤の許容応力度の算定に用いる「支持力係数」は、一般に、内部摩擦角が大きくなるほど大きくなる。(建築基礎構造設計指針)(関連問題:平成30年1級学科4、No.19)
〔H20 No.08〕建築基準法における荷重及び外力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.多雪区域外において、積雪荷重の計算に用いる積雪の単位荷重は、積雪量1cm当たり20N/m2以上とする。
2.垂直積雪量が1mを超える場合、雪下ろしの実況に応じて垂直積雪量を1mまで減らして積雪荷重を計算した建築物については、その出入口、主要な居室又はその他の見やすい場所に、その軽減の実況その他必要な事項を表示しなければならない。
3.風圧力の計算に用いる速度圧qは、その地方における基準風速V0の二乗に比例する。
4.店舗の売場に連絡する廊下の床の構造計算に用いる積載荷重は、実況に応じて計算しない場合、店舗の売場の床の積載荷重を用いることができる。
5.倉庫業を営む倉庫における床の構造計算に用いる積載荷重は、実況に応じて計算した数値が3,900N/m2未満であっても、3,900N/m2としなければならない。
解答 4:実況に応じて計算しない場合の積載荷重は、建築基準法施行令第85条1項の表による。教室に連絡する廊下や階段の積載荷重は、表(5)の「その他」の値を用いる。
(関連問題:平成30年1級学科4、No.08、平成27年1級学科4、No.08、平成22年1級学科4、No.07、平成19年1級、平成15年1級)
〔H20 No.09〕建築基準法における建築物に作用する地震力に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.地震層せん断力係数の建築物の高さ方向の分布を表す係数Aiを算出する場合の建築物の設計用一次固有周期Tは、振動特性係数Rtを算出する場合のTと同じとする。
2.地震層せん断力係数Ciは、建築物の設計用一次固有周期Tが1.0秒の場合、第一種地盤(硬質)の場合より第三種地盤(軟弱)の場合のほうが小さい。
3.建築物の設計用一次固有周期Tは、建築物の高さが等しければ、一般に、鉄筋コンクリート造より鉄骨造のほうが長い。
4.高さ30mの建築物の屋上から突出する高さ4mの塔屋に作用する水平震度は、地震地域係数Zに1.0以上の数値を乗じた値とすることができる。
5.地震地域係数Zが1.0、振動特性係数Rtが0.9、標準せん断力係数C0が0.2のとき、建築物の地上部分の最下層における地震層せん断力係数C1は0.18とすることができる。
解答 2:地震層せん断力係数(Ci)は、4つの数値を乗じて求められる。その4つの数値とは、①地震地域係数(Z)、②建築物の振動特性係数(Rt)、③標準せん断力係数(Co)、④地震層せん断力係数の高さ方向の分布係数(Ai)である。
①地震地域係数(Z)は定数であるため、本問では考慮しない。
②建築物の振動特性係数(Rt)は、設計用一次固有周期と関係があり(下図)、第3種地盤>第2種地盤>第1種地盤となる。そのため第一種地盤(硬質)より第三種地盤(軟弱)のときの振動特性係数は大きくなり、地震層せん断力係数は大きくなる。③標準せん断力係数(Co)は、0.2で定数、本問では考慮しない。
④地震層せん断力係数の高さ方向の分布係数(Ai)は、上階ほど、その層の重量が小さくなり、その揺れは大きくなる。逆に最下層において、Aiは1で一定となる。
よって、第一種地盤(硬質)より第三種地盤(軟弱)の方が地震層せん断力係数は大きくなる。
(関連問題:平成29年1級学科4、No.07、平成22年1級学科4、No.08)
〔H20 No.10〕図のような筋かいをもつ木造の軸組に水平力Pが作用するとき、アンカーボルトの位置A〜Hの組合せとして、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、図中の各部材の接合部には、必要な金物が使用されているものとする。
1.A、B、C、E、G、H
2.A、B、D、F、G、H
3.A、C、D、E、F、H
4.A、C、D、E、G、H
5.A、C、D、F、G、H
解答 2:アンカーボルトの埋設位置は、
・構造用合板を張った耐力壁の両端柱の下部付近
・筋かいの両端の、柱の下部に近接した位置(D、F)
・継手・仕口の、上木側の端部(B)
・枠組壁工法においては、2m以下の間隔で設ける
・在来軸組工法においては、2.7m以下の間隔で設ける(A、G、H)
