
一級建築士学科試験
2023年7月23日(日)
令和05年度試験日まであと 日!
〔R01 No.01〕建築及び都市の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ソシオペタルは、複数の人間が集まったときに、異なる方向に身体を向けて他人同士でいようとするような位置関係をいう。
2.ユニバーサルデザインは、全ての人を対象としたものであり、障がいの有無、年齢や体型の違い、身体機能の差等に関係なく、可能な限り誰もが利用できるデザインをいう。
3.パッシブデザインは、建築物自体の配置・形状、窓の大きさ等を工夫することにより、建築物内外に生じる熱や空気や光等の流れを制御し、暖房・冷房・照明効果等を積極的に得る手法をいう。
4.スマートシティは、広義では、都市が抱える諸課題に対して、情報通信技術等を活用しつつ、マネジメント(計画、整備、管理・運営等)が行われ、全体の最適化が図られる持続可能な都市又は地区をいう。
解答 1:「ソシオペタル」とは、人が集まって交流を活発にすることが想定される状態をいう。反対に不活性な状態を「ソシオフーガル」といい、駅や空港、待ち合わせ場所などで採用される。
2.2006年の国連総会で採択された「障害者の権利に関する条約」では、“「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲ですべての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。”と定義している(障害者の権利に関する条約第2条)。
3.「パッシブデザイン」は、建築物自体の配置・形状、窓の大きさ等を工夫することにより、建築物内外に生じる熱や空気や光等の流れを制御し、暖房・冷房・照明効果等を積極的に得る手法である。
4.「スマートシティ(Smart City)」とは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)などの先端技術を用いて、基礎インフラと生活インフラ・サービスを効率的に管理・運営し、環境に配慮しながら、人々の生活の質を高め、継続的な経済発展を目的とした新しい都市のこと。

〔R01 No.02〕神社建築に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.伊勢神宮内宮正殿(三重県)は、柱は全て掘立て柱で、2本の棟持柱をもつ、神明造りの例である。
2.出雲大社本殿(島根県)は、桁行2間、梁間2間の平面をもち、正面の片方の柱間を入口とした左右非対称の形式をもつ、大社造りの例である。
3.賀茂別雷神社本殿・権殿(京都府)は、切妻造り、平入りの形式をもち、前面の屋根を延長して向拝を設けた、流造りの例である。
4.春日大社本殿(奈良県)は、本殿と拝殿との間を石の間でつないだ、権現造りの例である。
解答 4:春日大社本殿の様式は、切妻、妻入りで、屋根が曲線を描いて反り、正面に片流れの庇を付けた「春日造」と呼ばれる神社建築様式である。設問は「日光東照宮」の記述である。
(関連問題:平成26年1級学科1、No.02、平成30年2級学科1、No.01、平成28年2級学科1、No.02、平成20年2級学科1、No.01)
1.伊勢神宮内宮正殿は、古来、倉庫として用いられた高床式家屋が神社形式に転化したものと見られている。神明造りの代表的建築であり、正面入り口を平側(平入り)に設けている。屋根は切妻造り。

2.出雲大社本殿は古代の代表的建築物。木材を交差させて架構し、切妻、妻入りで左右非対称。古代の本殿は48mにも及ぶ高倉式であったが、現在は24mの大社造となっている。

3.賀茂別雷神社本殿・権殿は、「流造り」の代表建築物であり、屋根の前のほうが長く伸びて向拝を覆い、庇と母屋が同じ流れで葺いてある。

賀茂別雷神社
〔R01 No.03〕歴史的な建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.サン・ピエトロ大聖堂(ヴァチカン)は、身廊部と袖廊部がともに三廊式であり、内陣には周歩廊と放射状に並ぶ複数の祭室とをもつゴシック建築である。
2.アーヘンの宮廷礼拝堂(ドイツ)は、平面が八角形の身廊とそれを囲む十六角形の周歩廊があり、身廊の上部にはドーム状のヴォールトをもつ集中式の建築物である。
3.サン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ聖堂(イタリア)は、楕円形のドームと、凹凸の湾曲面や曲線が使用されたファサードをもつバロック建築である。
4.コルドバの大モスク(スペイン)は、紅白縞文様の2段のアーチを伴って林立する柱による内部空間をもち、現在はキリスト教文化とイスラム教文化とが混在している建築物である。
解答 1:「サン・ピエトロ大聖堂」はルネサンス時代の盛期からの次のバロック時代を担ったミケランジェロやラファエルらによる世界最大の石造建築物である。ギリシア十字プランを基本とし中央に壮大な大ドームを設けている。聖堂前のサン・ピエトロ広場を囲む半円形の円柱回廊が特徴的。設問は「アミアン大聖堂」の記述。フランスにある大聖堂である。