〔H20 No.11〕図のような木造の在来軸組工法による平家建ての建築物(屋根は日本瓦葺とする。)において、建築基準法に基づく「木造建築物の軸組の設置の基準」による壁率比の組合せとして、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、図中の太線は耐力壁を示し、その倍率(壁倍率)は1とする。なお、壁率比は、壁量充足率の小さいほうを壁量充足率の大きいほうで除した数値である。
解答 5:解説はこちら→木造軸組設置基準に関する問題解説(1級H20年学科3No.11)
〔H20 No.12〕図に示す耐力壁を有する鉄筋コンクリート造の建築物の耐震設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.図-1に示す壁について、開口部の上端が上部梁に、下端が床版に接しているので、各階とも1枚の耐力壁として扱わなかった。
2.図-2に示す壁について、開口周比r0が0.4以下であることから無開口耐力壁のせん断剛性及びせん断耐力に、開口周比r0を乗じて低減を行った。
3.図-3に示す耐力壁の破壊形式を特定するために、耐力壁と同一面内(検討方向)の架構の部材に加え、耐力壁と直交する方向の架構の部材を考慮して検討を行った。
4.図-4に示す架構について、連層耐力壁の回転変形が大きいことが想定されたので、壁脚部の固定条件を考慮して、負担せん断力を求めた。
5.図-4に示す連層耐力壁が全体曲げ降伏する場合、曲げ降伏する耐力壁が脆性破壊せずに靱性能を確保できるように、メカニズム時に負担しているせん断力を割り増して検討を行った。
解答 2:耐力壁の耐力計算に関する問題。開口を有する耐力壁の耐力計算は、次に定める方法により、耐力を低減した上で耐力壁として構造計算を行う。(平成19年告示第594号第一)
①開口周比(r0)が0.4以下であることを確認する②せん断剛性の低減率(r1)
③せん断耐力の低減率(r2)
したがって低減をするのは開口周比r0ではなく、r1とr2である。
(関連問題:平成30年1級学科4、No.13、平成26年1級学科4、No.13、平成22年1級学科4、No.24)
〔H20 No.13〕鉄筋コンクリート構造の建築物の耐震計算に関する次の記述のうち、建築基準法に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.耐震計算ルート1において、耐力壁のせん断設計における一次設計用地震力により生じるせん断力の2倍の値を、耐力壁の設計用せん断力とした。
2.耐震計算ルート2-1において、柱や耐力壁のせん断設計の検討及び剛性率・偏心率の算定を行ったので、塔状比の検討は省略した。
3.耐震計算ルート3において、全体崩壊形となる剛節架構形式の建築物を対象とした場合、構造特性係数DSは、建築物が崩壊機構を形成する際の応力を用いて算定した。
4.耐震計算ルート3において、脆性破壊する柱部材を有する建築物を対象として、当該柱部材の破壊が生じた時点において、当該階の構造特性係数DS並びに保有水平耐力を算定した。
5.耐震計算ルート3において、塔状比が4を超える建築物を対象として、基礎杭の圧縮方向及び引抜き方向の極限支持力を算定することによって、建築物が転倒しないことを確認した。
解答 2:鉄筋コンクリート造の建築物については、耐震計算ルート2-1において、柱や耐力壁のせん断設計の検討及び剛性率・偏心率の算定の他に、塔状比が4を超えないことを確かめなければならない。(建築基準法施行令第82条の6、昭和55年告示第1791号)
〔H20 No.14〕鉄筋コンクリート構造における付着及び定着に関する次の記述のうち、 最も不適当なものはどれか。
1.外周部の柱梁接合部において、梁外端部の下端筋は上向きに折り曲げて定着し、梁主筋の水平投影長さは柱せいの0.75倍以上として、梁主筋の定着性能を確保した。
2.剛節架構の柱梁接合部内に通し配筋する大梁において、地震時に曲げヒンジを想定する梁部材の主筋強度が高い場合、梁主筋の定着性能を確保するために、柱せいを大きくした。
3.必要保有水平耐力の計算に当たり、付着割裂破壊する柱の部材種別をFB材として構造特性係数DSを算定した。
4.柱の付着割裂破壊を防止するために、柱の断面の隅角部に太径の鉄筋を用いない配筋とした。
5.SD345の鉄筋の一般定着の長さは、コンクリートの設計基準強度を24N/mm2から36N/mm2に変更したので短くした。
解答 3:構造特性係数DSの値を決める要素に、「耐力壁・筋かいの水平力分担率βu」や「柱・梁の種別(FA~FD)」、「耐力壁の種別(WA~WD)」がある。付着割裂破壊は脆性破壊であり、脆性破壊する部材の種別はD。したがって、柱の部材種別はFDとする。ちなみに、FAがもっとも靭性が高く、FCやFDは靭性が低く、脆弱破壊の恐れがある。その脆弱破壊には、せん断破壊、付着割裂破壊(RC造)、局部座屈(S造)が該当する。