2.アーヘンの宮廷礼拝堂

3.サン・カルロ・アッレ・クァットロ・フォンターネ聖堂

4.コルドバの大モスク

〔R01 No.04〕建築物の各部に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.特定天井に関する設計ルートのうち、仕様ルートの一つとして、天井面と周囲の壁等との間にクリアランスを設けない「隙間なし天井」がある。
2.Low-E複層ガラスは、中空層側のガラス面に特殊金属膜をコーティングしたものであり、室内の冷暖房効率を高めることができる。
3.連窓を層間変位の大きな建築物に設ける場合、地震時の安全性を向上させるために、ガラスがサッシ枠内で回転・移動しても力が加わらないように、枠とガラスとの間にクリアランスを設ける必要がある。
4.カーテンウォールのオープンジョイント方式の水密性能について、雨水の浸入を防止するためには、等圧空間の容量を、空気取入口に比べて大きくする必要がある。
解答 4:「オープンジョイント方式」はジョイント部の気圧と外気圧を等圧に保ち、雨水の侵入を防ぐ。等圧空気層の容量は、空気取入れ口に比べて大きくならないようにする必要がある。

1.特定天井とは、脱落によつて重大な危害を生ずるおそれがあるものとして国土交通大臣が定める天井をいう。特定天井の安全性の検証には仕様ルート・計算ルート・大臣認定ルートの3つがあり、仕様ルートは以下の2つがある。

2.「Low-E複層ガラス」は、低反射率ガラス、高断熱複層ガラスとも呼ばれる。板ガラスの片面に特殊な金属膜「Low-E」を貼り付けたもの。

3.地震力によって建物に生じる層間変位により、建具に作用する面内変形においてガラスの破損・建具の脱落を引き起こさないようにすることを「面内変形追随性」という。

〔R01 No.05〕防犯計画等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.事務所の計画において、公道から敷地内や建築物内、事務室等への動線は、セキュリティレベルの低いほうから高いほうへ連続させることが望ましい。
2.小学校の計画において、不審者の侵入防止等に配慮して、職員室は運動場や出入口を見渡すことのできる位置に配置することが望ましい。
3.住宅地の計画において、ラドバーン方式は、心理的効果を考慮した設計によって、犯罪抑止効果を高める手法である。
4.ゲーテッド・コミュニティは、住宅地をフェンスや壁等で囲い、出入口にゲートを設けて、住民以外の人や車両の出入りを制限した居住地区である。
解答 3:「ラドバーン方式」は、住宅地において人と車を平面的に分離する方式(歩車分離)である。自動車は街区を囲む幹線道路からクルドサックによって住宅地にアクセスし、通過交通がないので、歩行者の安全を確保することができる。
設問は「CPTED(防犯環境設計)」の記述である。

1.事務所ビルではセキュリティレベルは段階的に導線をつないだ方が望ましい。

2. 職員室、事務室等については、アプローチ部分や屋外運動場等を見渡すことができ、緊急時にも即応できる位置へ配置することが重要である。

4.「ゲーテッド・コミュニティ」は、セキュリティの向上を目的として、出入口にゲートを備え、フェンスや壁で囲うことで、人や車の出入りをコントロールした住宅地。 「要塞都市」とも呼ばれる。