〔H20 No.15〕鉄骨鉄筋コンクリート構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.架構の靱性を高めるため、柱の軸圧縮耐力に対する軸方向力の比が大きくなるように設計した。
2.架構応力の計算に当たって、鋼材の影響が小さかったので、コンクリートの全断面について、コンクリートのヤング係数を用いて部材剛性を評価した。
3.大梁の終局せん断強度を、鉄骨部分と鉄筋コンクリート部分のそれぞれについて計算した終局せん断強度の和とした。
4.柱断面を被覆形鋼管コンクリートとしたので、帯筋比が0.2%以上となるように設計した。
5.柱の軸方向の鉄筋と鉄骨の全断面積が、コンクリートの全断面積の0.8%以上となるように設計した。
解答 1:架構の靭性を高めるために、軸方向力を増大させないように、つまり柱の軸圧縮耐力に対する軸方向力の比が小さくなるように設計する。(鉄骨鉄筋コンクリート構造計算規準)
〔H20 No.16〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.剛節架構において、SN400材を用いる代わりに同一断面のSN490材を用いても、弾性変形を小さくする効果はない。
2.横移動が拘束されていない剛節架構において、柱材の座屈長さは、梁の剛性を高めても節点間距離より小さくすることはできない。
3.圧縮材の中間支点の横補剛材は、圧縮材に作用する圧縮力の2%以上の集中横力が加わるものとして設計することができる。
4.耐震計算ルート1により設計した剛節架構の柱材に、厚さ6mm以上の一般構造用角形鋼管(STKR材)を用いた場合、柱の設計において地震時応力を割り増す必要がある。
5.構造特性係数DSを算出するための部材種別がFA材であるH形鋼(炭素鋼)の梁について、幅厚比の規定値は、フランジよりウェブのほうが小さい。
解答 5:フランジの方が幅厚比制限は厳しい、つまり、幅厚比の規定値は小さい。鋼材の規格表から、フランジの厚さがウェブの厚さよりも大きくなっている。
そもそも幅厚比は、材の薄っぺらさを示す指標であり、
幅厚比が大きい=薄っぺら=局部座屈が起こりやすい
幅厚比が小さい=分厚い=局部座屈が起こりにくい
となる。
H鋼を圧縮材として使うのは、柱に使用する場合が多く、柱には圧縮力などの軸力の他に曲げモーメントも作用する。H鋼などでは、フランジが曲げモーメントに抵抗し、ウェブはせん断力に抵抗する。
曲げモーメントは、引張力と圧縮力の偶力なので、圧縮側フランジは、より大きな圧縮力を負担する。
H鋼では、軸力の他に曲げによる大きな圧縮力をフランジが受け持つので、ウェブよりもフランジの方を、局部座屈に対してより強くしなければならない。
このためウェブよりフランジの方の幅厚比制限が厳しく(小さく)なっている。
(関連問題:令和元年1級学科4、No.16、平成30年1級学科4、No.16、平成27年1級学科4、No.16)
〔H20 No.17〕鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.高さ方向に連続する筋かいを有する剛節架構において、基礎の浮き上がりを考慮して保有水平耐力を算定した。
2.箱形断面の柱にH形鋼の梁を剛接合するために、梁のフランジはすみ肉溶接とし、ウェブは突合せ溶接とした。
3.根巻型柱脚において、根巻きの上端部に大きな力が集中して作用するので、この部分の帯筋の数を増やした。
4.柱の継手部を許容応力度設計する場合、継手部に作用する存在応力を十分に伝えられるものとし、部材の許容耐力の50%を超える耐力を確保した。
5.剛節架構の靱性を高めるため、塑性化が想定される部位に降伏比の小さい材料を採用した。
解答 2:箱形断面の柱にH形鋼の梁を剛接合する場合、「曲げモーメント」は梁フランジから柱へ伝達するので、梁フランジは突合せ溶接(完全溶込み溶接)とする。また「せん断力」は梁ウェブから柱に伝達するので、すみ肉溶接とするのが一般的である。(建築物の構造関係技術基準解説書、鋼構造接合部設計指針1.4.6)
(関連問題:平成26年1級学科4、No.16、平成23年1級学科4、No.17)
〔H20 No.18〕鉄骨構造の溶接に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.溶接ひずみ及び残留応力が小さくなるように設計した。
2.すみ肉溶接の有効長さは、まわし溶接を含めた溶接の全長から、すみ肉のサイズの2倍を減じたものとした。
3.すみ肉溶接継目ののど断面に対する短期許容応力度は、接合される鋼材の溶接部の基準強度に等しい値とした。
4.溶接金属の機械的性質は、溶接条件の影響を受けるので、溶接部の強度を低下させないために、パス間温度が規定値より高くならないように管理した。
5.開先のある溶接部の両端においては、健全な溶接の全断面が確保できるようにエンドタブを用いた。
解答 3:隅肉溶接継目ののど断面に対する短期許容応力度は、溶接部の基準強度をFとすると次の通りである。
短期許容応力度 = 長期許容応力度 × 1.5
= F/(1.5√3) × 1.5
= F/√3
したがって隅肉溶接継目ののど断面に対する短期許容応力度は、溶接部の基準強度Fの1/√3 倍である。(建築基準法施行令第92条表)
(関連問題:平成26年1級学科4、No.16)
〔H20 No.19〕基礎及び地盤に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.同一地盤に設ける直接基礎の単位面積当たりの極限鉛直支持力度は、支持力式により求める場合、一般に、基礎底面の形状によって異なる。
2.構造体と土が同じ条件であれば、土圧の大小関係は、一般に、受働土圧>静止土圧>主働土圧である。
3.地震時に液状化のおそれがある砂質地盤は、一般に、「地表面から20m以内の深さにあること」、「地下水で飽和していること」及び「粒径が均一な中粒砂等でN値が概ね15以下であること」に該当するような地盤である。
4.地盤の許容応力度は、N値が同じ場合、一般に、粘性土より砂質土のほうが大きい。
5.擁壁に作用する水圧は、一般に、擁壁の背面に十分な排水措置を講ずることにより考慮しなくてもよい。
解答 4:地盤の許容応力度は、N値が同じ場合、粘性土より砂質土のほうが小さい。(建築基準法施行令第93条)
〔H20 No.20〕杭基礎に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.長い杭において、杭頭の固定度が大きくなると、杭頭の曲げモーメントは小さくなる。
2.杭に作用する軸方向力は、支持杭に負の摩擦力が作用する場合、一般に、中立点において最大となる。
3.JIS A5525 (鋼管ぐい)に適合する鋼管杭に溶接継手を設ける場合は、継手による杭材の許容応力度の低減を行わなくてもよい。
4.杭を軟弱地盤に計画する場合は、地震時の杭頭慣性力と地盤変位との影響を重ね合わせて設計を行う方法がある。
5.杭先端の地盤の許容応力度を計算で求める場合に用いるN値は、杭先端付近のN値の平均値とし、その値が60を超えるときは60とする。
解答 1:(頻出問題) 杭頭の固定度が大きくなるほど、杭頭の曲げモーメントは大きくなり、また水平変位は小さくなる。(建築基礎構造設計指針)
(関連問題:平成29年1級学科4、No.21、平成24年1級学科4、No.22)
〔H20 No.21〕建築物の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.剛節架構と耐力壁を併用した鉄筋コンクリート造の場合、柱及び梁並びに耐力壁の部材群としての種別が同じであれば、耐力壁の水平耐力の和の保有水平耐力に対する比βuについては、0.2である場合より0.7である場合のほうが、構造特性係数DSを小さくすることができる。
2.高さ60mを超える建築物について時刻歴応答解析により安全性の確認を行う場合、地震地域係数Zが同じ建設地であっても、一般に、表層地盤の増幅特性が異なれば、検討用地震波は異なる。
3.鉄筋コンクリート造の既存建築物の耐震改修工事において、柱の変形能力の向上を図る補強工法の一つに、炭素繊維巻き付け補強がある。
4.鉄筋コンクリート造の腰壁と柱の間に完全スリットを設けた場合であっても、梁剛性の算定に当たっては、腰壁部分が梁剛性に与える影響を考慮する。
5.地震時においては、応答加速度が上層ほど大きくなることを考慮して、一般に、地震層せん断力係数Ciを上層ほど大きくする。
解答 1:保有水平耐力計算において、剛節架構と耐力壁を併用した鉄筋コンクリート造の構造特性係数の算定は、①「柱及び梁」の部材群としての種別、②「耐力壁」の部材群としての種別、③耐力壁の水平耐力の和の保有水平耐力に対する比(β)から求められる。βが大きいことは、保有水平耐力の中に占める耐力壁の水平耐力が大きく、架構の変形能力が小さいことを表している。したがって、「耐力壁」及び「柱及び梁」の部材群としての種別が同じであれば、βについては0.2である場合よりも、0.7である場合の方が耐力壁量が増加するため、構造特性係数の数値は大きくなる。
(関連問題:平成30年1級学科4、No.14、平成23年1級学科3、No.14)