〔R01 No.06〕環境に配慮した建築物の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.越屋根は、切妻屋根等の棟の一部に設けられた小屋根又はその下の開口部を含めた部分をいい、当該開口部から自然換気や採光が期待できる。
2.コンクリート躯体を蓄熱体として利用するためには、「外断熱とすること」、「開口部からの日射を直接コンクリート躯体に当てること」、「コンクリート躯体を直接室内に露出させること」等が有効である。
3.クールスポットは、外気温度が建築物内の温度以下となる夜間を中心に、外気を室内に導入することによって躯体を冷却する方法であり、冷房開始時の負荷を低減し、省エネルギー化を図ることができる。
4.アースチューブは、地中に埋設したチューブに空気を送り込み、夏期には冷熱源、冬期には温熱源として利用する方式であり、一般に、外気温度の年較差又は日較差が大きい地域ほど熱交換効果が大きい。
解答 3:記述は「ナイトパージ(夜間外気導入方式)」の記述である。「クールスポット」は樹木などによる日陰、散水などによる水分の蒸発、地面に蓄熱により局所的に形成される場所のことである。

沖縄のビル街の中に設置された水の道
1.「越屋根」は屋根の最頂部に採光や煙抜きのための、別の塔を持つ小さな屋根のことをいう。

2.コンクリート躯体を蓄熱体として利用すると、熱橋が生じにくく内壁表面の結露を抑えられ、コンクリートの蓄熱効果が利用できるため、室内の温度変化を少なくすることで、暖房・冷房のエネルギーを抑えることができる。また日射の熱から躯体を保護し、コンクリート躯体の耐久性を向上させる。
4.地下5m以下の地中温度は年間を通してほぼ一定で、その地域の年平均外気温に保たれる。これを活用したのがアースチューブである。外気を地中埋設管や地下の設備配管ピットなどに通し、温度調節をして直接室内もしくは空調機に送り、空調負荷の低減を図る。外気温の年較差が大きい地域ほど、真夏や真冬の外気温と地中温度との差が大きくなるため、より効果が期待できる。「クールチューブ」は地熱を冷熱源に利用した方式であり、逆に温熱源に利用することを「ヒートチューブ」という。

〔R01 No.07〕建築物の各部の寸法等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.地下階に駐車場を設ける大規模店舗において、売場のレイアウトと駐車場の駐車台数の効率を考慮して、柱割りを8.5m×8.5mとした。
2.高層事務所ビルのエレベーターの計画において、低層用5台と高層用5台とを幅4mの通路を挟んで対面配置とした。
3.図書館の開架閲覧室における複式(両面使用型)書架の中央支柱の心々距離については、車椅子使用者同士がすれ違うことができるように、250cmとした。
4 .普通乗用車を駐車させる屋内駐車場の計画において、1台当たりの所要面積をなるべく少なくするため、直角駐車とした。
解答 2:エレベーターを複数設置する場合、乗客が到着した台に乗るまでの動線が長くならないように、一列には最大4台までの計画にする。対面設置の場合の幅は4m程度とし、こちらは正しい記述。
1.普通自動車1台当たりの駐車スペースの幅は2.4m程度で計画する。このため、柱寸法を800角とした場合、2.4m×3台+0.8m=8.0m程度となる。また、車の長さは5mとして考慮すると、8mスパンだと両側に車を配置した場合に車路を6m確保できる。

3.図書館の開架閲覧室における書架自体の幅は45㎝なので、
・車椅子使用者同士がすれ違いに必要な幅:通路180cm+書架45cm=225cm
・車椅子使用者が通り抜けるため必要な幅:通路120cm+書架45cm=165cm
4.駐車場計画において、一般的に、1台当たりの所要面積は直角(90°)が最も小さくて済み、効率がいい。次に60°、45°と所要面積は増えていく。なので、なるべく直角で計画し、できなければ鋭角にしていく。
〔R01 No.08〕公立小学校・中学校の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.既存の中学校の校舎を小中一貫教育を行う義務教育学校に変更する計画に当たり、階段に、手摺、滑止め等の安全上の措置を講じることにより、蹴上げの高さを変更しなかった。
2.中学校の計画に当たり、各教科で専用の教室をもち、生徒が時間割に従って教室を移動して授業を受ける総合教室型とした。
3.普通教室(40人)の広さは、多様な学習形態に対応する机、家具等の配置が可能な面積、形状を考慮し、9m×8mとした。
4.特別の支援を必要とする児童が通常の学級に在籍する場合を想定し、その児童が落着きを取り戻すことのできる小規模な空間を、普通教室に隣接して設けた。
解答 2:「総合教室型」は小学校低学年の教室計画でよく用いられている。専門性が高くなってくる小学校高学年、中学校、高校は「教科教室型」「特別教室型」などを採用する例が多い。
1.建築基準法上、階段の蹴上は小学校16cm以下、中学校18cm以下と定められている。ただし設問のような改修において、階段の蹴上を変更する工事は容易ではないため、階段に手すり、滑り止めなどの処置を施せば基準に適合しているとみなされる。

3.一般的な教室の寸法は、奥行7m、間口9m、面積63m2。40人程度なので、設問通り8×9程度でいい。また、天井高が3m程度となっているが、生徒に落ち着きを持たせるために2.1mと低くするケースも増えている。

4.設問通り、通常の学級に在籍する自閉症、情緒障害、またはADHD等の児童が落着きを取り戻すことのできる小規模な空間を、普通教室に隣接して設けることが望ましい。例えば、世田谷区駒沢小学校は、オープンスペースに格子戸のついた凹部空間を設けている。

〔R01 No.09〕高齢者、障害者等の利用に配慮した建築物の計画に関する次の記述のうち、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準(国土交通省)」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.公民館の便所において、車椅子使用者用便房における便器洗浄ボタンは、ペーパーホルダーの直上に設置した。
2.博物館の便所の計画において、乳幼児用おむつ交換台等の乳幼児連れ利用者に配慮した設備は、利用者の分散を図る観点から多機能便房に設けることは避け、男性用及び女性用の便所内にそれぞれ設けた。
3.ホテルのエレベーターにおいて、エレベーターの籠内の階数ボタン等の点字表示は、ボタンが縦配列であったので、それぞれのボタンの右側に設けた。
4.庁舎の避難設備・施設の計画において、利用者が安全に救助を待つための一時待避スペースを階段室内に設け、待避した際に助けを求めたり状況を伝えたりするためのインターホンを設置した。
解答 3:操作盤の点字表示は原則としてボタンの「左側」が「上側」に設ける。(JIS T 0921:2017)
1.車椅子使用者用便房の仕様は、JIS S 0026基づく。

2.乳幼児用おむつ交換台は男女別の便所内に設ける。「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」

4.車いす使用者等は、階段を利用して避難することが難しいため、安全に救助を待つための、一時待避スペースを設けることが望ましい。この場所は救助を待つために必要な耐火性能や遮煙・遮炎性能を有し、一時待避スペースであることを、分かりやすく表示するとともに、助けを求めたり状況を伝えたりするためのインターホンを設置する。「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」

〔R01 No.10〕都市の再生、まちづくり等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.インナーシティ問題は、都市の中心とその周辺の市街地における人口の減少と産業の衰退、地域の荒廃等のことである。
2.ブラウンフィールドは、土壌汚染の存在、あるいはその懸念から、本来、その土地が有する潜在的な価値よりも著しく低い利用あるいは未利用となった土地をいう。
3.二地域居住は、都市住民が農山漁村等の地域にも同時に生活拠点をもつこと等をいう。
4.パークアンドライドシステムは、中心市街地をバリアフリー化して車椅子や電動スクーター等を貸し出し、歩行困難者の外出の機会の拡大だけでなく、市街地の活性化を促す仕組みの一つである。
解答 4:設問は「タウンモビリティシステム」の記述である。「パークアンドライドシステム」は、交通渋滞の緩和を主な目的とし、郊外の鉄道駅等に設置された駐車場を利用し、都心部まで公共交通機関を利用することによって、中心市街地へ流入する車の交通量を抑制する仕組みである。
(関連問題:平成24年1級学科1、No.10)
1.インナーシティ問題は、都市が拡大する過程で都市の中心市街地、とくに都心の外周をなす地域の住宅環境が悪化し、夜間人口が減少して、都市空間としての機能が低下する現象。都市の衰退として考えられている。特に20世紀末の欧米で問題が深刻化。
2.ブラウンフィールドはグリーンフィールドと対比される用語。グリーンフィールドは今まで建物や工場などが建ったことがない未開発の土地、対してブラウンフィールドはすでに開発されており、土壌汚染によって売却や再開発ができず、見捨てられてしまった土地とされる。
3.二地域居住とは、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ多様なライフスタイルのことであり、人口減少が危ぶまれる地方地域への人の誘致・移動を図る。
〔R01 No.11〕都市の再生に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ハイライン(ニューヨーク)は、廃線になった貨物専用の高架線跡を再利用し、緑豊かな展望公園へと再生させたものである。
2.ドックランズ再開発計画(ロンドン)は、大規模な区画の整理によって街区を撤去し、中央部を遊歩道とする広場をつくり出したプロジェクトである。
3.ポツダム広場再開発計画(ベルリン)は、第二次世界大戦とその後の東西分断により長年更地であった敷地に、複合機能をもたせたプロジェクトである。
4.門司港レトロ地区(北九州市)は、門司港周辺の歴史的建造物群と関門海峡や門司港の景観を活かした街並みが形成されている地区である。
解答 2:「ドックランズ再開発計画」は、造船業が盛んであった港湾であったが、1960年代以降廃墟になっていた地区を、複合都市空間を作るために開発した「流域再生プロジェクト」である。記述は「バルセロナ・ラバル地区(スペイン)」が該当する。
1.ハイラインは、1980年に廃道となった高速道路「ウエストサイド線」に建設された再開発事業である。路面上は緑道「展望公園」とし、高架下は大規模なショッピングモールを建設した。