〔H20 No.22〕建築物の構造設計に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.鉄筋コンクリート造ラーメン構造の大梁の断面算定に当たっては、一般に、地震荷重時の応力として柱面位置での曲げモーメントを、断面検討に用いることができる。
2.プレストレストコンクリート造は、鉄筋コンクリート造に比べて長スパンに適しているが、一般に、ひび割れ発生の可能性が高く、耐久性は鉄筋コンクリート造より劣る。
3.屋根ふき材の設計に当たっては、一つの屋根平面内の中央に位置する部位より縁に位置する部位のほうが、風による大きな吹上げ力を用いる。
4.同一の建築物の基礎において、杭長に著しい差がある場合には、不同沈下による影響を検討する。
5.多スパンラーメン架構の1スパンに連層耐力壁を設ける場合、転倒に対する抵抗性を高めるためには、架構内の最外縁部に配置するより中央部分に配置するほうが有効である。
解答 2:プレストレストコンクリート造(PC造)は、鉄筋コンクリート造に比べて長スパンに適しており、ひび割れの可能性も低く、鋼材の防食性能に優れているので、耐久性も優れている。(プレストレストコンクリート設計施工規準)
〔H20 No.23〕木材に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.木材の繊維方向の長期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、木材の繊維方向の基準強度の2/3倍の数値とする。
2.長期の積雪荷重を検討する場合、木材の繊維方向の長期許容応力度は、通常の長期許容応力度の1.3倍の数値とする。
3.木材を常時湿潤状態にある部分に使用する場合、繊維方向の許容応力度は、所定の数値の70%に相当する数値とする。
4.垂木、根太等の並列材に構造用合板等を張り、荷重・外力を支持する場合、曲げに対する基準強度は、割増しの係数を乗じた数値とすることができる。
5.木材の繊維方向の許容応力度の大小関係は、一般に、曲げ>引張り>せん断である。
解答 1:木材の繊維方向の長期許容応力度は、積雪時の構造計算以外の場合、木材の繊維方向の基準強度の1.1/3倍である。また、短期許容応力度は、木材の繊維方向の基準強度の2/3であり、単位許容応力度は長期許容応力度の2/1.1倍(約1.81倍)となる。(建築基準法施行令第89条)
〔H20 No.24〕コンクリートに関する次の記述のうち、(社)日本建築学会「鉄筋コンクリート構造計算規準」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.梁主筋のコンクリートに対する許容付着応力度は、下端筋より上端筋のほうが小さい。
2.コンクリートの引張強度は、圧縮強度の1/10程度であるが、曲げ材の引張側では引張強度は無視するため、許容引張応力度は規定されていない。
3.コンクリートの単位容積重量が同じで設計基準強度が2倍になると、コンクリートのヤング係数もほぼ2倍となる。
4.軽量コンクリート1種の許容せん断応力度は、長期・短期ともに、同じ設計基準強度の軽量コンクリートの許容せん断応力度の0.9倍である。
5.コンクリートのせん断弾性係数は、一般に、ヤング係数の0.4倍程度である。
解答 3:コンクリートの設計基準強度が2倍になると、コンクリートのヤング係数は21/3=1.26倍となる。
〔H20 No.25〕金属材料に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.アルミニウム合金のヤング係数は、鋼材の1/3程度である。
2.(社)日本鉄鋼連盟製品規定「建築構造用冷間プレス成形角形鋼管」に適合するBCP235材の降伏点又は耐力の下限値は、235N/m2である。
3.建築構造用TMCP鋼は、同じ降伏点のSN材やSM材に比べて炭素当量が低減されているので、溶接性が向上している。
4.シャルピー衝撃試験の吸収エネルギーが大きい鋼材を使用することは、溶接部の脆性的破壊を防ぐのに効果がある。
5.ステンレス鋼(SUS304)は、炭素鋼に比べて、耐食性に優れているが、耐低温性、耐火性は劣っている。
解答 5:ステンレス鋼(SUS304)とは、約11%以上のクロムを含む合金鋼のことをいう。炭素鋼に比べて、耐食性、耐低温性、耐火性に優れている。広範な分野に活用され、建築物の構造部材として用いられるのは、USU304、SUS316などがある。(建築物の構造関係技術基準解説書、ステンレス建築構造設計規準)
(関連問題:平成28年1級学科4、No.29、平成12年1級学科3)
1級建築士の学科対策
・イラストでわかる一級建築士用語集
・1級建築士 学科試験 要点チェック