3.第二次世界大戦によって破壊され、荒廃したポツダム広場は、1989年に壁が撤去され、1991年からベルリン市によって再開発事業が行われた。ベルリン市は地域を4分割し、それぞれ担当の事業者によって都市計画を進めた。

4.門司港レトロ地区は、JR門司港駅前の歴史的建造物の修復・復元等が行われた地区である。

〔R01 No.12〕ニュータウン及び集合住宅に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ネクサスワールドのレム棟・コールハース棟(福岡県)は、各住戸に採光と通風を確保するためのプライベートな中庭が設けられた計画である。
2.基町高層アパート(広島県)は、偶数階に通路をもつ住棟を「く」の字型に連結させた計画である。
3.千里ニュータウン(大阪府)は、近隣住区の単位にはとらわれず、将来のワンセンター方式への移行等が意図された計画である。
4.港北ニュータウン(神奈川県)は、公園、保存緑地と緑道、歩行者専用道路とを結ぶネットワークをもつ計画である。
解答 3:「千里ニュータウン」は、我が国で最初の大規模ニュータウンであり、初めて「近隣住区」等の都市計画理論に基づき開発された。3つの地区センターを中心に、12つの近隣住区を基本として計画される。 記述は、「高蔵寺ニュータウン(愛知県)」の説明である。(関連問題:平成28年1級学科1、No.10、平成13年1級)
1.ネクサスワールドのレム棟・コールハース棟は、道路を挟んで建てられる。住戸がメゾネットとトリプレットとなっており、それぞれ専用の吹き抜けとライトコートを持ち、そこから通風や採光を確保している。
2.「基町団地」は、広島の戦後スラム街である「原爆スラム」の再開発で建設された最高20階建の3,000戸以上の集合住宅である。「基町高層アパート」とも呼ばれる。一般的な団地は南向きの板状の建物を平行に並べるが、板状住棟を45度回転させて屏風のように折り曲げて「くの字型」に連結している。

4.港北ニュータウンは、地区内の緑道を骨格として、公園や民有地の斜面樹林などを連結させた「グリーンマトリックスシステム」と呼ばれるオープンスペース計画を定め、総面積約90ヘクタールもの貴重な緑の資源を大切に保存している。

〔R01 No.13〕日本における住宅の計画に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.四間取は、土間を除く床上部分を田の字型に4室構成とする、伝統的な農家の平面形式の一つである。
2.公営住宅標準設計51C型は、住生活の多様化に対応するため、食事室と台所とを分離した計画である。
3.テラスハウスは、区画された専用庭をもつ住戸を、境界壁を介して連続させた接地型の低層集合住宅である。
4.コーポラティブハウスは、自ら居住する住宅を建設しようとする者が組合を結成し、共同して事業計画を定め、建築物の設計、工事発注等を行って住宅を取得し、管理していく方式である。
解答 2「公営住宅標準設計51C型」は、親と子の寝室を分離させた2寝室と台所兼食事室(DK)からなる戦後日本の集合住宅のモデルになったものである。

公営住宅標準設計51C型
(関連問題:平成23年1級学科1、No.12)
1.四間取は、関西以西に多く見られ、土間を除く床上部分を「田の字型」に4室構成される。

3.テラスハウスは、各住戸が区画された専用の庭をもつ連続住宅であり、各住戸が戸境壁を共有しながらも、庭があることで独立住宅としての要素を有するものである。

4.コーポラティブハウスは、自ら居住する住宅を建設しようとする者が組合を結成し、共同して事業計画を定め、建築物の設計、工事発注等を行って住宅を取得し、管理していく方式である。
〔R01 No.14〕劇場に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.能楽堂は、一般に、「本舞台」、「後座」、「地謡座 」及び「橋掛り」から成り立つ舞台と、その舞台を3方向から眺める客席をもつ空間である。
2.1997年に復元されたロンドンのシェークスピア劇場(グローブ座)は、観客と舞台との一体感を得られやすいプロセニアム形式の劇場である。
3.搬出入のためのサービスヤードにおいて、ウィング式の大型トラックが停車するスペースの、床から天井までの高さは5m以上とすることが望ましい。
4.車椅子使用者用の客席は、車椅子使用者が選択できるように、2箇所以上の異なる位置に分散して設けることが望ましい。
解答 2:シェークスピア劇場(グローブ座)は初期の建物からは離れた場所に1997年再建された。金属製のねじや釘は一切使われずに、手作りのレンガやオーク材で建築される。センターオープンステージ形式で、1階は立ち見、2階3階は座席になる。
1.能楽堂は、能と狂言の専用劇場である。別の建物であった能舞台と観客席を一つの屋根でおおった明治以降の形態。舞台を観客席が2〜3方から囲む。

3.ウィング式の大型トラックは、貨物自動車にウィングボディを採用したトラックである。側面からの荷下ろし・荷積みが効率的であるが、開放時に全高が5mとなるので、天井高5m以上で計画する。

4.車椅子使用者用の観覧席は、客席・観覧席総数の0.5~1.0%以上とし、利用者が選択できるように複数用意できることが望ましい。

〔R01 No.15〕木材を活用した建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.住田町役場(岩手県)は、凸レンズ状に組まれたトラス梁が並んだ屋根架構をもつ建築物である。
2.群馬県農業技術センター(群馬県)は、小断面の製材を格子状に組み合わせた屋根架構をもつ建築物である。
3.海の博物館展示棟(三重県)は、主要構造部の柱や梁には、鋼材を内蔵した集成材を使用し、外壁にはガラスカーテンウォールと木製ルーバーを使用した建築物である。
4.出雲ドーム(島根県)は、集成材とケーブル等で構成された立体張弦アーチと、膜屋根を組み合わせた架構をもつ建築物である。
解答 3:現在の「鳥羽市立海の博物館」は3つの収蔵庫棟、3つの展示棟、研究管理棟からなり、漁具等の収蔵・展示・研究を目的として2017年に建てられた。中でも展示棟の主要構造部は鉄筋コンクリート造、構造用集合材を用いて立体トラス構造で建てられている。外装は黒く塗装された板張りが周辺建築物との融和され美しい。
(関連問題:平成21年1級学科1、No.17)

鳥羽市立海の博物館
記述は、「国見町庁舎(福島県)」が該当する。

JR東日本建築設計HPより
1.住田町は森林・林業日本一を標榜しており、そのシンボルとして町内産の木材を使った他に類例を見ない構造の木造庁舎を建築している。

2.群馬県農業技術センターは、農業に関する研究・実験を行う施設である。群馬県内に分散していた施設を伊勢崎市の研究拠点に統合して、本館・会議棟という二つの棟を新築した。「大きな木の屋根」をシンボルとして「格子膜構造」と呼ぶ小断面製材を格子状に組み合わせた架構方法を採用している。

4.出雲ドームは、出雲市の市政50周年の記念事業として建設された。木製の骨に和紙を貼った「蛇の目傘」にヒントを得て、木とテフロン膜にスチールを組み合わせたハイブリット構造(張弦梁)を採用している。

〔R01 No.16〕病院に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.病院は、医業又は歯科医業を行う場所であり、20人以上の患者を入院させるための施設を有するものである。
2.療養病床における1病室当たりの病床数は、4床以下とする。
3.1看護単位当たりの病床数は、80床を標準とする。
4.療養病床における患者の利用する廊下の幅は、医療法に基づき、片側に病室がある場合、内法による測定で1.8m以上とする。
解答 3:1看護単位(看護チーム)当たりの病床数は、40〜60床を標準としている。
1.病院は、建築基準法上20床以上と規定され、19床以下は診療所とされる。
24.療養病床は居室面積一人当たり6.4m2以上とし、4人以下。また一般病床において必要な施設の他、機能訓練室、食堂、談話室、浴室を設ける。廊下幅は1.8m以上とし、両側に病室ある時2.7m以上。
〔R01 No.17〕美術館(設計者)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.ニューヨーク近代美術館(谷口吉生)は、敷地の北側と南側に通抜けが可能なエントランスホールがあり、中庭と連続する空間となっている。
2.ロサンゼルス現代美術館(磯崎新)は、赤砂岩の外壁をもつ基壇部があり、その基壇部の上にピラミッド型のトップライト等が配置されている。
3.フォートワース現代美術館(安藤忠雄)は、平行に並べられた長方形の室によって展示室が構成され、その展示室には日差しへの配慮から深い庇が掛けられている。
4.アスペン美術館(坂茂)は、建築物の中央部にアトリウムがあり、アトリウムに面した螺旋状のスロープによって、最上階から地上階まで連続した空間となるように計画されている。
解答 4:「アスペン美術館」は、地下1階、地上3階建ての現代美術館。合成樹脂加工の木造で構成された格子状の外観と、ガラスのカーテンウォールが魅力的である。

アスペン美術館
記述はフランク・ロイド・ライトによる「グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)」が該当する。

グッゲンハイム美術館
1.ニューヨーク近代美術館

2.ロサンゼルス現代美術館

3.フォートワース現代美術館

〔R01 No.18〕建築物の設計・工事監理等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」における建築設計業務委託契約において、委託者は、必要があると認めるときは、受託者に書面をもって通知して、設計業務の全部又は一部の中止を請求することができる。
2.四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」における建築設計業務委託契約において、受託者は、委託者の承諾なく、成果物、未完了の成果物及び設計業務を行ううえで得られた記録等を他人に閲覧させ、複写させ、又は譲渡してはならない。
3.建築士法に定められた、設計又は工事監理の契約を締結する際に行う重要事項(業務の内容及びその履行に関する事項)の説明等は、管理建築士以外の建築士が行ってはならない。
4.工事監理業務においては、一般に、民法における「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」が求められており、この義務を怠り損害が生じた場合には、監理業務委託契約書に明記されていなくても過失責任が問われることがある。
解答 3:建築士法で定める重要事項の説明については、管理建築士のほか、当該建築士事務所に属する一級建築士も行うことができる。 建築士法24条の7第1項
(関連問題:平成22年1級学科1、No.18、平成26年1級学科1、No.18)
12.四会とは日本建築士会連合会・日本建築士事務所協会連合会・日本建築家協会・日本建設業連合会の4団体のことで、 この4者が共同して建築請負の契約約款を作成している。これによると、
①委託者は必要があると認め
るときは、業務の中止内容を受注者に通知して、業務の全部又は一部を一時中止させることができる。このとき履行期間若しくは業務委託料を変更し、又は受注者が業務の続行に備え業務の一時中止に伴う増加費用を必要としたとき若しくは受注者に損害を及ぼしたときは、必要な費用を負担しなければならない。
②受注者は、発注者の承諾なく、成果物(未完成の成果物及び業務を行う上で得られた記録等を含む。)を他人に閲覧させ、複写させ、又は譲渡してはならない。
4.工事監理業務は、「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」が求められており、この義務を怠り損害が生じた場合には、契約に明記されていなくても過失責任が問われることがある。
〔R01 No.19〕建築積算に関する次の記述のうち、建築工事建築数量積算研究会「建築数量積算基準」に照らして、最も不適当なものはどれか。
1.コンクリートの数量において、窓、出入口等の開口部によるコンクリートの欠如は、建具類等の開口部の内法寸法とコンクリートの厚さとによる体積とし、1箇所当たりの開口部の体積が0.5m3以下の場合は、コンクリートの欠除はないものとする。
2.型枠の数量において、コンクリートの上面が傾斜している場合、その勾配が3/10を超えるものについては、その部分の上面型枠又はコンクリートの上面の処理を計測・計算の対象とする。
3.鉄骨の溶接の数量において、原則として、溶接の種類に区分し、溶接断面形状ごとに長さを求め、すみ肉溶接脚長6mmに換算した延べ長さとする。
4.全面がガラスである建具類のガラスの数量において、かまち、方立、桟等の見付幅が0.1mを超えるものがあるときは、その面積を差し引いた面積とする。
解答 1:「開口部の体積」ではなく、「開口部の見付面積」である。コンクリート、型枠、鉄筋、鉄骨、間仕切下地、主仕上、石材等の数量の算出において、開口部、ダクト孔、配管等がある場合で、その開口部等は小さい場合、欠如はないものとする。建築数量積算基準ページ12
・一般:0.5m2以下
・鉄骨と石材:0.1m2以下
(関連問題:平成27年1級学科1、No.19、平成24年1級学科1、No.19、平成23年1級学科1、No.19、平成21年1級学科1、No.19)
2.型枠の数量の拾いの計測・計算対象は、
➀勾配が3/10を超える斜面部
➁階段の踏面、階の中間にある壁付きのはりの上面
③大面木、化粧目地、打継ぎ目地、誘発目地等
建築数量積算基準ページ12
3.解説は設問まま。建築数量積算基準ページ20
4.解説は設問まま。建築数量積算基準ページ31
〔R01 No.20〕建築のマネジメント等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.公共工事におけるECI方式は、設計段階の技術協力の実施期間中に、施工の数量・仕様を確定したうえで工事契約をする方式であり、施工性等の観点から施工者の提案が行われることにより、施工段階における設計変更の発生リスクの減少等が期待できる。
2.建築物におけるコミッショニングは、一般に、環境・エネルギー性能等の観点から建築物のオーナーやユーザーが求める要求性能を把握して、その要求性能の実現を検証することである。
3.BCPは、企業が災害や事故で被害を受けても、重要な業務が中断しないこと、中断しても可能な限り短い期間で再開すること等、事業の継続を追求するための計画である。
4.CRE戦略は、国や地方公共団体の事業コストの削減や、より質の高い公共サービスの提供を目的として、民間の資金、経営能力及び技術的能力を活用して公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営を行う手法である。
解答 4:設問は、「PFI:Private-Finance-Initiative」の説明である。「CRE(企業不動産)戦略:Corporate Real Estate」は、企業が所有する不動産について、経営戦略的な視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させるという考え方である。
(関連問題:平成28年1級学科1、No.20、平成20年1級学科1、No.25)
1.従来の公共工事の発注・契約は設計・施工分離発注方式が原則だが、ECI方式は設計段階から施工者が参画し、施工の実施を前提として設計に対する技術協力を行うもの。施工者の技術力とノウハウを設計段階から投入するので、建設コストの縮減、工期短縮を図れる。
2.新築建物のコミッショニングと既存建物のコミッショニングがある。新築建物のコミッショニングとは、ビルのオーナーやユーザーが求める建築設備への要求性能を文書としてまとめ、その要求通りに企画・設計され、建設され、運用されていることを検証する過程である。既設建物のコミッショニングとは、現状の運用性能を分析し、より適切な運転にするために必要な調整や改修、ならびに運転の最適化を提案し、性能検証して実現するプロセスである。
3.事業継続計画(BCP)は、企業が災害や事故で被害を受けても、重要な業務を優先的になるべく中断させず、中断しても可能な限り短い期間で復旧し再開すること等、事業の継続を追求するための事前計画である。具体的な内容は以下のとおり。
①優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
②緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
③緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客と予め協議しておく
④事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
⑤全ての従業員と事業継続についてコニュニケーションを図る。。
1級建築士の学科対策
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